組織全体の問題を解決するべく、部署や役職を横断して召集するクロスファンクショナルチーム。このクロスファンクショナルチームを立ち上げ、メンバーで協力・調整を行いつつ、改革を実行しようとしたものの、「うまくチームが機能しない……なぜだろう?」と困っている人も多いのではないでしょうか。

ここでは、3つの視点からクロスファンクショナルチームを機能させるために何が必要なのかを解説します。

「チーミング」の行動×プロセスでチームを動かす

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(写真=mohdizuan/Shutterstock.com)

ハーバード・ビジネススクール教授エイミー・C・エドモンドソン氏が提唱する「チーミング」は、まさにクロスファンクショナルチームを作って、効果的な協働を生み出すことを意味します。エドモンドソン氏によれば、このチーミングが成功するとメンバーは次のような行動をとると言います。

  1. 率直な意見交換を行う。
  2. 目標を共有し、目標達成のために力を合わせて動く。
  3. うまくいかないかもしれないことにも挑戦する。
  4. 行動の結果を批判的に検討する。

クロスファンクショナルチームに求めるのは、さまざまな部署や役職の視点から組織全体の問題を多角的に解決することですから、これらの行動は必要不可欠とさえいえます。エドモンドソン氏はこれら4つの行動をとるチームを作るには、次の6つのプロセスを繰り返すと良いとしています。

  1. クロスファンクショナルチームを作って、効果的な協働を生み出す必要性を認識する。
  2. メンバー間のコミュニケーションを図る。
  3. 仕事の手順や、相手に任せるべきことを相互に調整する。
  4. 互いに支え合う「相互依存」の行動をとる
  5. 行動の結果を批判的に検討する。
  6. クロスファンクショナルチームを作って、効果的な協働を生み出すための考え方が身につく。

全く違う立場、分野の人間が集まるクロスファンクショナルチームを最大限に機能させるためには、メンバー同士が有機的に繋がっている必要があります。エドモンドソン氏のチーミングは、そのための重要なヒントになってくれるでしょう。

用語リンク集:チーミング

「組織変革のビジョン」-を示し、多くの人を変える

クロスファンクショナルチームが機能するためには、チーム内の連携だけでなく、クロスファンクショナルチーム以外の人間を巻き込むことが必要不可欠です。クロスファンクショナルチームの目的は組織全体の問題の解決ですが、クロスファンクショナルチームがどんなに素晴らしいアイディアを提供しても、それがクロスファンクショナルチーム以外の人間によって実践されなければ組織全体の問題が解決するはずがないからです。

クロスファンクショナルチーム以外の人間を巻き込むための考え方のひとつが「組織変革のビジョン」です。これは神戸大学大学院経営学研究科の金井寿宏教授が提唱する「組織のなかにおける大半の個人が変わらない限り、組織変革はない」という立場にたった組織変革理論です。組織変革には危機感などのネガティブな心理的エネルギーだけでなく、「○○したい」「○○になりたい」などのポジティブな心理的エネルギーが重要だと金井教授は指摘します。

そこで大切になるのが「あるべき姿=組織変革のビジョン」です。そしてこの組織変革のビジョンが機能し、組織全体が動き出すためには、ビジョン達成までの道筋がシナリオやストーリーとして社内で語られる必要があるとされます。そうして初めて組織のなかにおける大半の個人が「目の前の仕事がビジョンにつながっている」ということを認識でき、クロスファンクショナルチームが提示する組織変革のビジョンが機能しはじめるのです。

用語リンク集:組織変革のビジョン

責任と目標の明確化がカギを握る

「識学」というマネジメント理論によれば、クロスファンクショナルチームにまず必要なのは責任と目標の明確化だとされています。

クロスファンクショナルチームでは、得てして協力や調整がキーワードになりがちですが、「協力しましょう」「調整しましょう」がスローガンになると、「他人がやったことだから」「他人に合わせたことだから」という発想になり、責任が曖昧になる可能性が生まれます。

そうなると全社をかけたクロスファンクショナルチームのプロジェクトでも、責任を取る人が誰もいないという状況になってしまいます。もしくは責任をとらないのに声だけ大きい人が権限を持つ危険性もあります。したがって、チームとして責任者を一人決め、実働者との役割、ルールを明確にする必要があります。

また、クロスファンクショナルチームのプロジェクトは「新しい試みだから先行きが見えない。実際に動きながら目標を明確にしていこう」という方針でスタートすることがありますが、これには注意が必要です。“動きながら目標を明確に”が“○日時点の結果を基に、△月□日時点での目標を決める”ということであれば良いですが、得てして、いつまでたっても目標は決まりません。つまり、最初の方針の時点で、プロジェクトの失敗がほぼ決まっているわけです。なぜなら、目標を設定しなければ、結果を評価するための基準が存在しないからです。

基準がなければ改善の方向性も定まらず、チームは手探りのまま活動していくことになります。これを防ぐためには、たとえ先行きがはっきりとは見えなくても明確な目標を設定する必要があります。確かに初めは「この目標設定は間違いだった」という反省もあり得るでしょうが、それも目標を設定したからこそできる反省です。結果の評価をしながら目標の再設定を繰り返し、徐々に目標設定の精度を上げていけばいいのです。(提供:マネジメントオンライン

参考リンク:『伸びる会社は「これ」をやらない! 』