育児・介護休業法等改正
(写真=PIXTA)

本稿は、2016年3月29日に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」のうち、特に仕事と育児・介護の両立支援の改正部分に関する解説の2回目である。今回は、育児・介護休業法改正の「育児関係」の部分について説明する(介護関係については2016年6月17日に発信した「 育児・介護休業法等改正のポイント(介護関係) 」(*1)を参照されたい)。

育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)における育児関係の主な改正内容(*2)は図表の通りである。

子の看護休暇については、小学校就学前の子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日が法律によって付与されているが、現行は1日単位での取得を前提としていた。

法改正によって、看護休暇を半日単位で取得することが認められるようになる。ただし、所定労働時間が4時間以下の労働者については適用除外となる。また、(1)半日単位の取得が困難な労働者の適用除外、(2)「半日」の時間設定、については労使協定により別途定めることが認められている。

有期契約労働者については、これまで(1)雇用期間1年以上、(2)子が1歳以降の雇用継続見込み、(3)子が2歳までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないこと、が育児休業の取得要件となっており、特に(2)がネックとなって取得できないケースが問題視されていた。改正後は、(2)が削除され、(3)も「子が1歳6ヶ月になるまでの間に、労働契約満了が明らかでない」に緩和される。

また、育児休業等の対象となる子については、従来「法律上の親子関係である実子・養子」であったが、改正により、「特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親(*3)に委託されている子といった法律上の親子関係に準じると言えるような関係にある子」も対象に追加された。

この他、従来からあった「妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止」に加えて、上司、同僚などが職場において、妊娠・出産・育児休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止するための措置(労働者への周知・啓発、相談体制の整備等)が事業主に義務化される。

なお、従来からある不利益取扱の禁止、今回追加された防止措置ともに、派遣労働者を受け入れている派遣先にも適用されるので、その点についても留意が必要である。

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企業においては、2017年1日1日の改正育児・介護休業法の施行に向けて、就業規則等の改定が必要となる。改定を検討頂くうえで、本稿および前回の介護関係の解説が、少しでもお役に立てば幸いである。

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(*1)この拙稿については、以下に掲載されている。
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53145?site=nli
(*2)関連する省令・指針については、現在検討されているところである。
(*3)養子縁組里親とは、「養子縁組によって養親となることを希望し、養子縁組が可能な要保護児童を養育する養子縁組を前提とした里親」(厚生労働省「児童相談所運営指針」より抜粋)をいう。
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松浦 民恵(まつうら たみえ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員

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