シンカー:雇用統計は、雇用市場の制約を打ち破る極めて強い結果であった。働き方改革により、労働時間の制約が生まれ、それを新たに雇用を増やすことで埋め合わせる好循環が生まれているのかもしれない。少子高齢化の中でも労働参加率の上昇により、労働力人口の増加も続いている。好調な春闘の結果もあり、4月以降の賃金上昇が、消費者心理を向上させ、好循環が徐々に見えてくるだろう。目先は賃金上昇に対して物価上昇が遅れることによる実質賃金の上昇が、アベノミクスの中で始めて実感されることになるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

3月の失業率は2.5%と、2月から変化はなかった。

12月の2.7%から、1月に2.4%に低下した後、2・3月のリバウンドは思ったより小さい。

1・2月の雇用統計は、雇用市場の制約を打ち破っる極めて強い結果であった。

これまで既に大幅に雇用を拡大してきた企業の需要はまったく衰えず、1・2月で就業者は1.4%も増加した。

働き方改革により、労働時間の制約が生まれ、それを新たに雇用を増やすことで埋め合わせる好循環が生まれているのかもしれない。

少子高齢化の中でも労働参加率の上昇により、労働力人口も1・2月で1.1%も増加している。

一方、1・2月に有効求人数は1.7%も減少し、求職者も1.5%も減少している。

これまでの求人の拡大が、しっかり雇用に結びついた結果であることがわかる。

3月には、就業者は前月比+0.7%、労働力人口が同+0.8%と更に増加し、かなり強かった1・2月からの反動はほとんど見られず、雇用環境はかなり強い状況であることが再確認された。

研究や飲食・宿泊などのサービス業、そして情報通信など、マーケットが拡大している所の雇用の増加がかなり強くなり、引き続き景気拡大シナリオに沿ってしっかり動いているとみる。

3月の有効求人倍率は1.59倍と、2月の1.58倍から再び上昇し、4月の新年度入り後も、企業の雇用拡大の意欲は強いことを示した。

3月の有効求人が前月比-0.6%、求職者が同-1.0%となり、1・2月の流れが続いている。

景気拡大と物価上昇が強くなるためには、雇用環境の改善が総賃金の拡大につながり、家計のファンダメンタルズも改善し、消費者心理の向上と消費の増加に向かうことが必要となる。

消費のしっかりとした増加があって、経営者は売上数量の減少を懸念せず、コストの増加による価格引き上げが可能となり、2%の物価目標に向けた好循環につながることになる。

好調な春闘の結果もあり、4月以降の賃金上昇が、消費者心理を向上させ、好循環が徐々に見えてくるだろう。

目先は賃金上昇に対して物価上昇が遅れることによる実質賃金の上昇が、アベノミクスの中で始めて実感されることになるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司