・昨日、世界の金融当局関係者による「国際金融シンポジウム」が開催された。仮想通貨について、3月に開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議で「議論する必要がある」と明言された。

・来月のG20で議論されれば、仮想通貨についての初の国際議論となるため、動向が大いに注目される。昨日のシンポジウムでは、G20での論点として、「課税、セキュリティ問題」「マネーロンダリング対策」「中央銀行の関わり方」「金融政策への影響」等が例示された。

・昨日の討議では、総じて厳しいトーンも示された。しかし、浅川財務官は、仮想通貨等のフィンテックには「リスクだけでなく機会もある」とし、「日本が議長国となる来年のG20でも議論が続くだろう」とコメント。少なくとも来月のG20で厳格な国際統一規制が決定する可能性は低そうだ。

「国際金融シンポジウム」で各地域の金融当局関係者が討論

2月22日、都内で、国際通貨研究所による「国際金融シンポジウム」が開催された。登壇者は、財務省の浅川財務官、クォールズ米FRB理事、レグリング欧州安定メカニズム総裁、シェン中国銀行業監督管理委員会 首席顧問、ギニグゥンドゥ・フィリピン中央銀行副総裁という、日米欧亜各地域の金融当局関係者である。

ディスカッションのテーマは、世界の金利動向や、生産性の向上、金融規制のあり方、フィンテックの見通し、今後10年間のリスク領域等多岐に亘った。

なかでも興味深かったのは、一か月先に迫ったG20財務大臣・中央銀行総裁会議での、仮想通貨に関する議論の方向性についてだった。登壇者からは、「今回のG20で必ず議論しなければならない」と明言された。

トランプ大統領のインフラ投資=米国の債務の一層の膨張で金利は上昇へ

インフラ投資は10年間合計で1.5兆ドル以上と発表されている。調達方法は未定だが、民間と政府セクター双方による、債務の調達が大半とみられる。

しかし、米国の総債務(民間+政府)は昨年既に、史上最高の47兆ドル(5,200兆円。ちなみに日本は2,011兆円)に達している(図表3)。GDPに対する債務の比率も戦後最高である。ここ数年はGDPの伸びで上昇は抑えられていたが、インフラ投資と歳出拡大で、それぞれ民間と政府の債務の双方が拡大するだろう。これは、明らかに米国金利の上昇要因となる。

仮想通貨は「仮想資産」。規制へのトーンには温度差

昨日の討議では、仮想通貨について、冒頭で、「"crypto-currency(暗号通貨)"ではなく"crypto-asset(暗号資産)"と呼ぶべきだ」と言い換えらた。改めて、「通貨ではない」ということが強調されたうえで、今後の規制のあり方が討議された。

まず、仮想通貨は金融資産として膨張していることから(参考図表1)、何らかの規制を検討すべきとの見方では、参加者全員が一致した。

グローバル・マクロ,仮想通貨,国際規制議論
(画像=マネックス証券)

一方、規制のあり方についてのトーンは登壇者によってまちまちだった。特に中国のシェン氏と日本の浅川氏の発言にはニュアンスの違いが目立った。

中国銀行業監督管理委員会首席顧問のシェン氏は、「"通貨ではないから、自分たちの規制の範囲外だ"と見過ごすのではなく、早期に禁止すべきだ」との厳しい見方を示した。

これに対して浅川氏は、3月に開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議での焦点として、「課税、セキュリティ問題」、「マネーロンダリング対策」、「中央銀行の関わり方」、「金融政策への影響」などを例示した。すなわち、直ちに禁止するということではなく、問題点を修正していきつつ、金融システムへの影響を検証するというスタンスを示した。

更に、同氏は仮想通貨を含むフィンテック全体について、「大きな変革につながる可能性もあり、リスク面だけをとらえるのではなく、成長への機会としても捉えるべき」と、バランスのとれたコメントを付した。

最終的な方向性決定には時間も。来年日本でのG20でも議論

浅川氏は、仮想通貨については「来年のG20でも議論が続くだろう」と発言した。

来年のG20は、初めて日本で開催される予定だ(6月末~7月初旬、大阪が会場となる見込み)。議長国は、議題等を決める際のイニシャティブを取りやすいことから、現段階では、仮想通貨が来年のG20の議題に入る可能性が高そうだ。これらの点から、少なくとも来月のG20で厳格な国際統一規制が決定する可能性は低いと考えられる。

大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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