バフェット
(画像=Krista Kennell / Shutterstock.com)

米金融大手バークシャー・ハサウェイ社のウォーレン・バフェット会長は、毎年投資家に宛てた書簡の中で、同社の短期および長期的な業績の原動力を説明してきた。

これらの業績の数値は、最新の会計基準、現在の投資環境、バークシャー社の継続的な成功を支えている「アメリカへの追い風」との関連で説明された。

バークシャー・ハサウェイ社の収益

バークシャー・ハサウェイ社の2019年の収益率はプラス11%、S&P500種はプラス31.5%でだった。2018年はバークシャー社はプラス2.8%、S&P500種がマイナス4.4%だった。

新会計基準によると、同社の2019年の税引き後利益は814億ドル、営業利益は240億ドル、株式の未実現の純キャピタル・ゲインが537億ドル増加し、実現キャピタル・ゲインは37億ドルとなった。

昨年末時点で同社が保有している2370億ドルの株式には、Apple(730億ドル)、Coca-Cola(235億ドル)、Delta Air Lines(39億ドル)、Amazon(11億ドル)のほか、多数の金融サービス企業が含まれていた。

以下は毎年恒例の書簡から英知を収集した。

1.どんなことも起こり得る

「時折、市場で大幅な下落、恐らく50%以上の規模があるだろう。しかし、アメリカン・テールウィンド(追い風)とアダム・スミス氏が述べた驚異的な組み合わせにより、株式は長期的に見れば、借り入れをせず、感情をコントロールできる個人にとって、はるかに優れた選択肢となるだろう」と語った。

2.米国会計基準(GAAP)に留意

バフェット氏は、バークシャー社の2019年の537億ドルの利益は、有価証券の未実現損益の純変動を含めることを要求した18年会計基準に基づく報告と述べた。2019年の市場動向「GAAP利益が1900%という驚異的な伸びを見せた!チャーリー・マンガー氏と私は、2019年にほとんど変わっていない営業利益に集中することを強く勧める」と述べた。

3.内部留保の利益にもっと愛を

バフェット氏は、ジョン・メイナード・ケイン氏の見解を挙げ、「時間の経過、健全な産業への投資や資産の実質価値は、配当とは別に複利で増加していく。投資家はなかなか賢くならなかったが、利益の維持と再投資の計算は今やよく理解されている」と述べた。

4.永遠の焦点

「過去10年間のバークシャー社の減価償却費総額は650億ドルだったが、有形固定資産への内部投資は1210億ドルに達した。生産性の高い運用資産への再投資は、今後も最優先課題だ」とバフェット氏は語った。」

5.主な買収基準

バークシャー社は、「常に3つの基準を満たす新規事業を買収しようとしている。第1に、業務に必要な正味の有形資本から十分なリターンを得なければならない。第2に、有能で誠実な経営者によって運営されなければならない。最後に、合理的な価格で買収できなければならない」。

6.結婚のような取引

バフェット氏は、「私の不均衡な記録を見直してみると、買収は結婚に似ているとの結論に達した。夫婦関係の記録はおおむね容認できるものであり、当事者は皆、はるか昔に下した決断に満足していると言えるだろう。提携の中には、明らかに牧歌的なものもある。しかし、意味のある数字を見ると、すぐに自分がプロポーズした時に何を考えていたのかを思うようになった」と説明した。

7.重要な違い

バフェット氏は、2つの主要な投資手法により、「非常に重要な会計上の差異」と説明した。「当社の被支配会社(バークシャー社が50%以上の株式を保有)では、各事業の収益は、当社が顧客に報告する営業収益に直接流入する。あなたは見ている物を得ることができる。当社が市場性のある株式を保有している非支配企業の配当金のみが、バークシャー社が報告する営業利益に計上される」。

8.スーパースター

バフェット氏は、「当社の損害保険(損益計算書)事業は、全米損害保険を買収した1967年以来、バークシャー社の成長をけん引してきた原動力であり、純資産で評価すると世界最大の損保だ。保険は約束のビジネスであり、バークシャー社の約束を守る能力は比類のないものである」と説明した。

9.真の総合価値

バフェット氏は、「当社の持分には、一部を所有し、事業を運営するために必要な正味の株主資本で20%以上を保有する企業の利益などが含まれている。これらの企業はまた過剰な負債を負わずに利益を得ている」と述べた。

10.楽観的な見通し

バフェット氏とマンガー氏は、5つの要素に基づき楽観論を主張した。「第1に、バークシャー社の資産は、完全または部分的に所有されている非常に多様な事業により形成されている。平均すると資本に対して魅力的なリターンを得ている。第2に、バークシャー社の傘下企業に、重要で永続的な経済的利益を与えている。第3にバークシャー社の財務は、会社が極端な外部ショックに耐えることができる方法で問題なく管理されている。第4に、バークシャー社は、単に高給かつ/または著名な仕事というより、熟練して献身的な経営陣を有する。最後に、バークシャー社の取締役は、経営陣の福利と大企業では稀な文化の育成の両方に常に焦点を当てている」と述べた。

Janet Levaux
MA/MBAのJanet Levaux氏は、投資アドバイザー誌の編集長。1991年から金融市場を取材し、2005年からはアドバイザーを務める。イェール大学、ジョンズ・ホプキンス大学でラテンアメリカとヨーロッパに留学したのちに日本で勤務し、その後カリフォルニアでビジネスの学位を取得してから、故郷であるテキサス州サンアントニオに戻った。
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