「規制(Regulation)」と「テクノロジー(Technology)」を融合させたRegTech。金融ITソリューションという点ではすでにおなじみとなったFinTechと共通するが、こちらは金融規制への対応に重点を置いている。テクノロジーを利用して、規制対応の効率化を図るというコンセプトだ。

目まぐるしく変化する金融規制への効率的対応策として、RegTechがFinTechに続く金融革命の火種となることは間違いなさそうだ。

中でもロンドンRegTechへの投資が今年、飛躍的な数字を記録すると期待されている。2016年の国際RegTec投資額は6億7840万ドル(約783億2806万円)と、過去5年間で3倍の急成長ぶりだ。

RegTechで活用されている技術

IIF(国際金融協会)を含む規制機関は、「リスクデータ収集」「市場・決済のリアルタイムの監視」「モデリングおよびシナリオ分析」「顧客認証」「規制改革などにともなう早期影響把握」などと定義づけている。

具体的に活用されるテクノロジーは「AI(人工知能)・機械学習」「ブロックチェーン・分散型台帳」「生体認証」「暗号化」「API」「クラウドアプリ」など。これら最新の技術を屈指して、刻々と変化する金融規制に最適な環境を創出することが狙いだ。

年平均成長率38.5% 北米がロンドンを追いあげる

FinTechとともに金融システムに革命を起こすと期待されているRegTechだが、現時点ではFinTechほどの市民権を得るに至っていない。しかしロンドンを中心に着実に活性化しており、2012年には1億8460万ドル(約213億99万円)だった投資が、2016年には6億7840万ドル(約783億2806万円)にまで成長。CAGR(年平均成長率)は38.5%、投資件数も32件から70件に増えた(FinTechグローバル調査)。

過去5年間のロンドンへの投資は39件。次いで北米への投資が多く、ダブリンやパリといった欧州都市も頭角を現しているが、RegTech最大の投資企業3社がロンドンに本拠を置くなど、ロンドンがRegTechを先導するうえで有利な条件がそろっているようだ。

昨年最大の取引は仏金融コンサルティング会社、Idinvest Partnersから2500万ドル(約28億8425万円)の調達に成功したロンドンのRegTechソフト・スタートアップ、Onfido。また行動分析スタートアップ、Featurespaceも米金融コンサルティング会社、TTV Capitalから900万ドル(約10億3833万円)を獲得するなど、大型投資が相次いだ。

金融不正犯罪防止RegTechへの投資が市場の約半分

RegTech分野の中では、金融不正犯罪対策を専門とするスタートアップが注目されている。この分野への2016年の投資額は3億3480万ドル(約386億2922万円)に拡大。2014年と比較すると2億5260万(約291億4498万円)も増えており、RegTech市場の49.4%を独占する勢いだ。

FinTechグローバルの投資家の間では、さらなる加熱への期待が高い。2008年のリーマンショック以降、金融規制強化に向けた動きが国際規模で広がり、それにともない多くの金融機関が巨額のコンプライアンス・コストに悩まされている。

年々圧力を増すコスト問題を軽減する手段として、RegTechの需要が跳躍するのは当然の成り行きだろう。そしてRegTechを発展させていくだけの環境、資力、人材、テクノロジーが集結した金融ハブとして、ロンドンに関心が集まるのも不思議ではない。

RegTechスタートアップ データ分析からリスク測定まで

注目のロンドンRegTechスタートアップを見てみよう。

データ会社、Data Explorersの設立者、マーク・フォークナー氏が2012年立ちあげたCredit Benchmark。国際大手銀行から収集したデータを基に、債務不履行の確率(PD)やデフォルト時損失率(LDG)を含むリスク要因を測定する。

国際個人認証スタートアップ、Kompliは、「Boolean演算子」を用いた検索法と地域密着型の調査スタッフが個人の身元を確認。マネーロンダリングなどのリスクを軽減するサービスを提供している。

バンキング・データ管理プラットフォームで表舞台に踊りでたFintellix。リスク管理からクレジット・ポートフォリオ管理まで、規制関連業務の力強い味方だ。

こうした新鮮なスタートアップの登場も含め、RegTechの盛りあがりがますます期待できそうだ。国際FinTechアクセレーター「Startupbootcamp」のネクタリウス・リオリオスCEOは、「大型投資が少ないのはRegTechがまだ発展の初期段階にあるため」と、今後投資規模が拡大していくと確信している。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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