4月の請負金額が急増

 公共投資の先行指標である公共工事請負金額が大幅に増加している。4月は前年比+10.6%と二桁の伸びとなっており、季節調整済み前月比で見ても+13.7%と急増している(季節調整は筆者)。

 政府は現在、景気の下支えを狙って、16年度予算のうち、公共事業費など12.1兆円の執行を前倒しし、年度上半期のうちに8割の契約を実現する方針を打ち出している。通常は上半期に7割程度の契約であるため、今回の措置により1割程度、額にして1兆円強の前倒しが実現することになる。今回の4月の公共工事請負金額の急増は、こうした前倒し執行の効果が顕在化し始めている可能性が高いことを示唆している。

 4月の請負金額を発注者別にみると、国からの発注が前年比+10.1%、季節調整済前月比+43.9%(季節調整は筆者)と大きく増えており、前倒し効果が窺える。都道府県や市区町村などはまださほど増えていないが、政府が地方自治体に対しても「平成28年度予算の早期実施について」という通知を出し、国と同様の前倒し執行を求めていることを考えると、次第に増加に向かう可能性が高い。地方自治体への強制力はないものの、基本的には国・地方揃って早期の事業執行を行っていくということになるだろう。

 GDPベースの公共投資は15年7-9月期、10-12月期に2四半期連続で減少し、16年1-3月期も横ばい程度にとどまったとみられている。もっとも、先行指標である公共工事請負金額が4月に急増し、今後も前倒し執行の効果顕在化が見込まれるとなれば、4-6月期、7-9月期の公共投資は増加に転じる可能性が高いといえるだろう。

前倒し執行の効果が顕在化?
(画像=第一生命経済研究所)

下期は補正予算で手当てか

 もっとも、予算額自体が変わらないなかで前倒し執行をしてしまえば、当然のことながら下期の予算が足りなくなる。前倒しとその反動という形で、自然体でいけば公共投資はいずれ急減するわけだ。

 もちろん政府はそうした事態は避けるだろう。前倒しを指示したということは、下期については補正予算で手当てするといっていることと概ね同義である。2次補正の策定は規定路線であり、その中にはある程度の量の公共投資も確保されるということになるだろう。その是非はともかく、補正予算の効果によって下期の公共投資急減は回避され、高水準の投資が維持されるという形になるのではないだろうか。

 もっとも、目先公共投資の増加が見込まれるとはいえ、これで景気の方向性が変わるとまではいかない。公共投資はGDPの4%程度を占めるに過ぎず、多少増えた程度では景気への影響は限られる。個人消費や設備投資、輸出といったGDPの主要需要項目がそろって力強さに欠けるなか、公共投資の下支えだけではどうしても限界がある。景気の牽引役不在の状況は変わらないとみられ、当面、景気は停滞感が強い状況が続くだろう。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 経済調査部
担当 主席エコノミスト 新家 義貴