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(画像=Webサイトより)

現在日本で売れている新車は軽自動車が多数を占め、高級車では輸入車が販売数を伸ばしている。一方、かつては売れ筋だったミニバンは人気が低落している。理由として挙げられているのが、SUVにすっかり入れ替わったというものだ。ミニバンはファミリー層に人気が高かったが、ファミリー用途であれば便利な都市型SUVのほうがよりスタイリッシュで使い勝手がいいからだ。

都市型SUVにすっかりお株を奪われた感のあるミニバンだが、高級ミニバンは大型で価格も高いにもかかわらず好調に売れている。中でも代表的なものがトヨタの「ヴェルファイア」と「アルファード」だ。なぜ高価格・高級なミニバンが売れているのだろうか?

圧倒的な押し出しの強さ

ヴェルファイア&アルファードの最大の特徴はそのボディサイズだ。フルサイズでおおよそ1900mmほどの車高がある高級ミニバンは、一目で見てその大きさに圧倒される。その高さによってフロントマスクの上下幅も厚い。ここにメッキグリルを装着すると、セダンでは実現できない迫力を生み出せる。特別仕様車では高輝度塗装の専用アルミホイールやゴールドのフロントエンブレムを用意するなど、威圧感すら感じる迫力だ。

またエクステリアのみならず、インテリアも豪華絢爛だ。キラキラと輝くメッキ類と木目調パネルを多用した内装はクラウンと同等かそれ以上の見栄えに仕上げられており、日本のユーザーが感じる豪華さを追求している。横につけたセダンが物怖じするほどの存在感だ。

走る高級ラウンジ 豪華な装備で価格も高額

大型のボディを活かした広々とした室内空間は、3列目シートまで含めて頭上と足元が広く、2列目がセパレートタイプなら、両側にアームレストが装着されたキャプテンシートになり、座面の下側には脚を支えるオットマンまで装備されている。

さらに上級のエグゼクティブパワーシート、エグゼクティブラウンジシートになると、大型の固定式アームレストも装着されていて、まさに「走る高級ラウンジ」だ。またリアシートエンターテインメントシステムとして、12.1型ディスプレイを後席の天井に装着することも可能だ。

車体の大きさにプラスしてこれらの豪華装備により、2.5リッターのノーマルエンジン搭載車の車両価格だけでも総額450万円以上に、ハイブリッドとなれば、中級グレードでも500~600万円になる。

最上級クラスは驚きの700万円越えだ。クラウンの売れ筋であるハイブリッドのロイヤルサルーンは400万円後半、メルセデスベンツ CクラスのC180アバンギャルドも400万円後半であることとと比べると、上級セダンと同等の予算で、豪華な広い室内と充実装備が際立って見える。ヴェルファイア&アルファードの方が買い得という考え方もできるだろう。

本当のターゲットは?

ここまでを見ると従来のミニバンに飽き足らずに上級ミニバンに移行したい人がターゲットのようにも見えるが、果たしてヴェルファイア&アルファードの本当のターゲットは誰なのだろうか?それにはヴェルファイア&アルファードに設定されているエンジンにヒントがある。

一番廉価なグレードは2.5リッター直列4気筒2.5リッターであるが、上級グレードはV型6気筒3.5リッターだ。通常ミニバンにはこれだけのエンジンは求められないだろうと思われることから、巨体にV6エンジンを積んでいるのは明らかに「走り屋」を意識してのことだろう。多くのカー・インプレッションでも、V6エンジンの走りの良さが評価されている。

巨大な車格と押し出しの強いエクステリア、豪華なインテリア、なんといってもこれでもかといった高級感、そして不釣り合いにも見える「走り」のためのエンジン。ミニバンに実用性よりも趣味性を求める人が裏ターゲットなのだ。目立ちたい、格上に見せたい、豪華な装備に満足したい、家族や友人を乗せて、何よりも走りも楽しみたい。敢えて言えば、ヴェルファイア&アルファードの仮想ターゲットはいまどきの「マイルド・ヤンキー」だ。

マイルド・ヤンキーをとらえたマーケティング

いまや流行語を超えて一般用語になりつつあるマイルド・ヤンキー。彼ら(彼女ら)の価値観やニーズを捉えられるように商品設計と装備がなされている。(トヨタが意図したか否かに拘わらず、彼らのニーズにフィットしているのは確かだろう)

企業の社長や政治家、芸能人などが使っていることも車格イメージを上げている。ヴェルファイア&アルファードに乗ればエグゼクティブな気分になる。

さらにはV6エンジンを選べば走りも楽しめる。自分も格が上がったように感じられるのがヴェルファイア&アルファードの最大の魅力なのだ。つまり昔は「いつかはクラウン」だったのが、今は「いつかはヴェルファイア&アルファード」になったといえる。

車高も気分も高く、まさに周囲を見下ろす「上から目線」こそがヴェルファイア&アルファードの最大の魅力だといえるだろう。(ZUU online 編集部)