住民税は、都道府県や市町村に所在する企業などの法人や居住している個人に課す税金の総称で、多くの人にとって身近な税の一つと言える。しかし詳しい計算方法や滞納した場合にどうなるのかなどについては案外知られていない。

「住民税」は都道府県住民税と市町村住民税の合計額

(画像=PIXTA)

一般に、都道府県が課す税金である「道府県税」と市町村(特別区)が課す「市町村税」を合わせて「住民税」と呼ぶ。個人が支払う住民税を「個人住民税」、企業などの法人が支払う住民税を「法人住民税」と呼ぶが、一般的に住民税という言葉自体は個人住民税を指して使われることも多い。

個人の住民税は1月1日~12月31日の1年単位で計算される。通常は前年の所得額や所得控除額などをベースにして算出された住民税の税額が記載された納付書が6月に届く。この納付書は企業に所属しているサラリーマンの場合は企業に、個人事業主やフリーターなどの場合は個人宅に送付される。

民間企業に勤めているサラリーマンなどの場合は、納付書は会社に送られるためにそれ自体を目にすることは少ない。サラリーマンなどの住民税は、企業側が1月末までに市役所や区役所、町村役場に会社員それぞれの給与額などについて報告を行い、その金額などを基に金額が決定する仕組みだ。サラリーマンなどのケースでは、基本的に毎月の給与から天引きされた住民税を、企業が納付する形となる。

企業に所属していない個人事業主やフリーターの場合は、毎年2月中旬から3月中旬にそれぞれ行う確定申告の内容に基づいて住民税の納税額が決定する。納期は6月、8月、10月、1月の年4期となっており、一括で支払いを行うことも基本的には可能だ。地方自治体によっては一括で支払うと納税額が少し減額されるケースもある。

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住民税は「所得割額」と「均等割額」を合計して計算される

個人の住民税の計算は個人で行うことはないため、その計算方法については十分に知られているとは言い難い。実際には「所得割額」(「所得割」とも呼ぶ)と「均等割額」(「均等割」とも呼ぶ)を合算した金額となる。所得割額は所得額に比例して課税される税額で、均等割額は所得額に関係なく住民が均等に負担する金額である。

所得割額を算出する場合、まず前年1年間(1月1日~12月31日)までの「総所得金額等」が計算される。その金額から基礎控除(一律で33万円)や医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除などの所得控除の対象となる金額を差し引いて出された課税対象額に10%をかけた額が所得割額となる(ふるさと納税や寄附をした場合はここからその税額控除額を差し引いたものが所得割額)。この10%の内訳は、都道府県民税分が4%、市町村民税分が6%となっている。地方自治体によっては、独自の所得割額を設けているケースもある。

均等割額は既に説明したとおり、所得額などに関係なく住民が一律で同じ額となる。金額は自治体によって異なるが、市町村税額は約3000円、都道府県税額は約1000円となっていることが多い。

また2011年に発生した東日本大震災のための復興財源の確保を目的として、2014年から2023年の10年間、都道府県住民税と市町村住民税の均等割額が500円ずつ増額されている。

住民税が高い北海道夕張市と住民税が安い愛知県名古屋市

前項でも少し触れたが、これらの所得割額と均等割額は自治体によって割合や数字が変わるケースもある。

都道府県住民税と市町村住民税を合わせた所得割額と均等割額を比較してみると、例えば2007年に財政破綻した北海道夕張市の場合は均等割額が5500円、所得割額が10.5%となる。これは全国的に最も高い水準となっている。続いて高水準となる兵庫県豊岡市は均等割額が5800円で所得割額が10.1%、神奈川県横浜市は均等割額が6200円で所得割額が10.025%、岩手県仙台市などは均等割額が6200円で所得割額が10%となっている。

一方、愛知県名古屋市は均等割額が5300円で所得割額が9.7%と、全国で最も低い水準となっている。これは名古屋市で市民税の減税条例が施行されていることが主な理由だ。そのほか、北海道札幌市や埼玉県さいたま市、千葉県千葉市、新潟県新潟市なども低水準だ。

