● 民間企業の2016年冬のボーナス支給額を前年比▲0.3%(支給額:36.9万円)と予想する。2015年冬(▲0.3%)に続き、2年連続の減少になるだろう。
● ボーナス低迷の最大の要因は企業業績の悪化だ。法人企業統計では、16年4-6月期の経常利益は前年比▲10.0%と3四半期連続で悪化、減益幅も拡大している。また、日銀短観の経常利益計画では、16年度上期の経常利益は前年比▲13.9%が見込まれている。ボーナスは業績に連動する傾向が非常に強いことから、こうした業績悪化が冬のボーナス抑制に繋がるだろう。業種別では製造業、企業規模別では中小企業で特に厳しい結果になると予想される。
● なお、毎月勤労統計における16年夏のボーナスは前年比+2.3%と比較的高い伸びとなったが、これは前年夏に▲2.8%と大きな落ち込みになったことの反動が出ている面もあるだろう。15年冬のボーナスは前年比▲0.3%と、15年夏ほどの落ち込みになっていないことから、16年冬のボーナスが前年の裏要因で押し上げられる度合いは小さいだろう。
● 労務行政研究所の調査では、16年冬のボーナスは前年比+1.1%となっており、15年冬の同+3.7%から明確に鈍化、16年夏の+1.7%からも伸び率が縮小している。また、経団連の調査(第1回集計)でも、16年冬のボーナスは前年比+0.84%と、15年冬の同+3.79%、16年夏の+1.46%から鈍化していることが確認できる。どちらも一応プラスにはなっているが、これらのアンケート調査は一部上場などの大企業が主に対象になっていることに注意が必要である。中小企業では相対的に業況が厳しいことが多く、ボーナスの伸びも大企業を下回りやすい。そのため、調査対象に中小企業を多く含む毎月勤労統計では伸び率が低く出やすい傾向がある。過去の例を見ても、アンケート調査で+1%程度となっている場合、毎月勤労統計では前年比マイナスになることが多い。
● 民間企業の冬のボーナスは減少が予想され、期待外れの結果に終わ るものと思われる。所定内給与の伸びが緩やかなものにとどまるなか、ボーナスも伸びないことで、賃金の増加ペースは緩やかなものにならざるを得ないだろう。
(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 新家 義貴