今年度の住民税の通知書をほとんどの会社や個人がすでに受け取っているだろう。人によっては住民税額が昨年度に比してかなり上がっていてビックリしているかもしれない。なぜこのようなことが起こるのだろうか、住民税の基礎を説明していこう。

住民税が所得税と異なる点を整理

税金,住民税
(写真=PIXTA)

1. 住民税は累進課税ではなく一律10%課税

住民税は、均等割と所得割とから構成されている。均等割は所得に関係なく一律同額に課せられる部分、所得割はその所得の額に応じて課税額が決まる部分だ。ここで着目すべきは所得割の仕組みだ。実は、累進課税ではないのである。

かつて、住民税は所得税と同じように累進課税制度が適用されていた。しかし平成19年から一律10%(道府県民税4%、市町村民税6%)が適用されている。つまり、消費税と同様のシステムが住民税で動いているのだ。そのため、課税所得額が180万円しかない人が所得税では5%の税率で済むところ、住民税では10%の税率で徴収されることがある。

2. 住民税は賦課課税方式

日本の税制は原則として、納税者自らが自分の所得や税額を計算し、納付する「申告納税方式」を採用している。しかし、一部の税金については、自治体などが計算してそれぞれの納税者に通知し、徴収を行う「賦課課税方式」が適用されている。

住民税もこの一つだ。そのため、自治体側の事務作業に手間がかかり、次の3. で述べる課税時期が異なる結果につながる。なお、サラリーマンの所得税の源泉徴収や年末調整は、形式的には会社が代わりに行っているだけで、申告納税方式であることには変わりがない。

3. 課税時期が異なる

さらに、所得税と住民税とでは、課税の時期が異なる。所得税は、その時々の状況に合わせて源泉徴収を行い、年末調整で最終的な1年間の税額を算出し、精算する。つまり、「所得が発生する時期=課税時期」と考えて差し支えない。

一方、住民税は、前回年末調整や確定申告を行った所得をベースに計算される。この計算は地方自治体の課税部門が行うもの。そして膨大な人数の住民税を計算するため、時間がかかる。ゆえに、課税の時期は、年末調整から約半年後の6月となる。つまり、所得が発生する時期と課税時期が一致しないのだ。

給料の額が変わるのは、年度の切り替わりの4月であることが多い。もし、給料が減った場合には、少ない給料から過去の所得に対して課税された住民税を払わなければいけないことになる。

給料が変わらないのに住民税が上がるケースはこういう時

「住民税の仕組みは分かった。でも、給料の額は変わってない私にとっては、住民税だけが6月から上がるのはやはり理不尽だ」と感じる読者もいることだろう。給料の額に変動がないのに住民税額が上がるときは、次のような理由が考えられる。

1. 前年、副業や配当、譲渡など、給料以外で収入があった場合

昨今のサラリーマンは、正社員での収入が今後上昇の見込みがないことを踏まえ、副業や投資を行っている人が少なくない。中には、多額の収入ゆえに確定申告を行っている人もいるだろう。この場合、「給料は変わらないけれど住民税は上がる」ケースに該当する。なぜなら、所得税で行われている特典が、住民税では行われないことがままあるからだ。

サラリーマンやバイト・パートのような給与所得者が副業などで収入を得た場合、その年間所得額が合計20万円以下ならば、確定申告をしなくてよいことになっている。が、これはあくまでも所得税だけの話。住民税は、そのような特典はないので、確定申告を行わなくてはならない。

また、所得税の場合、未公開株式の少額配当は確定申告をしなくてもよいこととなっている。しかし、住民税にこのような規定はない。そのため、課税の対象となり、結果、住民税が上がることになる。

2. 扶養家族の異動などによる控除額の減少

給料などの金額が変わらなくても、所得控除や税額控除の額が減少すれば、住民税額は上昇する。具体的には次のような場合が該当する。

・扶養対象だった家族が就職や起業で所得を得るようになったことで扶養から外れた場合
・扶養対象の家族との死別や離婚などにより扶養対象者が減少した場合
・住宅ローン控除の対象期間が終了した場合

3. 地方自治体職員の単純なミス

住民税計算は地方自治体職員が行うものだ。コンピューター処理がなされているとはいえ、最終的には人の目と手により計算作業がなされている。そこにヒューマンエラーはゼロとは言いきれない。

負担増を回避するための3ポイント

「住民税の負担は所得税より大きい」と言われることが多い。特に、脱サラして起業した人、仕事を辞めて収入のない人、所得が低い人にとっては、一律10%の税率は容赦ない厳しさに感じられることだろう。住民税を安くしてオトク感を得る方法はほとんどないのだが、強いて講じられる対策があるとすれば、次のようなものだ。

1. 住民税の納税通知書の内容をチェックする

先ほども述べた通り、地方自治体の職員の目と手によってなされるものであるゆえ、ヒューマンエラーは絶対ゼロとは言い切れない。初歩的なところだが、きちんと前年の所得が反映されているかどうか、源泉徴収票や確定申告書控と照らし合わせてチェックするとよいだろう。

2. 年末調整時の所得控除を細かくチェックする

年末調整のとき、所得控除の書類が配布されるのだが、この際、チェックを怠りなく行っているであろうか。「年末調整の還付は一時的なものだから」と軽く扱ってはいないだろうか。実は、これこそが翌年6月からの住民税に大きく影響する。というのも、住民税の課税対象所得額と控除の仕組みは、所得税のそれとほぼ同じだからだ。

別居している高齢の親に生活費を送っている人、離婚や死別などにより一人で子供を育てているシングルペアレント、障碍を抱えながら仕事をしている人や家族に障碍者がいる人、夜学に通いながら勤務している人。これらに該当する人は、所得税・住民税の仕組みを知らないがゆえに受けるべき控除を受けていない可能性がある。分からないことがあったら総務や経理に確認するなどして年末調整資料を作成してほしい。

なお、払いきれないからといって滞納してしまうと、延滞税などがかかるだけでなく、最悪、自分の財産が住民税のために差押になる恐れがある。もし、納税通知書の通りに払うのが苦しい場合には、一度、納税先の自治体に窓口に行き、分割納付などの相談をしてみるとよいだろう。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

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