●民間企業の2016年夏のボーナス支給額を前年比▲0.6%(支給額:35万5千円)と予想する。夏のボーナスとしては2年連続の減少となるだろう。
●連合の調査によると、今年の春闘における一時金の妥結結果は昨年をやや上回っている。企業によってマチマチではあるが、ある程度以上の規模の企業でみると、夏のボーナスの悪化は避けられる可能性が高い。下期に急減速したものの、15年度を通じてみれば小幅とはいえ増益が確保できる見込みであることが影響したのだろう。
●一方、懸念されるのが中小・零細企業である。中小・零細企業は組合組織率が非常に低く、労使交渉自体が実施されないことが多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。その点、足元の企業業績が悪化していることは大きなマイナス材料だ。海外景気の減速や内需の低迷持続、円安効果の一巡等を背景に、15年10-12月期の経常利益は前年比▲1.7%と、2011年10-12月期以来の減益に転じた(法人企業統計ベース)。16年1-3月期も厳しい状況が続いたとみられ、15年度下期の経常利益は悪化した可能性が高い。こうした企業業績の悪化が16年のボーナス支給額を抑制するとみられる。加えて、16年入り以降、景気の先行き不透明感が増していることもボーナスの抑制に繋がる可能性があるだろう。今年の春闘における賃上げ交渉では中小企業が比較的健闘したといわれているが、組合が存在しない多くの企業では、直近の業績悪化の影響を強く受ける形で相対的に厳しい結果になる可能性が高い。こうした中小・零細企業の下振れを主因として、16年夏のボーナスは小幅ながら減少すると予想する。
●今夏もボーナスの増加が期待できないことは、今後の個人消費にとって痛手だろう。加えて、春闘でのベースアップが昨年を下回る上昇率にとどまったことからみて、所定内給与も昨年から伸びが鈍化する可能性が高い。原油安を背景に物価の下落が見込まれることは下支えになるものの、実質賃金の伸びが15年から加速することは難しいだろう。先行きの個人消費も目立った回復は見込まれず、停滞感の強い状態が続く可能性が高い。
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 新家 義貴