NY市場を受けての東京市場は過剰反応
先週末のニューヨーク株式相場は、ダウ平均が665ドル75セントも急激に下げた。
600ドルを超える下げ幅は、10年前の2008年12月以来だ。
しかしながら10年前というのはダウ平均は8,000ドル台だった。
これはリーマンショックの直後で、市場が乱高下していた時に記録した下げ幅で、下落率は8%。
それに対して今は26,000ドル台の史上最高値だ。ダウ平均600ドル下げても、率にすれば2.6%安にとどまる。通常起こりうる下げの幅だ。
思い返せば、日経平均も今年の年始に700円以上上げて始まった。
株価の変動としては、そんなに大きく驚くものではない。
にも関わらず、5日の日経平均は592円安で終えている。
これは過剰反応だ
円高はすでに修正 日本株に売り材料はない
何故なら既に日経平均は、ニューヨーク株に先行して、24,000円台をつけた高値から1,000円以上下げてきた。下げてきた要因は円高を嫌ったから。
その円高自身はもう修正されている。
ひとつは、先週金曜に日銀が指値オペを実施して、金利上昇に対して抑制するというスタンスを強烈に打ち出したこと。
もうひとつは、アメリカの雇用統計が良くて、それを受けてアメリカで金利が上昇した。
それを受け、為替市場では今110円台まで円安に修正されている。
であれば、もうそんなに日本株に売り材料はない。
円高だと言って売ってきて、円安に戻ってきているのにアメリカ株価が下がったからといって売られるのであれば、これは悪いところ悪いところをとって売ってきており、行き過ぎだ。
賃金上昇で金利アップ それで株価が下がるのは悪いこと?
そもそもアメリカ株が崩れた原因であるこの金利上昇は、雇用統計で賃金が予想以上に上昇したことを受けて金利が急騰して、株価を下げた。
ではそれは悪いことなのか。
ずっと労働市場の改善が続き、失業率が低下する中でも賃金が上がらないと頭を悩ましてきた中で、ようやく賃金上昇の兆しが出てきたことであればアメリカ経済にとってグッド・ニュースではないか。それに対するマーケットの反応は過剰すぎる。
いずれ、この下げも早晩落ち着きを取り戻すのではないかと考える。
さはさりながら、
今はパニック売り、狼狽売り的な動きにあるマーケットに何を言っても聞く耳を持たないだろうが、今晩のニューヨーク株が下げ止まるというのを見て、明日以降値を固めていく、あるいは値を戻していくという展開に期待する。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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