先週末、米国市場では強い雇用統計の結果を受けて株高・ドル高となった。週明けの東京市場は反発して始まりそうだ。先週、市場の波乱要因となった南欧不安は後退している。イタリアでは連立政権が発足する見通しとなった。政治空白に終止符が打たれるということで市場は落ち着きを取り戻したが、そもそもバラマキ政権ができること自体、ユーロにとってのリスクのはずだが、それはひとまず置いておこう。イタリアは落ち着いたが、スペインではラホイ首相の不信任案が可決された。ラホイ氏に代わり、最大野党の社会労働党(中道左派)のサンチェス書記長が新首相に選ばれたが、少数与党のため政権運営の難航は必至。スペインの混乱は、政治空白が続いたイタリアと同じ構図で、もう一度ユーロ安材料として蒸し返される可能性には注意が必要だろう。

今週は重要な経済指標の発表が少ないが国内では景気動向に関する指標が注目される。7日の4月景気動向指数は鉱工業生産との連動性が高く、鉱工業生産の伸びが鈍かったことから景気動向指数もあまり期待できない。しかし8日に発表される1-3月期GDPの2次速報値は相場の材料になるかもしれない。1次速報値では9四半期ぶりのマイナス成長を記録したが、背景に民間企業の設備投資が前期比マイナスとなったことがある。しかし1日に発表された1-3月の法人企業統計では、設備投資増加率が前年同期比3.4%と高い伸びとなった。これを受けて2次速報は上方修正されるだろう。さらに5月景気ウオッチャー調査も同じ日に発表される。4月は5ヶ月連続で下落していた先行き判断DIが小幅上昇に転じた。GDPの上方修正と街角景気改善が併せて出れば、相場の下支え要因になるだろう。

海外の材料としては12日の米朝首脳会談を目前にした最終調整の進展具合に市場の目が向かうだろう。トランプ米政権は北朝鮮に対し「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に必要な措置の一括合意を求めない方針と伝わった。これで会談の実現性は高まった。一方で、これから長期に及ぶであろう交渉の第一歩に過ぎないことで、アップサイドのサプライズも期待しにくい。まずは実現されるだけでよしとする雰囲気が市場では漂うだろう。基本的に様子見ムードが強まる展開と思われる。

今週は、週末のメジャーSQに向けて先物主導で荒い値動きとなる場面もあるかもしれないので留意したい。予想レンジは22,100~22,600円とする。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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