都区内の新築マンション価格は高騰を続け、7000万円を超え、価格が上がりすぎた影響からか、販売戸数は2年連続で4万件を下回った。勢いが落ち気味のマンション市場を支えるのが「パワーカップル」と呼ばれる超高年収共働き世帯だ。

共働世帯きでもパワーカップルと呼べるような世帯は一握りではあるが、なによりも「時間」「利便性」を重視する彼らは、出遅れ気味の城東・城北エリアにも物色の手を伸ばしているようだ。

パワーカップル,高級マンション
(画像=oneinchpunch/ Shutterstock.com)

パワーカップルとは 夫並みに稼ぐ妻

一般的には、「夫が高年収の世帯ほど妻は職に就かない」とされる。この傾向は「ダグラス・有沢の法則」と名付けられ、現代の日本社会にも充分当てはまる。それでも共働き世帯の増加もあって、そんな法則も徐々にではあるが崩れつつある。夫の年収が高くても妻の就業率は向上しつつあり、一部はフルタイムの仕事を選ぶ。

こうした共働き夫婦は、夫と妻の年収に相関関係が見られる。高い年収を稼ぐ妻の夫は、やはり高年収である傾向が強い。その結果、世帯年収の格差はますます拡がることになる。夫婦二人でバリバリ稼ぐ「パワーカップル」を耳にし始めたのは2013年ごろ、高額マンションの購買層として注目を集めた。

世に出回る「パワーカップル」の定義は識者によって異なるが、夫婦ともに年収700万円、つまり世帯年収1400万円の家庭は25万世帯で、共働き世帯の1.8%を占める。パワーカップルは少しずつ増えている。

全室1億円以上のマンションが売れる

旧江戸城の外堀跡に位置し千鳥ヶ淵にも近い千代田区番町は、都心高級住宅地の代表格だ。エリア内には名門校を始めとする教育施設も充実している。かつての旗本屋敷跡には、イギリス大使館を始めとする各国大使館が点在し、国際的な雰囲気も醸し出す。

この地で東急不動産が手掛ける、来年2月完成予定の「ブランズ六番町」が、強気の価格設定で話題になっている。最低価格でも1億5700万円、最高価格は5億円近くに達する。

「希少性の高い番町ならこの価格でも安い」と営業責任者は強気の姿勢を崩さない。それでも売れ行きは上々だ。東急不動産は、この他にも超高級マンションをラインナップに加える予定だ。

マンション市場が伸びない中で、同社が期待しているのがパワーカップルだ。パワーカップルは、それぞれが大きな与信を持っているため、圧倒的な資金力を誇る。住宅ローンの税制優遇も、夫婦それぞれで享受する。一人でローンを組めば5000万円のところ、ペアローンを組めば1億円まで税金が控除されるそうだ。

高収入を得る代わりに、多くのパワーカップルは双方多忙だ。そのため、購入の際には、立地(通勤時間)を重視する。当然、購入マンションは高額になるが、エグゼクティブだからこそ、お金で時間を買うことのメリットを実感しているようだ。

アンダークラスは城東・城北を狙う

パワーカップルが増えたといっても、高級マンションを購入できるのは、共働き世帯の一握りだ。一般の世帯にとって、世田谷・目黒・渋谷・港といった東京西南部の人気エリアは手が出ない。

最近注目を集めるのが、今まではあまり人気のなかった荒川・北・板橋といった城西・城北エリアだ。人気エリアより数割安い価格で、同じ品質・間取りの物件を購入できる。例えば住友不動産が手掛けた「シティテラス西日暮里ステーションコート」は、山手線沿線でありながら、3LDKで価格を6000万円強に抑えたこともあり、販売は好調だ。

マンションだけに限らず、収入の伸びが頭打ちになる中で消費活動は依然としてパッとしない。打開策として経済界の中には、パワーカップルに期待する向きもある。こうした消費力旺盛な層を拡充していくには、子育て・仕事の両立支援や持続可能な社会保障制度確立など、安心して稼いで使えるための環境整備が欠かせないだろう。(ZUU online 編集部)