「金(ゴールド)好き」としても知られるジム・ロジャーズ。金の第一人者でファーストネームで呼び合う仲でもある豊島逸夫氏に話を聞いた。
前半は金の専門家としての豊島逸夫氏に、ジム・ロジャーズが金好きの理由や資産としての魅力、今後の見通しについて。後半は豊島氏がジム・ロジャーズと接するなかで感じた投資家としての凄さ、今注目している投資対象、世間にはあまり見せない素顔などを語っていただいた。(聞き手:押田裕太)※本インタビューは2018年10月8日に実施されました
目次
ジム・ロジャーズが金(ゴールド)好きの理由
──ジム・ロジャーズは「金(ゴールド)好き」ということで知られていますね。その理由について、豊島さんの見解も交えて教えてください。
まず彼がなぜ有名になったかというと、1970年代にジョージ・ソロスと史上初のヘッジファンドなるものを立ち上げたのち一財を成したから。ヘッジファンドは、デリバティブや先物を駆使して、年間のパフォーマンスを最大限に上げていくものです。
投資の神さま「ジム・ロジャーズ」というとそのようなイメージが一般的ですよね。長い相場生活のなかで、もう彼は70歳を過ぎて、最後にたどり着いた究極の資産が金(ゴールド)だと。投資の神さまと言われる彼がいろいろ試行錯誤して、失敗もして儲けもして、いろいろあって、最後は金(ゴールド)だと言うわけです。たとえば「娘に残そうと思ったら金以外にない」ということを、彼ははっきり言います。そこがまず現象面として、非常に説得力がある点です。
ではなぜ金か。他のたとえばドルや株式、債券、これはいずれも紙のアセットであるのに対して、娘や妻に残す資産は価値が残る実物が好ましいと。その実物資産のなかで最も流動性があり、売買しやすい資産だという彼の金に対する思い入れの背景です。これが1番目の理由です。
2番目に彼は同時に中国に対しても非常に思い入れがあります。アメリカを見切って、一家そろってシンガポールに移住する最大の理由は、娘に中国語を習わせるため。それくらい中国に対して入れ込んでいます。中国人が好きなものは「やっぱり金だよね」という発想があります。インドしかり、中東しかり、新興国の人は金がアセットだという考えを当たり前に持っているわけです。
今短期的には新興国は危機ですが、長い目で見た資産価値を考えると、新興国が長期的には成長していくでしょう。したがって、金の需要も新興国の所得水準が徐々に先進国にキャッチアップするにしたがって、彼らの金の購買力も増えていくだろうと。このような、シンガポールに住む「投資の神さま」ならではとも言える、新興国に対する洞察が金にあります。金需要の7割は新興国ですからね。
3番目に、基本的に米ドルに対する不信感があると言えるでしょう。非常に強い口調でFRB無用論をずっと唱えていて、これは今でも変わっていません。「あんなにドルを刷ってしまって……刷られまくっている紙切れじゃないか」と。そういう意味での、ドルに対する根源的な不信感があります。
そうすると、金を買う行為はドルに対する不信任投票と言えます。もともとドルは金本位制の時代に金に変えられればこそ価値があるもの。紙切れだけど、アメリカに持っていけば金に換えてもらえるという時代がありました。ただ今はもう金の裏づけはない。世界の人たちがドルに不安を持ったとき、アメリカ政府に持っていっても金に換えてくれない。ではどうするかと言ったら金の市場に目を向けるかというわけです。
日本人投資家が金を保有する意義 日経平均は日銀ETF買いで4000円程度のかさ上げ?
──日本人の投資家の方が金を保有する意義はどういったところにあるとお考えでしょうか?