米関税適用23日から 不透明感逆手に
米国の鉄鋼とアルミニウムに対する関税適用が23日に始まる。輸入制限品目の追加や中国などの報復関税を通じて世界経済が低迷するリスクを前に、株式市場では物色を手控えるムードが強い。外需企業の事業環境に不透明感が増す中、20日の日経平均株価は一時前日比256円安に沈んだ。一方、こうした状況を逆手に取った銘柄選別も考えられる。「貿易戦争」に発展した場合でも優位性を持つ中型株3銘柄をピックアップした。
東京綱―内需で稼ぎ米中に工場、14年高値の奪回焦点
鋼線大手の東京製綱 <5981> は、海外売上高比率が前3月期ベースで17%と内需型。中国ではエレベーター向けロープを展開するほか、需要が好調な太陽電池基板のシリコン切断用コアワイヤの現地生産をこのほど再開した。また、土砂崩れの防護網といった防災製品は中東市場に注力する。
一方、米国では、電線や橋りょうなどのインフラを支える炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)の拡販を狙う。現地に工場もあり、生産体制を拡充していく方向。トランプ米大統領の掲げる大規模インフラ投資の計画が追い風となりそうだ。収益の大半を占める内需と、海外は消費国での生産拠点を強みに保護貿易下でも着実に業績を積み上げる余力がある。
株価は全般の軟調地合いにも負けずに上昇基調を強め、およそ3年ぶりの高値水準を足元で回復している(20日終値は2361円)。2014年12月の高値2560円(株式併合考慮、以下同じ)を奪回してくれば新局面入りが明確になり、11年6月の3470円へ向けた戻り相場が本格化しそうだ。
アイダ―世界5極生産に強み、EV・軽量化需要とらえる
プレス機大手アイダエンジニアリング <6118>は、日本、米国、欧州、中国、マレーシアに主力工場を持つ「世界5極体制」。それぞれ市場にとっての最適地生産・調達により、環境変化に対応できる強みを持つ。
自動車メーカー向けが主力のため、顧客が保護貿易のリスクにさらされる可能性はある。一方、軽量化ニーズの高まりにより、素材を鉄からアルミニウムに切り替える動きが強く、アルミ加工に適したアイダのサーボプレスの潜在需要は大きい。車体を軽くする必要のあるEV(電気自動車)時代の幕開けへ向け、重要な企業になりつつある。
株価は2月に高値の1586円を付け一服し、1400円を挟むもみ合いに移行した。日柄調整を早晩終え、上昇トレンドに復帰するシナリオが有望。ゴールドマン・サックス証券では直近、1600円の目標株価を打ち出している。
船井電機―メキシコ工場稼働、信用需給も改善
AV機器中堅の船井電機 <6839> は、売上高に占める米州比率が8割に迫る。このため、グローバル化の後退は事業上の大きなリスクになりかねない。ただ、4月には、トランプ米大統領が関税の適用除外としたメキシコで液晶テレビの工場が本格稼働する。
北米向けの液晶テレビは従来中国から出荷していたが、需要の強い65インチ超の大型モデルについて、生産をメキシコに切り替える。当初はNAFTA(北米自由貿易協定)見直しの懸念から先行き不透明感のあったメキシコ工場だが、トランプ大統領が柔軟な姿勢を示したことで、強みを発揮する。
メキシコ工場での生産強化に伴い、65インチ超の大型テレビの売上倍増が見込まれる。株価は昨夏以降下落トレンドを形成しているものの、信用需給の改善とともに底入れ期待も強まっている。直近では25日移動平均線を奪回し、戻りへ向けた地合いが整いつつある。(3月22日株式新聞掲載記事)
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