ドル円予想レンジ111.50-113.90

「Thank you. Thank you very much, everyone. Sorry to keep you waiting (ありがとうございます。皆さん、お待たせしました)」-。これは昨年11/9夕刻、米大統領選挙・当選確実となったドナルド・トランプ氏の勝利宣言だ。

トランプ大統領誕生後、初の「七面鳥恩赦」を控えて

トランプ政権誕生決定から早いもので1年が経過。第45代米大統領就任式があった2017年1月以降、FOMCは3月、6月に利上げを執行。12月FOMCを控えて、利上げ確率を示すシカゴFEDウオッチでは91.5%(11/17時点)と織り込み度合は極めて高く、金利面で対ドルでの円買いインセンティブが低いことは明確だ。しかし、円安(ドル高)に一本調子では進んでいない。大規模減税策・インフラ投資の不透明感、そして低金利意向とドル高牽制、主要国との貿易協定見直しと米貿易赤字の縮小姿勢、更にはロシアゲート疑惑が、その阻害要因となっている。

そうした中、11/20週に筆者が危惧する円高(ドル安)懸念材料が2つ。それは、(1)11/7時点のシカゴIMM通貨先物市場において、投機筋の円売り(ドル買い)ポジションが今年の最高水準となる約12.7万枚に増加したこと。(2)米景気指標が無難な結果を出し続けているものの、米税制改革法案の審議先行きが不透明なうえ、債務上限の適用停止期限も12/8に迫っていること、である。

(1)に関しては過去則から臨界点を感じさせる水準であり、(2)の債務上限問題は、特別措置により実際の期限は来年2月~3月に先送りの可能性があるものの、共和党内での意見対立やトランプ政権による議会調整能力への疑念が、ドルロング派の不安に転じている筈だ。“更なる円売り(ドル買い)テーマが希薄”、“政治の先行きが読み難い”とする、2つの懸念が強まるようだと、11/23の本邦勤労感謝祝日、米国ではサンクスギビングデー(感謝祭)を控えてリスクポジションの縮小、調整に動く、とも読めそうだ。ホワイトハウスでは例年、大統領恩赦として2羽の七面鳥が解放される行事があるが、ドル円も11/23に向けて下放れる可能性に警戒したい。

11/20週ドル円

上値焦点は11/16高値113.32、11/15高値113.51、11/14高値113.92、11/9高値114.08、11/7高値114.35、11/6高値114.75。114円台を意識するには相応の大義名分が求めされそうだ。下値焦点11/15と10/20安値圏112.46-51、週足一目雲上限112.325。割れた際は日足一目均衡表での111.673から112.086にかけた緩やかな雲上限の切り上がりや111円後半推移の200日線が押し目買い意欲を支援するか注視。10/13、16安値圏111.64-67、9/25-26安値圏111.46-49を最終橋頭堡と推考。

為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト