ドル円予想レンジ109.70-111.90
「総裁選への対応についてでありますが、約半年にわたった国会が終了したばかりでありますし(中略)この夏、蝉時雨を聞きながらよく考えていきたいと思っております」-。これは通常国会が事実上閉会した7/20に安倍首相が述べた所感だ。建前上だが安倍首相は自民党総裁選への立候補を明言していない。
「安倍3選」に向けてアベノミクスの誹りは避ける
「うーん、今は正直、それどころじゃないんだよね」と話した懇意某代議士は、今後の法案政策云々より東京と地元選挙区との往復増に疲労困憊していた。岸田自民党政調会長が総裁選不出馬を表明したことで、9月自民党総裁選(9/7告示・9/20投開票予定)は安倍首相3選がほぼ確実視され始めた。総裁選を巡って、石破茂氏(元党幹事長)、野田聖子氏(総務相)の立候補が取り沙汰されるが、安倍晋三氏は総裁選圧勝に向けた国会議員票は確保済み。あとは党員・党友による地方票固めとなる。そうなると、前出の某代議士らを通じて今回の西日本豪雨対策は勿論、各種要望(来年10月の消費税引き上げ等)、課題への取り組み、貢献姿勢をアピールするのは必然だろう。来春の統一地方選や来夏参院選も睨むなら地方の再生と創生、そして景気対策・アベノミクス効果への誹りは3選後の政権運営に影を落としかねないとして万難を排したい、と読むのが普通だ。
9月自民党総裁選前の日銀会合は不動か
日銀は2%の物価目標を掲げ、現策で約5年。超低金利の副作用がどの程度悪影響を及ぼしているかが7/30-31会合で議論される、との見方がある。8月は休会であり次回は9/18-19。筆者は自民党総裁選の前日に日銀が自らの失敗を語るような劇的な政策変更をする可能性は低いと見ている。
そもそも日銀自身、身動きが取れない状況とも言えそうだが、皮肉なことに現策の有効性は「安倍3選」に向けて政治が強く訴えてくれる状況とも言えよう。そうなると今回の会合は報じられている通り、”声明微修正““上場投資信託(ETF)購入柔軟化“など「正常化」ではなく「チューニング」とした柔軟性を市場対話で努めると読むのが無難そうだ。「正常化」が囃されての円高圧力増幅場面ではオールジャパン機関投資家からの支援や企業需給、長期金利の急騰場面では日銀が指定利回りで金額制限を設けずに国債を買い入れる「指し値オペ」の強化で、円高圧力・金利上昇の減衰が図られそうだ。
7/23週ドル円焦点
上値焦点は7/25高値111.40、7/23-24高値圏111.53-56。越えれば7/20下落帯111.90-112.30意識で112.40-50、7/20高値112.63期待。下値焦点は110円半ば・7/4-5安値110.27、200日線(110.10)。6/28安値109.95、6/27安値109.69、6/25-26安値109.35、6/8安値109.18は日足一目均衡表雲帯(109.95-13)内として意識されよう。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト