第31回オリンピック競技大会(リオデジャネイロ五輪2016)が、日本時間の8月22日に閉幕した。日本は史上最多41個(金12、銀8、銅21)のメダルを獲得、2012年ロンドン大会の実績をも上回った。この2週間は五輪関連報道が目白押しで、日本列島はメダルラッシュに沸いた。日本人選手の活躍は多くの人に感動を与え、それは2020年東京大会へ引き継がれることだろう。
連日テレビのトップニュースはメダルの獲得数だ。新たにメダルを獲得した選手を紹介、メダル数と国別世界順位が報じられる。ただ、「オリンピック憲章」にはオリンピック競技は国家間の競争ではなく、個人または団体間の競争であり、国別のメダルランキング表の作成を禁ずるものとされている(*)。
実際には国別のメダル数に関心が集まるのは仕方ないが、それ以上にメダルを懸けて真剣勝負に挑む選手の姿は観る者の心を激しく揺さぶる。今はメダルを獲得した日本選手の歓びと感動を共有したい。
メダルが期待される選手へのインタビューでは『少しでもいい色のメダルを取りたい』という発言をよく聞く。目指すは金メダルだが、ある柔道選手は『金と銀では天国と地獄ほどの違いがある』と語っていた。確かにレスリング女子フリースタイル53キロ級の吉田沙保里選手が決勝戦で敗れ、五輪4連覇が阻止されての銀メダルには全く笑顔はなかった。
すべてのメダリストは幸せに違いないが、どの選手の幸福度がより高いかを調べた心理研究がある。最も幸福度が高いのは金メダリスト、次いで銅メダリスト、3番目が銀メダリストだ。銀メダリストは決勝戦で敗れて金メダルを逃した悔しさが残るが、銅メダリストは多くの選手のなかからメダルに届いた達成感が強い。選手の幸福度はメダルの色ではなく、順位の相対的な関係にあるようだ。
今回のリオ大会を観ても、銅メダルに輝いたウエイトリフティング女子48キロ級の三宅宏美選手や卓球男子シングルスの水谷隼選手、カヌー男子スラローム・カヤックシングルの羽根田卓也選手など、銅メダリストの歓びに満ちた表情は素晴らしい。96年ぶりにメダルを獲得した男子テニスや卓球女子団体など数多くの種目で、次の東京大会での一層の活躍が期待される成果だった。
選手にとってメダル獲得は、これまで重ねてきた血のにじむような努力と練習が結実した瞬間だ。結果は一瞬でもそこへ至る道のりは果てしなく長い。目標として金メダルを目指すのはもちろんだが、結果として獲得したメダルには金・銀・銅の違いはないように思う。メダリストたちはメダルの色に関わらず眩しいばかりに輝いている。日本代表選手のみなさん、本当にお疲れさま、そしてありがとう。
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(*)日本オリンピック委員会(JOC)ホームページ<
http://www.joc.or.jp/olympism/education/20090201.html
>より
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土堤内昭雄(どてうちあきお)
ニッセイ基礎研究所
社会研究部 主任研究員
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