ほとんどの会社や個人は、今年度の住民税の通知書をすでに受け取っているだろう。人によっては住民税額が昨年度よりかなり上がっていて、ビックリしているかもしれない。なぜこのようなことが起こるのだろうか、住民税の基礎を説明していこう。

鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

住民税が所得税と異なる点を整理

税金,住民税
(写真=PIXTA)

●住民税は累進課税ではなく一律10%課税

住民税は、均等割と所得割で構成されている。均等割は所得に関係なく一律同額に課せられる部分、所得割はその所得の額に応じて課税額が決まる部分だ。ここで着目すべきは所得割の仕組みだ。実は、累進課税ではないのである。

かつて、住民税は所得税と同じように累進課税制度が適用されていた。しかし2007年から一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)が適用されている。一律課税という点で、消費税と同様のシステムが住民税で動いているのだ。そのため、課税所得額が180万円しかない人が所得税では5%の税率で済むところ、住民税では10%の税率で徴収されることもある。

●住民税は賦課課税方式

日本の税制は原則として、納税者自らが自分の所得や税額を計算し、納付する「申告納税方式」を採用している。しかし、一部の税金については、自治体などが計算してそれぞれの納税者に通知し、徴収を行う「賦課課税方式」が適用されている。

住民税もこの一つだ。そのため、自治体側の事務作業に手間がかかり、後述する課税時期が異なる結果につながる。サラリーマンの所得税の源泉徴収や年末調整は、形式的には会社が代わりに行っているだけで、申告納税方式である。

●課税時期が異なる

さらに、所得税と住民税とでは、課税時期が異なる。所得税は、その時々の状況に合わせて源泉徴収を行い、年末調整で最終的な1年間の税額を算出し、精算する。つまり、「所得が発生する時期=課税時期」と考えて差し支えない。

一方、住民税は、前回年末調整や確定申告を行った所得をベースに計算される。この計算は地方自治体の課税部門が行っている。膨大な人数の住民税を計算するため、時間がかかり、課税時期は年末調整から約半年後の6月となる。つまり、所得が発生する時期と課税時期が一致しないのだ。

給料の額が変わるのは、年度の切り替わりの4月であることが多い。もし給料が減った場合には、少ない給料から過去の所得に対して課税された住民税を払わなければいけないことになる。

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給料が変わらないのに住民税が上がるケースはこういうとき

「住民税の仕組みは分かった。給料の額は変わらないのに、住民税だけが6月から上がるのはやはり理不尽だ」と感じる人もいるだろう。給料の額に変動がないのに住民税額が上がるときは、次のような理由が考えられる。

●前年に副業や配当、譲渡など、給料以外で収入があった場合

昨今のサラリーマンは、正社員での収入が今後上昇の見込みがないことを踏まえ、副業や投資をしている人が少なくない。中には、多額の収入ゆえに確定申告を行っている人もいるだろう。この場合、「給料は変わらないけれど住民税は上がる」ケースに該当する。なぜなら、所得税にはある“特典”が、住民税にはないからだ。

サラリーマンやバイト・パートのような給与所得者が副業などで収入を得た場合、年間所得額が合計20万円以下ならば、確定申告をしなくてよいことになっている。だが、これはあくまでも所得税だけの話で、住民税はそのような特典はない。給与所得以外の収入があり、確定申告をしていない人は市町村で住民税の申告を行わなくてはならないのだ。

所得税の場合、未公開株式の少額配当は確定申告をしなくてもよい。しかし、住民税にこのような規定はない。課税の対象となり、その結果、住民税が上がることになる。

●扶養家族の異動などによる控除額の減少

給料などの金額が変わらなくても、所得控除や税額控除の額が減少すれば、住民税額は上昇する。具体的には次のような場合が該当する。

・扶養対象だった家族が就職や起業で所得を得るようになり、扶養から外れた場合
・扶養対象の家族との死別や離婚などにより扶養対象者が減少した場合
・住宅ローン控除の対象期間が終了した場合

●地方自治体職員の単純なミス

住民税の計算は地方自治体職員が行っている。コンピューター処理がなされているとはいえ、最終的には人の目と手により計算作業がなされているので、ヒューマンエラーはゼロとは言い切れない。

住民税の決まり方

「住民税がなぜ増えたのか?」「どうすれば減らせるのか?」を考えるのに何より重要なのは、住民税を理解することに尽きる。

住民税額はどうやって決まるのか?納税の時期や方法などを理解することで、働き方や資産形成、家族のあり方など人生の転機で慌てることもなくなるだろう。

●住民税の「所得割」と「均等割」

住民税に「所得割」と「均等割」があるのは先に述べた。「所得割」は課税所得金額に一律10%の税率が適用されるので、所得金額によって額が変わる。

一方の「均等割」は非課税者を除いて定額で課税されるもので、標準年額は「都道府県民税1500円+市区町村民税3500円=5000円」である。あくまで標準年額であり、都道府県や市町村によって異なる可能性もある。

