先週(2/13〜2/16)の東京為替市場で円は大幅高で2週連続高となり、東京インターバンク間の17時のドル円レートは前週末比3円14銭の円高の106円02銭で終えた。
NY株が米長期債利回りの急騰とVIXショックで史上最大の下げ幅を記録したのに対して為替の動きはレンジ内での限定的な動きだったが、先週17年来のレンジの下限である107円ゾーンを割れると一気に円高が加速した。
ドル円がレンジを下抜けるきっかけとなったのは金利の一段の上昇。14日発表の米1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.1%増とコンセンサスの1.8%増を上回り、15日発表の米1月の卸売物価指数(PPI)は前年同月比で2.8%増とコンセンサスの3.2%は下回ったものの、インフレ傾向が確認された。インフレ懸念から米長期債利回りの上昇し、15日には一時2.94%と14年1月以来4年ぶりの水準に達した。金利の急騰を嫌気してドル円は16日の東京市場で16年11月以来1年3カ月ぶりとなる105円55銭をつけた。
麻生財務相が円高容認ともとれる発言をしたため、日銀総裁の人事の最中で日銀は動きにくいとみたヘッジファンドの円高に対する仕掛けもあった模様だ。
もっとも、VIX指数の急騰は落ち着き、米国株は6連騰で半値戻しを達成し2万5000ドル台を回復した。ただ米長期債利回りは16日にも2.87%と高止まりしている。今週のFOMC議事録で、FRBメンバーの景況感、インフレに対する認識次第では、債券、為替の動きは波乱の展開が予想される。
もっとも、日米共に株価は好調な企業業績に支えられ割安感も台頭してきた。米国株は落ち着き始めており、金利と為替の動きが落ち着けば日米金利差拡大から円安が見込めるため、金利上昇と株のリバウンドの綱引きで方向感を見極めたい週になるだろう。
先週(2/13〜2/16)の振り返り
13日の東京為替市場で円は大幅続伸、東京時間17時のドル円レートは前日比1円40銭円高の107円76銭だった。朝高だった日経平均の下落に転じ、米債の夜間取引で金利が低下すると円高が進んだ。108円を割り込むとロスカットがトリガーされ一時107円67銭と17年9月以来の水準となった。
14日の東京為替市場で円は3日続伸、17時時のドル円レートは前日比35銭円高の107円41銭だった。米株がリバウンドするなか、日本株は13日も14日も朝高でその後プラスを保持できない展開から、有事の円高が進んだ。17年9月8日の107円32銭を抜き一時106円84銭と16年11月以来の円高となった。米消費者物価指数(CPI)でインフレ傾向が確認され、金利がさらに上昇するとの懸念が背景にあった。
15日の東京為替市場で円は大幅4日続伸、17時のドル円レートは前日比1円04銭円高の106円37銭だった。注目の米CPIは前年同月比2.1%上昇とコンセンサス予想を上回った。発表後の海外市場では、米長期債利回りが上昇、ドルが全面安となり、ドル円は一時106円73銭を付けた。東京市場でも円高はさらに波及し、一時106円18銭をつけた。麻生財務相が「特別に介入が必要なほどの水準ではない」との発言したと報じられると円高容認と捉えられたことで円高が加速した。
16日の東京為替市場で円は5日続伸、17時のドル円レートは前日比35銭円高の106円02銭だった。13時過ぎに106円を割るとロスカットがトリガーされ、16年11月のトランプショック以来の円高で一時105円55銭をつけた。さすがに円高スピードが速いため、菅官房長官や浅川財務官が円高牽制と思われる発言が伝わりドルは週末と米国の3連休を控え利益確定で反転、106円台で引けた。
先週の海外市場を振り返る
16日のNY為替市場では、円が5日ぶりに反落した、前日比15銭円安の106円35銭だった。東京時間では105円55銭まであって17時のレートが106円02銭。東京の引け比では33銭の円安だった。日本の高官の円高牽制発言で、ドル円も連休を控えドルショートの利益確定売りが先行した。
16日の米国株は小幅ながら6連騰。19ドル高の2万5219ドルで引けた。一時232ドル高まで上げる局面もあり、トランプ大統領とロシアゲート疑惑でロシアの個人と企業を起訴したとの発表でマイナス51ドル安の場面もあり、まだボラティリティは高いが、19日がプレジデントデイの休日で3連休となるため一旦利益確定の売りが入り小幅高で商いを終えた。週間では1028ドル(4.3%)の上昇で、週間としては過去最高の上げとなった。
15日に2.94%まで上昇した米長期債利回りも落ち着き、2.87%で引けている。VIX指数は19.46と平常時の20を3日連続で下回った。日経平均の夜間取引は2万1880円と円が反転したことを好感して上昇、16日の大阪先物の引け比140円高だった。
今週(2/19〜23)の為替展望
今週のドル円の予想レンジは104円50銭から107円50銭のレンジを想定している。今週も焦点はファンダメンタルズよりも、米債と米株次第だろう。米国株が半値戻しで2万5000ドルを回復する一方で、長期債利回りは高止まりしている。
インフレ懸念に加え、税制改革とインフラ投資増で米財政支出拡大による債券増発懸念が根底にある。金利上昇のスピードが速いのには、欧州と日本のテーパリング懸念もあるのだろう。
ドル円は長期のボックスを下離れた。次の節目はトランプショックの安値102円89銭までほとんどない。FOMC議事録で利上げに対してタカ派の見方があれば104円台の円高になることもありえる。発言をみると、日銀、政府高官が意識しているレベルは105円の可能性もある。市場はレートチェックを入れている段階だろう。米利上げペースが緩やかになるストーリーが浮上すれば円は107円台に戻す可能性もあり、ポジションを傾けにくいところだ。
今週のイベントは、日本では21日に始まる自動車大手春闘第一回労使交渉がインフレ傾向をみるために重要。22日には20年国債入札がある。海外では21日のFOMC議事録要旨が最大の注目材料。FRBの景気、金利見通しに注目が集まる。19日の米国がプレジデントデイの休日、ユーロ圏財務相会合@ブリュッセル、21日には米5年債入札、22日にはECB理事会議事要旨の米7年債入札がある。
今週の経済指標は、日本では19日に貿易統計、20日に粗鋼生産、コンビニ売上、21日にマンション市場動向、スーパー売上高、百貨店売上、訪日外国人数、23日に全国消費者物価指数、企業向けサービス価格指数がある。海外では21日にユーロ圏製造業PMI、ユーロ圏消費者信頼感指数22日に新規失業保険申請件数、米中古住宅販売件数、23日に米1月CB景気先行指数、独Ifo景況感指数などが注目される。 (ZUU online 編集部)