資格を取得すれば、専門知識を活かして世の中のため人のため仕事ができる。キャリア構築を考えるとき、キーワードとなるのが資格である。特に人気があるのが「弁護士」「公認会計士」「税理士」「証券アナリスト」の4つだが、果たして現状はどうなのだろうか。

弁護士 難関資格の代名詞的存在の今

(画像=Amnaj Khetsamtip / Shutterstock.com)

予備試験合格を目指す人の割合が増加

司法試験を受けるための方法は2つある。一つは予備試験を受ける、もう一つは法科大学院に進むことである。

法務省によると、2017年には6716人が司法試験に出願した。最終的に合格したのは1543人で、合格率にすると約23%だ。予備試験合格者は408人が受験して290人が合格しているので、その合格率は約71%だ。法科大学出身者は6308人のうち1253人が合格しているので約20%だ。合格率は予備試験合格者が断然高い。

参考までに、2016年は7730人が出願して最終合格者は1583人。最終合格者は予備試験合格者が235人、法科大学院出身者が1348人だ。全体の合格率は約20%だ。

新司法制度になって弁護士バッジをつけた法科大学院出身者も多くなってきたが、ここ3年は出願者全体の数が減少している。2015年には9000人を超えていたが、2017年は6700人余だ。

その中で目を引くのが、予備試験に合格して司法試験を受ける人の数が増えつつある状況だ。出願者数だけでなく合格者数も増えている。2015年には307人だった出願者が2017年には408人だ。最終合格者も186人から290人になっている。

むしろ法科大学出身者で受験している人が減っていると考えるべきだろうか。2015年に7715人いた出願者は、2017年には6308人と1400人近く減っている。1664人いた最終合格者も1253人となっている。

予備試験合格者の最終合格率は7割と極めて高い。予備試験合格までには3回試験を受ける。既に2018年の試験日程も決まっていて、短答式が5月、論文式が7月、口述が10月だ。

このステップを経て2017年に予備試験に合格して出願した408人の年令層は、20~24才が163人と最も多い。そして163人中155人が最終的に合格している。合格率が95%だから、ほとんどの人が合格している状況だ。

職種別で見ると、大学生と法科大学院生を合わせた出願数は194人だ。合格は185人で合格率95%だ。これらの結果から、予備試験合格者の半数近くが20代前半の学生で、そのほとんどが最終的に合格していると言える。

ちなみにこの予備試験合格者408人の中には会社員も46人いる。最終合格者は23人とちょうど半数だ。

それなら予備試験を受けて司法試験に臨んだ方が有利に思える。ところが、この予備試験を突破するのが難しい。平成29年も1万3178人が予備試験に出願している。受験資格に制限がないため法曹界への近道として受ける人も多いが、実際に合格しているのは2016年で3.9%だ。この狭き門を突破して来た408人だから、合格率が高いわけである。すなわち、予備試験で合格するのはもともとずば抜けて学業優秀だった人で、既に相当の法律の知見を持っている場合に限定されると見た方が良い。

法科大学院は社会人向き

司法試験を受ける人の9割が法科大学院の出身だ。予備試験よりも弁護士になりやすいと言われているが、それでも法科大学院出身者の最終合格率は20%だから、5人に1人しか合格できない狭き門である。

法科大学院に通うには、国立でも年間80万円、私立だと100万円以上の学費がかかる学校もある。卒業しても弁護士になれる確率は20%だから厳しい世界だ。

予備試験突破がかなり高いハードルであることを考えると、法科大学院という環境に身を置いて弁護士の道を目指す人が多いのもうなずける。

司法試験合格者の道 資格が生かせる職場

司法試験に合格した人が民間で働くとすれば、法律事務所や企業の法務部が一般的だ。当初法律事務所にお世話になり、のちのち独立して自分の事務所を持つ人もいる。企業に就職した場合は企業内弁護士として、あるいは法務部やコンプライアンス部で法律のプロフェッショナルとして仕事をする。

昨今ではコンプライアンス体制を構築し遵守することは、社会的にはもちろん、企業価値向上の観点からも強く求められている。そのため、社内の法務及びコンプライアンス部でも、法律に対して深い知見と経験をもつ人間を求めている。

そのためか社外監査役の一人として、弁護士が迎え入れられる事例も多い。コンサルティング会社でも資金調達・事業再生・M&A・事業承継などには、様々な法規制がかかっているため、弁護士の知見が活かせるケースがある。

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公認会計士 合格率は1割程度

公認会計士は監査と会計の専門家である。監査を行える唯一の国家資格でもある。資格を取得すれば、監査法人で公認会計士として企業の会計監査に従事したり、公認会計士として自分の名前で事務所を開設したりできる。

活かせる職場は監査法人やコンサルティングファームなど

監査法人では、多くの公認会計士を必要としている。四大監査法人(あずさ、トーマツ、PwCあらた、新日本)などで仕事をすれば、大企業の監査を数多く手掛けることができ、様々な経験を通じて企業活動の知見を深めることができる。そうした経験を活かし、証券会社やコンサルティングファームなど金融の領域でM&Aなど投資銀行業務に係る公認会計士もいる。

