複数の銀行に口座を持っている人は少なくないでしょう。さまざまな理由で、お金を預けた口座のことを忘れたり、つい引き出しそびれたりということもあるようです。
何も取引のないまま長期間経ってしまった口座のことを「休眠口座」(休眠預金)といいます。この「休眠口座」が1年で850億円近くも発生しているとされ、これを国の事業の財源にしようという動きがあります。
休眠口座
上述した通り、休眠口座とは長期間にわたって取引がまったくない預金のことです。全国銀行協会によれば、最後に入出金した日や定期の最終満期日から銀行は10年、ゆうちょ銀行は5年以上経っており、預金者本人と連絡のつかないものをいいます(法律上は銀行預金が5年、信用金庫などは10年で債権が消滅するとされます)。ただ、現在はほとんどの金融機関が休眠口座になってしまった後でも、本人の確認が取れれば解約できるようです。
「お金を預けたまま放置することがあるのだろうか」と思われる方もいるかもしれませんが、例えば「家賃が引き落とされる銀行が指定されていたので、新たに口座を開設したが、引っ越す際に解約しそびれた」「結婚前に使っていた口座だけれど、残金がほとんどないので引き落とし、解約が面倒だった」といった例が考えられるでしょう。
休眠口座の額は2011年3月時点で882億円といい、これは銀行が利益として計上できることになっています(銀行、信金、信組、労金の場合)。ちなみに2009年度が846億円、10年度が883億円となっています。これらはその年度、1年間で生じた額です。この休眠口座のお金を、さまざまな分野の財源に充てようという意見が上がっています。
休眠口座の利活用を求める声
2011年3月11日に発生した東日本大震災で大きな打撃を受けた東北の復興資金に充てようと、当時の与党であった民主党が休眠口座の活用に意欲を示していました。
その後、民主党は2013年に法整備を進め、2014年から検討を開始するとしていました。自民党に政権交代してからの安倍政権も、休眠口座の活用に意欲を見せています。自民党の菅官房長官も国会答弁で「休眠口座を公共のために活用することは極めて重要だ」と答弁しています。
民主党政権時代に「休眠口座基金創設」を提案した認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表らが代表理事をつとめる「給付型奨学金の実現を求める有志一同」は、給付型の奨学金の実現のための財源として休眠口座を活用してはどうかといった提案も行っています。