ドル円予想レンジ107.80-111.00
「(ドル円は)レンジの下限だと思うけど、ちょっと下向き(ドル安円高)加減かな・・」-。これは8/24の夕刻に話した懇意の代議士見解だ。
予定調和を乱す「トランプ音頭」
政治家としての立ち位置は大きく異なるが、前出、懇意の代議士は政治信条に照らして自らの言動に責任持って行動している。無論、その可否は選挙区の有権者や国民、そして議会に委ねられる。
しかし、トランプ米大統領は8/22のアリゾナ州フェニックス市での支持者を中心とした集会では人種差別容認ともとれる自身の発言に対し「きちんと伝えなかった」とメディアを批判した。メキシコとの国境の壁建設は「絶対に必要だ」と強調し、「米国第一主義」に基づく政策の実行を訴えているのだ。しかし、これが支持者以外の有権者、国民、議会からの不信感を更に高めているようにも映る。
予定調和を乱しかねないトランプ音頭に筆者が憂うことは2点。一つは対話姿勢を意に介さないトランプ大統領が改めて次期FRB議長候補(既に国家経済会議委員長コーン氏が浮上しているが)を挙げ、金融政策へのセンスを市場に疑われること。二つ目は議会との協調姿勢を示さない同大統領に対し米議会が債務上限の引き上げを9月末までに承認するのかどうかである。
確かにムニューシン財務長官は7/27の上院歳出小委員会で9月まで政府が資金を賄えるとの見解を示しており、議会予算局(CBO)も、現在の債務上限で財務省は政府資金を10月の初めから半ばまで賄えると推定している。しかし、政権と議会との調和が不確実であるなかでは、9/5に米議会を再開しても、審議長期化は否めないのではないか。
8/17に慎重なハト派と目されているミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁が「バランスシート縮小の開始時期は債務上限引き上げ問題の行方を考慮する」と明言。9/20のFOMC連邦公開市場委員会は債務上限審議の真っただ中に開催されるのだ。
デフォルト(債務不履行)懸念が渦巻く綱渡り時期に果たしてイエレン議長は縮小開始の決断を示せるのか。晩夏の「トランプ音頭」には警戒を更に高めておく必要がありそうだ。
ドル円上下焦点
8/28週のドル円上値焦点は8/23高値109.835、110円の節目。超えれば8/17高値110.39、そして8/6高値110.96、8/2-4高値111.00-06が期待値。7/28高値111.345を超えても日足一目均衡表雲下限111.645の抵抗から7/27高値111.72や112円台は当面望外か。
下値焦点は8/24安値108.824、8/21安値108.625、8/18安値108.59、週足雲下限108.438、4/17-19安値圏108.11-31-37。割れた場合は昨年11/15安値107.76が意識されると推考。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト