住民税や所得税は、個人の所得に応じて課税額が決定される税金であり、その金額は収入からおおよそ見当をつけることができる。今回は特に住民税の仕組みや計算方法について解説するので、再就職や引っ越しによって新たにこれを支払うことになるという方は、自身が納付すべき住民税の金額を把握する助けとしてほしい。
目次
住民税とは
住民税には個人に課せられる「個人住民税」と、企業などの法人に課せられる「法人住民税」があるが、ここでは主に前者、個人住民税について解説する。
個人住民税とは、都道府県や区市町村といった自治体が住民に対して行うさまざまな行政上のサービスについて、その費用を負担してもらうための税金だ。一般的に、「個人都道府県民税」と「個人区市町村民税」を合わせて「個人住民税」と呼ぶ(地方税法上は都民税と道府県民税、区民税と市町村民税はそれぞれ区別されるが、便宜上まとめて呼称する)。
個人住民税は毎年1月1日を基準に課税され、納付通知書によって通知がなされる。原則として区市町村がまとめて管理することになっているので、基本的には都道府県民税も区市町村民税も、区市町村が一括して賦課徴収を行う。
住民税の金額の目安
個人住民税には都道府県民税や区市町村民税といった分類のほかに、所得に応じて課せられる「所得割」、住民に一律に課せられる「均等割」、利子所得に課せられる「利子割」、特定配当に課せられる「配当割」、株式の譲渡などによる所得に課せられる「株式等譲渡所得割」という5種類の税金が存在する。
個人住民税と単に言った場合、これらのうち該当するものすべてを合わせた税金を指す。それぞれの計算方法は次の通り。
所得割額
(前年の総所得-所得控除)×税率(10%)-税額控除
税率10%とは、都道府県民税4%と区市町村民税6%の合算である。
均等割額
都道府県民税(1,500円)+区市町村民税(3,500円)
通常、都道府県民税は1,000円、区市町村民税は3,000円だが、平成26年度から平成35年度までの間は復興財源確保法によってそれぞれ500円加算されている。
利子割額
利子所得×税率(5%)
配当割額
特定配当等の額×税率(5%)
株式等譲渡所得割額
上場株式等の譲渡による所得×税率(5%)
非課税額の考え方
住民税には非課税限度額があり、所得が各区市町村の定める限度額以下であれば住民税は非課税となる。均等割については区市町村がそれぞれに条例で定めた基準を持つ一方で、所得割には次のような一定の基準が定められている。
所得割の非課税限度額(前年の総所得金額)
控除対象配偶者や扶養親族がいる場合:35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+32万円
控除対象配偶者や扶養親族がいない場合(単身世帯など):35万円以下
所得割の非課税限度額基準を満たしている場合、均等割もともに非課税になるとは限らないため、詳細は所属する区市町村へ問い合わせるなどすると良いだろう。なお、臨時福祉給付金の受給要件や保険料等免除の要件として挙げられる「住民税の非課税」とは、「すべての住民税が非課税」である状態を指すため注意してほしい。
住民税の計算方法
住民税や所得税など、各種税額を計算する上で基礎となる所得額のことを「課税所得」と呼び、住民税を算出するためにはまず課税所得を求めなければならない。住民税における課税所得の求め方は次の通り。
(前年度の総所得-各種所得控除)=課税所得
求められた課税所得が非課税限度を超えていれば所得割や均等割が課税され、所得割についてはこれに税率(10%)を乗じることで納税額を算出することができる。この計算は所得税額の算出と似ているため混同してしまいがちだが、住民税を計算する上では何点か注意しなければならない。
住民税を計算する上での注意点
住民税の課税所得を求める際の所得控除では、所得税における所得控除とほぼ同様の控除が認められているが、一部を除いて低く設定されていることに気をつけてほしい。
具体的には、所得税における基礎控除は38万円であるのに対し、住民税における基礎控除は33万円であるなど。ひとつひとつを見れば差はそう大きくないが、いくつかの控除の適用を前提として見た時、その差は数十万円に及ぶだろう。
所得税が非課税=住民税が非課税ではない
前述のような控除額の差によって、所得税は非課税でありながら、住民税は課税されるというケースが往々にして存在する。また、住民税のうち所得割は非課税でも、均等割が課税されるという状況も少なくない。住民税を非課税とするために所得を抑えたい場合などは、「所得税における所得控除」ではなく、「住民税における所得控除」を見なければならないということに注意すべきだろう。