自分の事務所を開設すれば、自分のペースで仕事ができる。独立役員として企業に参画する公認会計士も多い。また、事業承継や財務改善など企業経営のアドバイス等を行い、経営者とともに企業を育てていくスタンスの公認会計士もいる。

独立した公認会計士は、ワークライフバランスを図りやすく、知的で報酬が高めの仕事と言える。そのためか、女性の公認会計士の数も年々増加しており、2016年12月現在登録している2万9303人のうち、女性は4015人だ。

公認会計士試験の傾向は

日本公認会計士協会によると、公認会計士も短答式と論文式の二つの試験がある。2016年には1万256人が受験し、1108人が最終的に合格となった。前年は1万180人が受験し、1051人が合格である。毎年1000人の新しい公認会計士が世に出ていることになる。合格率は10%ぐらいだから、決して簡単とは言えない試験だ。

合格した1108人の内訳だが、最も多いのが学生で543人だ。専修学校、各種学校の受講生252人を合わせると795人となり、8割近くが学生になる。大学の商学部や経営学部の会計学科などに在籍した場合、学生時代から受験体制にあり合格につながりやすいのだろう。

企業や会計事務所などで経理や財務を担当する人の中には、日常の業務への関心の高さから公認会計士に関心が高まり受験する人もいる。合格したら独立が可能になる。平成28年も70人の会社員と56人の会計事務所員が合格している。

税理士 登録数は公認会計士の倍以上

税理士資格を取得すると、税理士事務所、もしくは税理士法人で仕事をするのが一般的だ。また、税務のスペシャリストとしてコンサルティング会社や銀行・証券会社など金融業界に軸足を置く人もいる。

税理士資格の魅力とワークスタイル

例えば、コンサルティング会社などでは税務アドバイザリー業務がある。富裕層や資産家の相続、事業承継、資本政策などについて税務面でのアドバイスを行う。銀行や証券会社などにおいても、税理士資格をもった人がソリューション提供に活躍している。

あるいは自分で事務所を持ち、地域の税務相談の担い手となり、個人から法人まで幅広い顧客層を持つ税理士もいる。個人や中小企業を対象にした税理士も数多く、地元密着で働ける職場でもある。資格を取得してすぐに事務所を開設する人もいれば、しばらく他の事務所に勤務してノウハウを学んでから独り立ちする人もいる。

日本税理士会連合会によると、2017年10月末に登録している税理士の数は、全国で7万7008人だ。公認会計士が3万人弱であることを考えると、その二倍以上の数の税理士がいることになる。

税理士になる方法

意外と身近に思える税理士だが、税理士もやはり国家資格である以上、試験もあるし実務経験も求められる。

合格するには、試験科目の中から会計学の2科目と税法の3科目の合計5科目の合格する必要がある。合格率は10〜20%ということだ。加えて、租税または会計に関する事務に従事した期間が2年必要だ。税理士になるのも長く、根気が要る道のりだ。

にもかかわらず、働きながら合格を目指す人も多い。それというのも、1科目ずつ受験が可能だからだ。一度合格した科目は一生有効なので、仕事と並行して1科目ずつ勉強し、合格を積み重ねていくのだ。最終的に5科目を獲得すれば、2年の実務経験を経て税理士への道が開かれる。

証券アナリスト 金融・資産運用のプロには欲しい

金融の世界、特に資産運用に係る仕事に欠かせないのが証券アナリストというイメージだが、実際はどうなのだろうか。

アナリストは本当に有利か?

アナリストと言うと、運用に係るアナリスト、ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャーなどが保有する資格だ。そのため、職場は証券会社、投信投資顧問会社、生命保険会社の資産運用部門などが考えられる。

実際に転職市場でこれらのポジションが募集されるときを想定しよう。ジョブディスクリプションには、「証券アナリスト資格保持者のみ」「アナリスト資格は尚可」などと書かれているポジションがある。だから持っているほうが有利なことは間違いない。

若手でポテンシャルを見る場合も、アナリスト資格の有無が問われる。運用の仕事に就きたい、でもアナリスト資格はこれからです、では説得力がない。運用の仕事をするつもりでアナリスト資格も既に取得しているならば、熱意と適性の高さを評価してもらえる。

アナリスト資格なしで運用業務に就いている人はたくさんいるが、もし転職を考えるなら自分の力をわかりやすく志望先にアピールするためにも持っているべき資格だ。

アナリスト資格は一次レベルと二次レベルに分かれていて、取得に時間がかかる。早めに取り掛かるほうがよく、中には学生時代から取得に向けて勉強している人もいる。

傾向と合格率は?

証券アナリストには、毎年2500人前後が受験している。合格率だが、ここ数年は45~50%の間ぐらいだ。試験だけでなく、講座の受講なども要件になっている。

公益社団法人日本証券アナリスト協会によると、2017年には2414人が受験し、1147人が合格している。合格率は47.5%だ。このうち合格者が多いのが、証券会社勤務の220人となり、全体の約20%を占めている。銀行が188人、投資運用会社が89人だ。その他事業会社なども465人が合格している。

合格者の多い企業ベストテンも掲載されている。1位は野村證券で57人、次が大和証券で53人と1位も2位も証券会社だ。3位が三菱東京UFJ銀行で40人。以下、みずほ銀行、三菱UFJ信託銀行と続いている。(ZUU online編集部)

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