7月9日、ソフトバンクグループ(以下「SBグループ」)は通信子会社ソフトバンク株式会社(以下SB(株))が東京証券取引所(以下「東証」)へ上場予備申請を行ったと発表した。今後、東証では上場審査を進めることとなるが、果たして申請は通るのか、だとすればいつ頃なのかについて考察する。

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(画像= Tupungato / Shutterstock.com)

SB(株)上場申請のサマリー

SBグループがSB(株)の上場検討開始を発表したのは2月8日、以来、SB(株)の独立性確保を図るべく、役員体制の変更やSB(株)による親会社債務保証の解除など、申請に向けた整備を進めてきた。こうした準備が整ったとして、今回の上場申請に至ったという訳だ。上場が実現すれば資金調達額は2.5兆円に上り、2018年最大の上場案件となる予定だ。

ただし、上場には東証の審査が必須条件であり、現時点で承認の見通しが立ったわけではない。2月の時点で孫社長は「できれば1年以内に上場を」とコメントしていたが、もちろんその時期も現時点では確定していない。

ちなみにSBグループが東京証券取引所に提出した「上場申請エントリーシート」には、主幹事証券連絡先の他に「希望上場スケジュール(上場承認日・上場日)も記載されているはずだが、公開はされていない。

東証による上場審査のポイント

東証では上場予備申請を受けると、流動性(流通株式比率・時価総額・株式数)や事業継続年数・財政状態・利益などの形式的な要件の確認を経て、上場審査に入る。審査では以下の項目を中心に、上場企業の適正性を確認する。

企業関連情報とくにリスクの適時・適切開示-開示ができる組織体制が整備されているかが重視される。あわせてインサイダー取引を未然防止する体制も求められる。

健全(忠実・公正)な企業経営の担保-経営陣やその親族との不透明な取引の存在、役員構成の適正性(親族関係の任命や取締役の兼業状況)を確認する。あわせて親会社がある場合には、申請会社の独立性も求められる。 事業の持続可能性と安定した収益基盤-合理的な事業計画の立案、実績のモニタリングなど、予算・実績管理を推進する組織体制が整備されているかが問われる。

適切な内部管理体制やコーポレート・ガバナンスの整備-取締役会・会計監査人設置などの機関設計、社内規定や人事制度の整備状況を確認する。

もちろんSBグループは、こうした上場審査項目をクリアーするために5か月間にわたり準備を進めてきたのだ。それでもハードルは残る。親子上場問題だ。

親子上場に関する東証のスタンス

親子上場に関しては、筆頭株主である親会社以外の株主の声が反映されない等ガバナンス面での問題点が指摘される。

一方でニューヨークやシンガポールなど世界各国の取引所は、いずれも上場を認めている。欧米・アジアでも親子上場は盛んに行われており、アメリカでは一事業を独立させるスピンオフでも親子上場が活用されている。そうした状況の中で、一定の条件を満たせば許可せざるを得ないというのが東証のスタンスのようだ。

審査に当たって最も問題になるのは、SBグループ・SB(株)双方の少数株主の権利侵害だ。SB(株)の場合、少数株主の利益はSBグループによって侵害されやすいので、経営の独立性が求められる。一方でSBグループの場合、目が行き届かないSB(株)の不祥事により想定外の不利益を被る可能性があるので、グループの内部管理体制強化が求められる。

加えてSB(株)の通信事業はグループの中核事業であり、東証としては上場審査に当たって慎重にならざるを得ない。

今後のスケジュール見通し

上場申請の後、審査スケジュールを東証とSBグループ側で詰めた後、各審査項目に関して事業所など実地調査を含めた数次のヒアリングに入る。これをクリアーした後、公認会計士ヒアリング・社長説明会と進み、順調なら10月には所内協議で承認の可否が決まる。今度は審査の動向に注目が集まりそうだ。(ZUU online 編集部)