●住民税の算出方法

住民税額の基本的な算出方法は次のような計算になる。

・前年中の所得の合計額―所得控除の合計額=課税所得金額
・課税所得金額×10%―税額控除=住民税の所得割額

ポイントは「控除」だ。単純に収入が増えた場合に住民税が増えるのは当然のことである。しかし「控除」に目を向けることで、税額を抑えることができるのも事実だ。

●控除を賢く利用

基礎控除や扶養控除、社会保険料控除などは一般的に利用できる控除だ。一方で、ふるさと納税を利用した場合の「寄付金税額控除」、医療費が一定額を越えた場合の「医療費控除」、iDeCo(個人型確定拠出年金)加入時などに使える「小規模企業共済等掛金控除」などは利用する価値を知った人が使える控除である。

各種控除を自分のライフスタイルと連動させてみてはどうだろうか。

●住民税の払い方

税額が確定した住民税は、翌年6月に納税が始まる。給与所得者は6月から翌年5月の給料まで特別徴収となり、公的年金受給者は年金からの特別徴収となる。個人事業主などは市町村から送られてくる納税通知書によって年4回の普通徴収となる。

ここで注意したいのは前段でも述べたとおり、住民税に関しては前年の所得によって計算された税額を払うという点である。

転職などで給与が減っている場合には大きな痛手になることが予想される。給与からの特別徴収を受けている場合、退職の際に年間の残りの住民税を最後の給与で一括徴収されることもあるので覚えておこう。

負担増を回避するための3つのポイント

「住民税の負担は所得税より大きい」といわれることが多い。特に、脱サラして起業した人、仕事を辞めて収入のない人、所得が低い人にとっては、一律10%の税率は容赦ない厳しさに感じられだろう。住民税を安くしてオトク感を得る方法は、控除を賢く利用すると述べた。このほかに対策があるとすれば、次のようなものだ。

●住民税の納税通知書の内容をチェックする

先ほども述べたとおり、地方自治体の職員の目と手によってなされるものであるゆえ、ヒューマンエラーは絶対ゼロとは言い切れない。初歩的なところだが、きちんと前年の所得が反映されているかどうか、源泉徴収票や確定申告書控と照らし合わせてチェックするとよいだろう。

●年末調整時の所得控除を細かくチェックする

年末調整のとき、所得控除の書類が配布されるのだが、この際、怠りなくチェックしているだろうか。「年末調整の還付は一時的なものだから」と軽く扱ってはいないだろうか。実は、これこそが翌年6月からの住民税に大きく影響する。というのも、住民税の課税対象所得額と控除の仕組みは、所得税のそれとほぼ同じだからだ。

前段で述べた各種控除のほかにも、別居している高齢の親に生活費を送っている人、離婚や死別などにより一人で子供を育てているシングルペアレント、障害を抱えながら仕事をしている人や家族に障害者がいる人、夜学に通いながら勤務している人。これらに該当する人は、所得税・住民税の仕組みを知らないがゆえに受けるべき控除を受けていない可能性がある。分からないことがあったら総務や経理に確認するなどして、年末調整資料を作成するか確定申告にチャンレンジしてほしい。

なお、払い切れないからといって滞納してしまうと、延滞税などがかかるだけでなく、最悪の場合、自分の財産が住民税のために差押えになるおそれがある。納税通知書どおりに払うのが苦しいときは一度、納税先の自治体の担当窓口に行き、分割納付などの相談をしてみるとよいだろう。

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人生100年時代 老後に何が必要か
「つみたてNISA」と「iDeCo」 どちらを選ぶべきか
米国では高齢者の3割が「老後の蓄え」に後悔

Q


住民税と所得税の違いは?

●住民税は累進課税ではなく一律10%課税
●住民税は賦課課税方式
●課税時期が異なる

●住民税は累進課税ではなく一律10%課税
●住民税は賦課課税方式
●課税時期が異なる


Q


給料が変わらないのに住民税が上がる時は?"

●前年に副業や配当、譲渡など、給料以外で収入があった場合
●扶養家族の異動などによる控除額の減少
●地方自治体職員の単純なミス

●前年に副業や配当、譲渡など、給料以外で収入があった場合
●扶養家族の異動などによる控除額の減少
●地方自治体職員の単純なミス


Q


住民税の金額はどうやって決まる?

●前年中の所得の合計額―所得控除の合計額=課税所得金額
●課税所得金額×10%―税額控除=住民税の所得割額

●前年中の所得の合計額―所得控除の合計額=課税所得金額
●課税所得金額×10%―税額控除=住民税の所得割額

Q


住民税の負担を回避するためのポイントは?

●住民税の納税通知書の内容をチェックする
●年末調整時の所得控除を細かくチェックする

●住民税の納税通知書の内容をチェックする
●年末調整時の所得控除を細かくチェックする