ドル円予想レンジ105.70-108.80

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=Alexandros Michailidis / Shutterstock.com)

「明けても暮れてもこういうことに終始するというのは国民の皆さんもうんざりしているだろうと思いますが、我々も実際はうんざりしております。ですから、こういうことは早く明確にしていく、解決していくことが大事だと思っております。」-。これは4/10の自民党・二階俊博幹事長による発言だ。国会審議として繰り広げられる文章改竄・日報問題に対するマーケットの声を代弁した格好となる。

安倍訪米で課題が解決し円安助長の可能性はあるか

国内において難問山積の安倍首相は4/17-20に訪米し、トランプ米大統領と首脳会談を行う。昨年2月、9月、そして11月はトランプ大統領が訪日し、緊密な関係を内外に示した。当時は北朝鮮の核・ミサイル開発に関する問題・日本人拉致問題解決に向けた協議が軸となっていた。しかし、今回はこれに米朝会談や日本からの鉄鋼、アルミニウムの輸入制限も議題に加わり、自由貿易の重要性について突っ込んだ会談も想定されている。永田町関係者に言わせれば、“内憂外患”状態とされている。

一方トランプ政権側は、①11月の中間選挙、②2017年貿易統計(通関ベース)でのモノの貿易赤字7962億ドル(約85兆円)、③“the likelihoodofafiscalcrisisintheUnitedStateswouldincrease(米国における財政危機の可能性が高まる見通し)”と米議会予算局(CBO)が4/9に示した2020年度以降、米財政赤字が1兆ドルを超えるという懐事情を抱えている。秋に中間選挙を控えたトランプ大統領としては、日本に対し通商問題で安易に妥協しない姿勢を強めることが想定されるが、通商分野を巡る溝は日米同盟・安全保障の関係を揺るがしかねない。

そうなれば、むしろ安倍首相の方から米貿易赤字の具体的な削減案や、日米FTA(=自由貿易協定)議論を持ち出す可能性も0%では無い状況とも言えようか。一部報道では、3/22にトランプ大統領が「安倍首相は何時もほほ笑み、長い間、米国を出し抜いた」等、対日貿易赤字への不満を露わにしたとされている。しかし、貿易不均衡是正の助けを求めるメッセージとして、“親愛なる偉大な私の友人でもある安倍首相”へ互恵的な関係を示したと解釈する見方もあるようだ。

突っぱねるにしろ「代償」の判断が求められる安倍首相だが、少なくとも「北朝鮮」「通商」という2つの課題、そして「文章・日報」問題が速やかに解決されるとは見込み難く、円安助長を直ちに期待するには厳しい週と考えている。

4/16週のドル円

日足雲下限(106.824-107.025-20近傍)の攻防も念頭に上値焦点は2/22高値107.78、2/21高値107.92。超えれば2/13高値108.79、2/9の戻り高値で日足の雲上限109.31。下値焦点は106.60圏維持、4/4安値105.98、4/2-3安値105.68-65、3/27-28安値圏105.32-35。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト