独身者にとって、現役時代は特に不安がなくても、老後を一人で迎えることに不安を感じる方は少なくありません。一人で過ごすことへの不安と、資金面での不安の両方があるかと思います。
ここでは資金面について、独身者にとって老後に必要な生活資金は、どのぐらいなのか解説しましょう。
老後にかかる生活費は?
総務省の「家計調査-平成27年平均速報結果の概況」によると、調査時点で60歳以上、単身無職世帯における月々の実収入は11万5,179円なのに対し、支出額は15万6,374円となっています。この調査結果からいえることは、毎月4万1,195円の赤字が生じているということです。仮に65歳で仕事を退職し、その後仕事に就かない場合にはどの程度の生活費が必要となるのか試算してみましょう。
まず、実際の高齢無職単身者の状況から、月々の生活費は15万6374円とします。また、厚生労働省の「平成27年の簡易生命表」から、65歳時点の男性の平均寿命は84.46歳と判断できるため、85歳まで生存したとします。つまり、仕事を辞めてから20年生存するとして考えていきます。仮に余生が20年間あるとすると、その間の生活費は下記のように試算できます。
15万6,374円×12カ月×20年=3,752万9,760円
なお、65歳の女性の場合には、平均寿命は89.31歳と判断できるため、90歳まで生存したとすると、下記の生活費が必要と試算できます。
15万6,374円×12カ月×25年=4,691万2,200円
ただし公的年金が支給されたり、退職金を受け取れたりする場合は、ここまでの資金を貯める必要はないといえます。そのため、一つの参考として、家計調査の毎月の赤字額4万1195円から試算すると、上記ケースの男性で988万6,800円、女性で1,235万8,500円不足することになるため、何かしらの形でカバーしていく必要があるといえます。なお、この金額はあくまで現在の無職高齢単身者から算出したものです。今後、公的年金額の減少なども想定しておく必要があるため、さらに資金をためておいた方がいいともいえます。
年金でまかなえない場合にはどうしたらよいのか?
男性で1,000万円、女性で1,235万円というのが、一つの目安として最低限貯めなければならない資金といえるわけですが、これは公的年金をある程度受け取れる場合の目安になります。場合によってはさらに資金を貯めなければなりません。
では、年金でまかなえない場合にはどうしたらよいのでしょうか。上記の女性のケースを想定し、仮に年金でまかなえない資金が、1,235万円だとしましょう。退職金が支給されるのであれば、この資金はある程度カバーできるのではないかと思います。また、退職金がない場合には、事前に計画的に貯蓄を行っていくか、運用により資産を増やしていく必要があります。
それでは、どのぐらいの期間で貯蓄できるのか試算してみましょう。単純に預貯金で1,235万円を貯める場合には、1カ月で5万円貯蓄するとした場合、21年ほどかかると考えられます。投資信託や株式などで運用を行った場合には、毎年48万円(月々4万円貯め、年間で48万円とする)の積立運用で、年3%の利回りを目指した場合、20年間で1,310万円の資産が構築できることになります。毎年36万円(月々3万円)、年3%の運用であれば、25年間の運用で1,333万円の資産構築ができます。
このように、20~25年の時間をかけることができれば、貯蓄であれば月々5万円、運用であれば月々3万~4万円を1つの目標に据えることで、不足分は確保できることになります。会社に確定拠出年金などの制度がある場合には、自助努力で貯めるお金はさらに減ることになります。
寂しい老後にしないために
時間を味方につけることができれば、40代から老後資金の準備を始めても遅くないことがわかります。もちろん、さらに早くから資金準備をしておくことで、月々貯める金額を減らすことも可能ですし、時間を味方にした資産運用を行うことも可能です。
ある程度まとまった資金があれば、老後も寂しくないことでしょう。むしろ、優雅に楽しめるようにするためにも、目標額を決めて老後資金の準備に取り掛かりましょう。
早め早めの準備を
老後が不安と思った方でも、退職金である程度資金がカバーできることや、早めの資金計画により老後の資金は確保可能なことがお分かりになっていただけたと思います。今すぐにでも、できることから取り掛かりましょう。老後資金は早め早めの準備が功を奏します。(提供: プライベートFPオンライン )