米国の著名投資家たちは、極めて個性豊かな人が多い。お金を増やして大成功を収めたところまでは同じだが、投資哲学や手法が人によって大きく異なっており、資産を増やす道はひとつだけではないと気づかされる。

ジム・ロジャーズ、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと言えば、大御所中の大御所であるが、70代・80代の高齢にもかかわらず全員が今尚お金を殖やし続けている。また、各人の投資スタイルに長短があり、学ぶべき点も違う。この三大投資偉人の成功と失敗をおさらいして、彼らの投資手法の特徴や凄さを対比しよう。まず、3人の投資手法の比較から。(執筆=在米ジャーナリスト 岩田太郎)

ジム・ロジャーズ/ロジャーズ・ホールディングス会長

(画像=撮影=村越将浩))

・異名:冒険投資家、金融界のインディアナ・ジョーンズ
・純資産:3億4000万ドル
・投資スタイル:グローバル・マクロ、ショート(現役時代)、超長期投資(現在)

1942年生まれで今年76歳を迎えるロジャーズ氏は、純資産が3億4000万ドル。ソロス氏と共同設立した伝説の米投資会社クォンタム・ファンドにおいてアナリスト役を務め、トレーダー役だったソロス氏を補佐する中で、国際情勢分析と「売り」を組み合わせて利益を出す「グローバル・マクロ」戦略を駆使して、4200%ものリターンを叩き出した。

ロジャーズ氏は、国際情勢からマクロ経済、金融政策、社会のトレンドなどが引き起こす需給の変化を綿密に調査し、そこから価格の大きな上昇または下落を予想してポジションをとる。それは、今でこそ珍しくない手法だが、1970年代当時は斬新なものであった。世界と比較して元気のない米国株が上がり始めるのを待つのではなく、その下落を利用して儲けをだすという、「コロンブスの卵」的な発想だ。まさに、「ベア・マーケット(弱気の市場)を打ち負かす秘策」であり、ロジャーズ氏の性格が表れている。流れに逆らってリスクの大きい「逆張り」「売り」を実行するには、猛勉強が必要になることは言うまでもない。

ところが、若かりし頃のロジャーズ氏は、「売り」で大成功した直後に、すっからかんになる大失敗を犯している。自伝から再現しよう。(Rogers, Jim. Street Smarts: Adventures on the Road and in the Markets. New York: Crown Business, 2013: 53‐55.)

彼は20代後半であった1970年に、得意の情勢分析を活かして「米株式市場が崩壊する」と読んだ。そして全財産をつぎ込み、ある時期にある価格で売る権利を付与したプット・オプションを、プレミアムを支払って手に入れた。果たして数か月後に伝統ある米企業が次々と倒産してゆき、株価は底をつける。そのタイミングでロジャーズ氏はプットを売却して、元手を3倍に増やしたのである。

さらに今度は底打ちした市場で株価が急騰すると判断し、実際に上げた株価でより多く儲けた。ところが、ここで「若気の至り」からロジャーズ氏は有頂天になる。安全のためのプレミアムはもう不要だと判断して、株式が再び下げることに賭けてショートした。だが、「売り」に賭けたこれら6社の銘柄は上げ続けたのである。2か月後、ロジャーズ氏は元手も儲けもすべて失った。

とは言え、転んでもただでは起きぬのが投資のプロだ。ロジャーズ氏は、ここで投資の悟りを開く。「失敗を恐れるな。若いうちにすっからかんになるのは、よい教訓だ。世界の終わりじゃない。それは、自分がいかに無知であるかを教えてくれる。自分のことを理解できるようになる。失敗から学ぶなら、それは失敗なんかじゃない」。

実際にロジャーズ氏は失敗を「よい授業料」に変え、その後も失敗はするものの、悲惨で元も子もなくなる大失敗は犯さなくなった。

一方で「ショート」を中心に据えながらも、彼がロング、すなわち「買い」にするのが中国株だ。歴史家であるロジャーズ氏の持説は、「19世紀は英国の時代、20世紀は米国の時代、21世紀は中国の時代」であり、歴史的な大局観をもって「米国はショート、中国はロング」を実践している。実際に中国株は全般的に好調で、ロジャーズ氏はここでも大成功している。

ウォーレン・バフェット/バークシャー・ハサウェイ最高経営責任者(CEO)

・異名:オマハの賢人、投資の神様
・純資産:876億ドル(約9.8兆円、1ドル=112.24円換算)
・投資スタイル:長期集中投資、バリュー投資型