アメリカでまたもや大型買収のニュースがありました。5月18日、アメリカの通信大手であるAT&Tがアメリカの衛星放送大手のディレクTVを485億ドル(日本円にして約4兆9,200億円)で買収することを両者が共同発表しました。負債の引き受け分も含めるとAT&Tの買収総額は671億ドル(日本円にして6兆8,100億円)にもなります。AT&Tは携帯電話やインターネットサービス等の通信事業を行っており、有料放送を行っているディレクTVを買収することで成長期待の高いインターネット関連事業を強化できるとの目論見があるようです。
アメリカでは放送・通信業界の買収が相次いでいます。ソフトバンクがスプリント及びTモバイルの買収を進めていますし、今年2月にはアメリカのケーブルテレビ最大手コムキャストが第2位のタイムワーナー・ケーブルを総額452億円で買収することで合意しています。背景にあるのはグーグルやアマゾン、フェイスブックといったネット企業の急成長であり、それまで通信業界の主導権を握っていたブロードバンドの通信業者は買収だけでなく裁判を行ったり、行政に働きかけたりと様々な手で対抗をしています。以前はグーグルなどの大手ネットサービス企業はブロードバンド企業のインフラを使ってサービスを展開していましたが、巨大化した大手ネット企業は自らインフラを整備してサービスを展開しようとしています。
放送企業や通信企業は今までのサービスだけでは今後苦戦が強いられることになります。そこで放送企業や通信企業はスマホやタブレット、パソコンで手軽に見ることができる有料放送に力を入れているというわけです。アメリカの通信放送業界を考えるときには「ネットワークの中立性(ネット中立性とも言います)」が1つのキーワードになっています。中立性の規制内容により、ブロードバンド企業、ネットサービス企業の優位性が大きく変わることになります。この規制緩和が進むのか、それとも規制強化の方向に進むのかというところが、今後のアメリカ通信放送業界を見ていくうえでの注目点となります。
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