これら実際の住民税額の比較から、住民税は自治体によって異なることが分かるだろう。夕張市と名古屋市では、大きな開きがあるのだ。

生活保護受給者や低所得者などは住民税が課税されない

住民税の支払い方法や計算方法について説明してきたが、住民税が免除される人もいる。

生活保護を受給している人は年間所得金額に関わらず住民税が課税されないほか、障害を持っている人や未成年者、配偶者と離婚または死別している人(寡婦や寡夫と呼ばれる)の場合は、合計所得金額が125万円以下だと非課税となる。加えて、合計所得金額が一定金額以下の人に対しても、住民税の非課税措置がとられている。この金額は自治体によって異なる。

ところが、退職して定職に就いておらず給与収入がないにも関わらず住民税の納付書が届くケースがある。先ほど挙げた住民税が非課税となる対象の中には合計所得金額が一定金額以下の人も含まれるため、一見、住民税を払わなくてもいいように見える。

ここでポイントとなるのが、先ほど述べたように、住民税は前年1年間の課税所得で金額が決定するということだ。仮に、勤務していた企業を2018年1月に退職して月収が無くなったとした場合、前年1年間企業に勤務して給与収入を一定金額以上得ていた場合、6月には自宅に住民税の納付通知書が届くというわけだ。退職後に安定した月収がない場合は、この前年の住民税の支払いで苦労するケースも起こり得る。

一方でこのケースでは、退職した2018年1月から12月まで丸1年給与収入がなかった場合、翌年は住民税が非課税となる。

住民税の支払い催促を無視して滞納し続けるとどうなる?

企業に勤めているサラリーマンなどの場合、住民税は給料から天引きされるので基本的に住民税の支払いを滞納するということは起きない。一方で、個人事業主やフリーターなどで住民税を能動的に支払わないといけない人の場合は、納付を忘れたり、支払い能力がなかったりすると、滞納という事態に陥ることになる。

納付期限を過ぎて住民税を納付しなかった場合、期限日から約20日以内で督促状が郵送で自宅に届くほか、延滞金が加算される。延滞金は住民税額に年率14.6%の割合で加算され、最初の1カ月に限り年率4.3%の割合で計算される。

住民税を支払う能力がない場合は、市町村の担当者と相談の上、分割払いなどで対応してもらえることもある。しかし、そうして決めた支払い方法でも納付をせず、度重なる支払いの催促や督促状を無視した場合は、納税者の財産に関する調査(財産調査)が行われる。財産調査では、その納税者が預金口座を持つ銀行などの金融機関に調査票が送られる。

調査が行われた結果、住民税の支払いを滞納している人の財産が確認できた場合、それらが強制的に差し押さえられる。通常は2~3年以上滞納した場合に財産の差し押さえが行われるケースが多い。

引っ越しをした場合の住民税の扱いは?納付書はどこから?

転勤や引っ越しなどで住んでいる自治体が変わることがある。その場合、住民税は引っ越し前と後、どちらの自治体から請求されるのか。

住んでいる自治体を変えた場合、原則的に元々住んでいた自治体には転出届を、引っ越し先の自治体には転入届を提出しなければならない。では、課税期間となる1月1日から12月31日の途中、例えば6月に引っ越しをした場合はどうなるのか。

結論から言えば、住民税の請求は1月1日時点で住んでいた自治体から納付書が届く。そのため、引っ越し前と引っ越し後の自治体から二重に課税されることはない。送付は転入届に記載した引っ越し先の住所にされる。

海外駐在などで1年以上日本以外の国に住むことになった場合、12月末日までに転出届を提出し、1月1日時点で日本国内に住民票がなければ、課税されないこととなる。1月1日時点で日本国内のどこかの自治体に住んでいた場合は、その年の住民税は課税される。

日本に住んでいる外国人は住民税を支払うのか?

ちなみに住民税は、日本に住んでいる外国人でも課税されるケースとされないケースがある。

日本に住んでいる外国人で住民税が課税されるのは、1月1日時点で1年以上継続して日本に住んでいる外国人。日本人と同様に、企業に勤めている場合は給与から差し引かれる形で納付していく。一方で会社に所属せず、フリーランスなどで給与収入がある場合は、確定申告をして住民税などを自発的に払っていかなければならない。

また外国人の場合は日本政府とほかの国の政府の間で二重課税を回避するために租税条約が結ばれているケースもあり、その場合は日本に1年以上居住している外国人についても特例が認められるケースがある。租税条約の内容は国によって異なることもあるので、税務署に詳細な情報を確認するのが得策だ。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)

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