シャトレーゼ,菓子,ドバイ,海外進出
(海外店舗の地図、画像=シャトレーゼWebサイトより)

総合菓子メーカー「シャトレーゼ」(山梨県甲府市)が11月、中東のドバイに進出しショッピングモール内に店をオープンした。デパ地下に出店しないことや、200円以下の激安ケーキなどで知られる同社はここ最近、グループ拡大と海外進出が目覚ましい。受けている理由はどこにあるのか。

アジアから中東まで

情報サイト「ドバイ経済新聞」によると、11月20日、ドバイのショッピングセンターにシャトレーゼ初店舗がオープン。人気商品のスフレチーズケーキをはじめ、ショートケーキやチョコレートケーキのほか、カステラやどら焼きなど70種類の和洋菓子を販売している。

イスラム圏だがクリスマス商戦は活発だったようで、24、25日にはクリスマスケーキの予約販売も行った。地元からの評判はまだあまり伝わってきていないが、在ドバイ日本人にとっては「懐かしの味」となったようで、「最近ドバイに出来たシャトレーゼで買ったどら焼き&モンブランを食べて日本を思い出して日本人の友達と大感動」とSNS上に記す人もいた。

同社の海外展開は2012年4月にさかのぼる。「新たな市場を獲得する。スイーツの本場、欧州で挑戦し、世界ブランドに育てたい」として、オランダの老舗菓子メーカーの株式を100%取得し、直営ではないが店舗をオープンさせた。その後も台湾、シンガポール、マレーシア、中国、韓国など東南アジアに続々と進出。日本経済新聞電子版(2016年4月30日)によると、同社は2017年3月までに海外50店を目標としているという。

日本の食品は世界で大人気

人気の秘密はどこにあるのだろうか。同紙は同じ記事の中で「(同社は)東南アジアなどでは日本製の菓子の人気は高く、需要が見込めると判断した」と伝えている。中東でも東南アジアでも、同社が海外進出の鉄則にしているのが、製品は日本国内で製造し、冷凍輸出するということだ。

日本の食品はコメにしろ果物にしろ牛肉にしろ世界で大人気だが、味が高く評価されているのは加工食品でも同じようだ。

東南アジア諸国の生情報を伝えるサイト「教えてASEAN.NET」によると、シンガポールのチャイナタウンに今年7月にオープンしたフランチャイズ店舗には1日に1000人以上の客足があるという。

一番人気がシュークリームで1日に900個売れるとか。オーナーは「日本のケーキは見た目がかわいくて華やかで種類も多いので、消費意欲をそそるのではないか。日本の卵や牛乳を使っているのでメイドインジャパンの品質がそのままシンガポールで楽しめるのも、人気の大きな理由では」としている。

品質へのこだわり

全日本菓子協会によると、2015年の菓子市場は3.3兆円規模。この中で、同社は同年、464億円を売り上げ、不二家やモロゾフなどのケーキメーカーを押さえ、トップ。少子化を背景に国内市場が頭打ちになり、小売企業のプライベートブランド商品も浸透して競争が過熱する中で、毎年、売り上げを伸ばしている。

一般消費者にとってシャトレーゼといえば、「デパ地下は避け、ロードサイドばかりに出店する」「工場見学でアイスが食べ放題」などで知られるが、イメージの中で一番大きいのが「安さ」だろう。今年11月に発売された「苺のショートケーキ」「クリームスフレチーズケーキ」「チョコショート」「モンブラン」の定番ケーキ4種類はすべて200円以下だ。

ただ、「安かろう、悪かろう」では売り上げが伸びるはずがない。牛乳、卵、水、果物など、地元山梨県とその近県から取り寄せた高品質な素材へのこだわりが味のすべてと言えよう。卵は契約農家から仕入れたらその日のうちに使う。チョコレートは国際規格をクリアしたベルギー産クーベルチュール。食品添加物は使わないか、できる限り減らす。いい菓子はいい素材からしかできない。そんなこだわりがそのまま、「日本品質」となり、海外でも通用しているといえる。

高品質低価格を維持できる経営力

高品質かつ低価格と相反する魅力を実現するのが、その企業の経営手法といえよう。2014年11月にテレビ東京系列で放映された「カンブリア宮殿」では、その秘訣が惜しげもなく披露されていた。

百貨店やスーパーにケーキを卸していると、スーパーバイザーから値下げを求められたリ、や同業者との競合に迫られてしまう。味にこだわる同社に対し、利益を最優先する百貨店。当然、味にこだわった同社は、百貨店に頼るのはやめ、自社工場で作りたての菓子を、ロードサイドに設置した直営店舗に運び込んで販売するというスタイルを取った。
工場は徹底したオートメーション化。宣伝も控えたが、味に自信があったため、評判は口コミで広がっていった。

昭和29年に創業した同社は現在、シャトレーゼ単体では従業員数1700人、売上高464億円。ワイナリーやホテル、ゴルフ場、スキー場などのグループ企業全体では同3000人、606億円にまで成長している。

番組内で作家の村上龍氏は「安いのになぜこんなにうまいのかと思っていた」と振り返り、「経営の天才。天才的な怪物」と社長の手腕を絶賛した。「日本の庶民のスイーツ」が世界を席巻する日が楽しみだ。(ZUU online 編集部)