ネットショッピングを中心としたeコマースの存在感が市場で高まり、既存店舗の経営が立ち行かなくなるなか、小売業で唯一の勝ち組とされたコンビニ業界にも変化の兆候が現れつつある。
コンビニ大手7社の既存店における来店客数は24ヵ月連続で前年同月比を下回る。苦戦が続いているようにもみえるコンビニ業界の現状を見ていこう。
売上高のプラス成長の裏で、減少が止まらない既存店の来客数
日本フランチャイズチェーン協会の調査によると、コンビニ大手7社の2018年2月の売上高は、1年以上営業する既存店を含む全店ベースで、前年同月比2.4%増と60ヵ月連続で前年の同月を上回った。新規出店攻勢で、売上高は5年間、前年同月比を上回る好調さが続き、コンビニ業界は一見安泰のようにもみえる。しかし、1年以上営業する既存店の来店客数に着目すると、18年2月は前年同月比1.4%減となり、前年同月比割れの状態が2年間も続いているのが現状だ。
業界再編で淘汰が進むコンビニ業界だが、こうした苦境は御三家も例外ではない。最大手のセブン‐イレブン・ジャパンとローソン <2651> は、8ヵ月連続、ファミリーマートは11ヵ月連続で既存店の来店客数が前年割れとなった。このうち、セブン‐イレブンの既存店における売上高は、来店客数が減少したものの、客単価のアップにより前年同月比でプラス成長を維持している。一方、ファミリーマートとローソンは、客単価はアップしているが、来店客数の落ち込みを吸収できるレベルには至らず、売上高も前年割れの状態に陥っている。
業界4位のミニストップは赤字転落
さらにコンビニ業界を震撼させたのは、売上高で御三家に続く業界4位のミニストップ <9946> の業績下方修正で、赤字に転落することが明らかになった。同社は、2018年2月期決算で、従来は営業利益17億、純利益1億5000万円と見込んでいたが、それぞれ1億円の営業損益、11億5000万円の最終赤字に陥る見通しだ。
ミニストップは、店舗でのファストフードを中心とした販売施策を強化したものの、17年8月の天候不順や10月の台風の影響に加え、他社のライバル店との競争激化により、当初に計画した売上高を下回る結果となったことが響いた。また、韓国やベトナム、中国で展開する海外事業でも11億円の営業損失を計上するなど、足を引っ張る形となってしまった。
市場規模拡大からパイの奪い合いへ
全国津々浦々に店舗が出店し、シャッター通りとなったかつての商店街に代わる買い物の場として、コンビニが果たす役割は大きい。実際に、日本フランチャイズチェーン協会の調査では、2018年2月の店舗数は5万5395店舗と、前年同月比で1.5%増加した。
積極的な出店攻勢によって、調達コストの削減など収益向上への改善が期待できる一方で、隣接するコンビニ既存店にとっては、新しい店舗のオープンで顧客の奪い合いが発生。その結果として、既存店の来店客数の減少に歯止めがかからない状況だ。
これまでコンビニは、スイーツや本格的なコーヒー、から揚げなどの惣菜でヒット商品を飛ばし、来店客数を伸ばしてきた。いまなお弁当や総菜などの日配食品は、売り上げの増加傾向を維持している。
一方で落ち込みが目立つのが書籍や医薬品、化粧品などの非食品の売り上げだ。このカテゴリーの商品は、ドラッグストアがコンビニより安い価格で商品を販売したり、ネットショッピングが幅広い商品ラインナップを展開したりすることで、コンビニから顧客を引き寄せている。さらに、コンビニが強さを発揮してきた食品でも、スーパーマーケットがレストランと融合したグローサラント型店舗を相次いでオープン。かつてコンビニに顧客を奪われたスーパーが逆襲を仕掛けている。
これまで拡大路線を歩んできたコンビニ業界だが、異業種との激しい争いや、コンビニ店舗の飽和状態など、その成長モデルに転換期が訪れているともいえるだろう。現行のビジネスモデルのままで店舗拡大に突き進めば、既存店舗の経営は苦しくなるばかりだ。多くの店舗がフランチャイズのオーナーが営業する状況を鑑みると、既存店の来店客数が落ち込み、売り上げが伸び悩めば、新規のフランチャイズオーナーの確保にも足かせとなり、店舗拡大路線の修正を迫られる可能性もある。
既存店の運営と新規出店のペースとのバランスを見直して、パイの奪い合いを回避する戦略を描くのか。あるいは、異業種との激しい競争に打ち勝つようなビジネスモデルを確立し、これまでのようにヒット商品を世に送り出すことでコンビニの付加価値を高めたような市場規模の拡大路線を目指すのか。
既存店の来店客数の落ち込みに頭を悩ませる苦境は、コンビニ業界の将来を左右する重要な局面に差し掛かっているサインだろう。(ZUU online 編集部)