はじめに
SNSの投稿を通した事件・問題が後を絶たない。マスメディアで大々的に報道される事件から投稿者の周囲で問題になっているものなど大小様々だ。それらの多くが投稿者の「心の声」がそのまま投稿に反映されていることが起因しているように感じる。
SNSは本来、情報収集や他人の近況を知って楽しむべきツールである。
しかし使い方によっては犯罪や事件に繋がる可能性もあるし、家族・友人・会社内での信頼を壊してしまうような問題に発展しかねない。
このような背景もあり、MMD研究所とセキュリティソフト大手のマカフィーは「高校生、大学生、社会人20代、社会人30代」の4属性に対して「SNS利用に関する意識調査」を実施し、SNSの公開設定、実名利用の有無や投稿を後悔した経験、投稿が問題になった経験などを問いかけた。調査結果から、SNSのメリット、デメリットを見ながら、利用者はどのような点に気をつけていくべきかを考察したい。
SNSのポジティブな面
SNS利用において、多くのユーザーはそのメリットに魅力を感じて利用している。今回の調査のTwitterを利用する理由では、「趣味に関する情報収集」に多く票が集まった。
Twitter以外のSNSの利用目的も聞いたが目的は少しずつ異なり、それぞれのSNSの特性によって使い分けがされていることがわかった。
興味深い点でいうと、Twitterの利用目的で「顔見知りの友人・知人とのコミュニケーション」と「SNS上の知り合いとのコミュニケーション」の割合がどの世代もほぼ一緒だったことだ。高校生に至っては、「顔見知りとのやり取り」が24.7%、「SNS上での知り合いとのやり取り」が25.4%となり、SNS上の知り合いとのコミュニケーションで活用する場面の割合が僅かではあるが、高いことがわかった。
これは良い面もあれば悪い面でもある。例えば良い面でいうと、自分と共通の趣味を持つ人を見つけ、SNS上で意見や情報を共有しあえることだ。恐らく少しニッチな趣味であっても簡単に同じような趣味を持った人とネットを通じて出会うことができる。
しかし、それを悪用して近づいてくる人々がいることも忘れてはいけない。
危うい利用?SNSでの実名公開
実名利用しているSNSに関して聞いた調査結果が下記となる。高校生の半数以上はTwitterを実名利用していることがわかった。
また実名利用している人のうち、公開設定が「すべての人」の割合は高校生で41.1%となった。高校生のTwitter利用率の高さを考えると、多くの高校生が実名×全公開していることがわかる。
ちなみにこの結果に対して、世の中の意見は実名公開、肯定・納得派、否定派、驚き・怖い派に大きく分けられた。「デジタルタトゥー」という言葉も存在しており、この言葉はSNSの危うさをよく表現しているのではないだろうか。
若年層と見られる人からのコメントは肯定、納得派が多く、年齢層が高いほど否定派、驚きが多くなる。大人になればなるほど、自身の経験や聞いたことを通じて、個人情報をばらまくことの怖さを実感していく。
しかし中学生、高校生はこれまで通っていた学校などの個人情報を公開することで自分と繋がれる人を増やそうという傾向にあるようだ。
特にTwitterでは趣味の情報収集に使う人が多いため、そこから派生して趣味関連の交友関係を使うことにも使われている。大変便利なツールである一方、一歩間違えると犯罪、事件に巻き込まれる可能性を高めてしまう。SNS上で誰が悪意のある人かを見極めることはなかなか難しい。そのため、未成年のうちはSNS上で出会った人とはリアルの世界で会わないことが賢明である。
後悔した投稿内容は感情に関する投稿
今回の調査では、SNSに投稿後に後悔した経験を聞いた調査結果がある。高校生、大学生、社会人20代の半数以上は後悔した経験があると答えた。
後悔した経験を聞くと、「その時の感情」が最も多く約半数となった。その時の感情を呟いたら誰かが共感してくれたり、反応してくれたりするからこそ、ネガティブな感情も吐露しやすいのであろう。
投稿によって問題になったところはどこかという質問では、オンライン上に留まらず、「友人・知人・家族間」「会社内」「学校内」「就活」などの現実世界で問題になった経験があると答えた方が少なからず存在した。
・インスタのストーリーに学校の先生の悪口を名前を出して書いた(高校生 女性 自分自身のできごと)
・ いるはずがない場所に行っていたことがばれた(社会人20代 男性 自分自身のできと)
・会社の業務を投稿した(社会人20代 男性 友人のできごと)
・ 違法ダウンロードの自慢(大学生 男性 友人のできごと)
・未成年の飲酒の発覚(高校生 女性 友人のできごと)
上記は調査対象者に、問題になった出来事を自由回答で記載してもらった内容である。職場や学校などで問題になった場合は今後の人生設計、進路などにも影響が及ぶ可能性があるので十分注意しなければならない。
終わりに
ちなみに今回投稿が問題になった経験を聞いた後に、その投稿が問題になると思ったか、という質問をしたのだが、約8割が問題になると思わなかったと回答している。多くのユーザーは問題にしようと思って問題発言をしていないことがわかる。
ユーザーがSNSの利用の仕方を学ぶこと、そして少しでもいいので投稿をするときに慎重になることで、未然に防げる事件や問題は多いはずだ。 また、どのような投稿が過去問題になったかの事例を知ることで同じ轍を踏まないように気を付けることができる。これによって、投稿が問題になると思わなかったという割合は減るだろう。
サービス提供者、モバイル事業者などの事業者サイドからの事例作成やユーザーへの注意喚起を今後よりしていく必要がある。
またユーザー(全体公開や実名公開している人は特に)はSNSへの意識を「手軽に自分の気持ちを書ける日記」的な感覚から「不特定多数の人に見られて拡散される可能性がある1つのメディア」的な考え方にマインドセットを変えるべきだ。
今回の調査を通して利用者、サービス提供者、モバイル関連事業者ができることを考えるきっかけにしていただければと思う。
執筆者:MMD研究所(編集部員)
(提供:MMD研究所)