ドル円予想レンジ104.95-107.80
「Powell hints at faster pace of rate rises (パウエルはより速いペースでレート上昇を示唆)」-。これは2/27の英経済紙一面だ。2/3に就任したパウエルFRB議長は同日の下院金融委員会で初の議会証言に立つと、景気の強さを鑑みて「更なる利上げが最善」との考えを示し、段階的利上げ実施の方針を表明した。市場はFRBが利上げペースを速める、と読み、米利上げ確率を示すシカゴFEDウオッチでは、3/21のFOMCにおける利上げ確率は87%超(2/28時点)へ上昇。それまでのメインシナリオは「年3回利上げ」であったが、「年4回」との見方が萌芽している。
ドル高抑制は「保護主義」「日銀オペ減額」「期末円転」
任期切れ目前のイエレン議長は2/2に米公共放送(PBS)インタビューに応じ、FRBは緩やかな利上げの軌道を維持するとの見通しを示した。つまり前職・現職のFRB議長は揃って足元における米経済の力強さに自信を深めている。しかし、一本調子にドル高円安が進行しないのは何故か。筆者はその理由を3点推考している。
ひとつはトランプ政権が保護主義・通商問題を追及するなかで対日貿易赤字圧縮に動く可能性だ。以前も指摘したが、1/24に財務省は2017年貿易統計速報において、対米貿易収支は7兆356億円で、2年ぶりの黒字幅拡大と公表した。中間選挙を控えるトランプ政権側からすれば、一番手っ取り早いのが“同盟国日本”にドル高円安の抑制を示唆することであろう。
2つ目は“日本国債買い入れの減額”発表のたびに金融正常化観測が囃し立てられていることである。勿論、黒田日銀総裁は先々の政策変更を示さないと強調しており、3/1に片岡審議員などからも“一段の追加緩和が必要”との考えが示されている。しかし、過去には市場の意表を突いてきた「黒田バズーカ」が逆に仇となり、施策急変も有り得るのではないか、とした疑心暗鬼を燻っている可能性がある。
3つ目は本邦会計年度期末も近接する中での3月決算期末前特有の円転需給である。無論、急ピッチで円急騰となれば財務省と金融庁、日銀が緊急会合などをもって市場の動きを牽制するだろう。しかし、需給を主体とした緩やかなドル安円高の動きなら当局も甘受せざるを得ない、と読んでいる。
3/5週のドル円
上値焦点は2/28高値107.53、2/27高値107.69。越えれば2/22高値107.78、2/21、2/14高値107.90-92が関門。下値焦点は106円台維持、割れたら2/16安値105.54。過度な変動に対しては「リスク・パリティ・ファンド」の動きも警戒され最大リスクは米大統領選翌日2016/11/10安値104.945を推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト