投資家の世代別調査から、ミレニアル世代は株価の暴落局面に立つと、怖気づくのではなく興奮する傾向が強いことが分かった。「2018年2月の株価暴落の際、興奮した」と答えた割合はミレニアル世代(18〜37歳)が19%と最も高い。X世代(38〜51歳)の2倍、ベビーブーマー世代(52〜70歳)のほぼ5倍だ。

またミレニアル世代は自らを「長期投資家」と見なす反面、ベビーブーマー世代の2倍相当の年間リターンを期待していることも別の調査から分かっている。

しかし市場の変動や仮想通貨の暴落など投資で大損をして、「もう懲りた」という若者もいるようだ。

4分の1が「株価暴落の際、買い足した」と回答

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(画像=Rido/Shutterstock.com)

ミレニアル世代は投資に消極的な世代と認識されているが、果たして本当だろうか。米金融情報サイト「Bankrate.com」が2018年2〜3月にかけて実施した調査では、調査に協力した2287人中1063人が投資用口座を所有していると回答。X世代(46%)とベビーブーマー世代(54%)の半分が定期的に投資しているのに対し、ミレニアル世代で投資をしているのは30%に留まった。

しかし2月の株価暴落でX世代やベビーブーマー世代はホールドのポジションに徹したが、ミレニアル世代の4分の1以上が「株を買い足した」という。

「Bankrate.com」のアナリスト、テイラー・テッパー氏は、投資家をパニックに陥れるはずの株価の急落が「若い世代にとっては資産を増やすチャンスになる」と分析している。若い世代は住宅購入資金や老後貯蓄など、長期的な見解から投資をしている場合が多い。実際、アメリカン・ファンズの調査では。1203人のミレニアル世代のうち44%が自らを「長期投資家だ」とみなしている (ナスダック2017年5月26日付記事 )。市場の急落で株価が落ちた時に「いい買い物」が出来れば、それに越したことはない(ブルームバーグ2018年3月19日付記事) 。

つまりミレニアル世代の投資家は他の世代に比べると少数派ではあるものの、はるかに大胆な投資戦略を好むということだろうか。

ミレニアル世代は年間14%のリターンを期待

ミレニアル世代と他の世代では、そもそも投資の手法や価値観からして異なる。近年需要が高まっているロボアドが、ミレニアル世代をターゲットにしているのは周知の事実だ。AMGアセット・マネージメント・カンパニーが2017年に実施した調査では、回答者1000人のうち71%のミレニアル世代が「ロボアドに興味がある」、68%が「すでに利用している、利用する予定」と回答している。

投資の魅力は値上がり益や配当よりも、「手軽さ」と考えるミレニアル世代は少なくない。地道に投資の知識を積んだり高額な報酬や手数料をファンドマネージャーに支払わなくても、ロボアドならば小遣い程度の金額を入金するだけで、自分に合った投資をしてくれる。

しかしその一方で、リターンへの期待は世代中最も大きいようだ。ベビーブーマー世代が期待する年間リターンは7.7%だが、ミレニアル世代は13.7%を求めている。   

ポートフォリオのほぼ半分がIT株?

ミレニアル世代はどのような企業に投資しているのだろう。ナスダックが 2017年5月、自社のモバイル投資アプリ「スマート・ポートフォリオ」から収集した12万件のデータによると、Apple(22.3%)、Facebook(14.0%)、Amazon(11.7%)、Microsoft(10.0%)、Tesla(7.7%)が最も人気の銘柄だ。

平均的なポートフォリオはほぼ半分をIT(44.0%)が占めており、サービス(22.02%)、消費財(15.95%)、金融(11.99%)、生産財(8.03%)。他の世代の投資家との差がはっきりと感じとれる。

ミレニアル世代のユーザーが多い投資アプリ「Robinhood」の人気銘柄も、これらのIT株に加え、フォードやゼネラル・エレクトリックが肩を並べている。同じくモバイル投資アプリ「Stockpile」 いわく、「ミレニアル世代は自分がよく知っている、日常的にサービスや商品を利用している企業の株を選ぶ傾向が強い」(MarketsInsider2018年1月2日付記事)。 そう考えるとこの世代のIT株人気は自然な流れと言える。

投資で損をしたミレニアル世代「当分投資には手を出さない」

こうした「ミレニアル世代流投資」が拡大する中、投資で資産を失い、「当分投資には手を出さない」という若者もいる。

ニューヨークタイムズ紙2018年2月7日付記事によると、アリゾナ州の企業で営業マネージャーを務める26歳の女性は、会社を通してIRA(個人退職口座)を開設したものの、1週間もたたないうちに価値が65%も下がったという。

ミレニアル世代にとっては、ビットコインに代表される仮想通貨の価格暴落も、投資に辟易する要因のひとつになっているようだ。

27歳の小児科助手の男性は、仮想通貨に投じていた資産の40%を失った。勤務先の休憩室で暴落をしった時の心境を、「みぞおちに一発喰らった感じ」と表現している。投資にはリスクが付きものと分かっていたが、「まさかこんなに急に、こんなに大損すると予想していなかった」という。

米大手投資企業OppenheimerFundsのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・レヴィット氏は、長期的な市場の仕組みを理解せずに投資に手を出しているミレニアル世代が多い点を指摘している。「知識が浅ければ浅いほど、変動の際間違った判断を下しやすい」。

しかし投資で痛い経験をしたにも関わらず、「退職後のための貯蓄手段として、投資は非常に重要」と主張する若者もいる。テネシー州で会計士を目指す24歳の学生は生物薬剤学株とIT株の急落で損をしたが、「損をしても取り戻し、損した以上の金額を稼ぎ出す時間は十分にある」と前向きだ。

「ミレニアル世代の投資」とひとくくりにすることは出来ないが、価値観や戦略を含めた何かが他の世代と決定的に異なるのは間違いなさそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)