第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名を対象に、就労や社会参加に対する意識を明らかにするためにアンケート調査を行いました。この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。

 本リリースは、ホームページ(URL:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/ldn_index.html )にも掲載しています。

≪調査結果のポイント≫

子育て分野で働きたいか
● 約3人に1人が、現在もしくは将来的に子育て分野で働きたいと思っている。その傾向は若い年代ほど高い。

子育て分野で働くにあたって希望する就労先
● 子育て分野で働くにあたり希望する就労先は、民間企業が53.6%、住民参加型の地域活動が46.4%。

子育て支援員の認知度
● 「子育て支援員」について、「聞いたことがある」人は36.4%。年代が高い人の方が認知度が高い。

子育て支援員として働きたいか
● 子育て支援員として働くことに前向きである人は約3人に1人。若い年代の人ほど、前向きに考えている。

☆本リリースは、当研究所から季刊発行している『ライフデザインレポート』Winter 2015.1をもとに作成したものです。当該レポートは、下記のホームページにて全文公開しております。

≪調査実施の背景≫

 2015 年4月から子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」)が施行され、保育事業の拡大が図られます。そのため保育人材の確保が重要な課題となっており、保育士確保のための取組が強化されています。しかし保育士のみでは必要量を満たせないことから、子育て分野で働くことに関心のある地域住民に必要な研修を提供し、研修を修了した人を「子育て支援員」と認定、保育従事者等として活用する制度が新制度と共に創設されることとなりました。

 これによって、地域の子育て世代のために役に立ちたいという住民の力を活用することで、子育てを住民相互が支える仕組みを確立し、潜在的な女性労働力を引き出しながら地域における子育て機能を向上させ、子育てしやすい社会を目指そうとしています。

 こうした中、当研究所では、子どものいる専業主婦を対象に「女性の就労・社会参加に関するアンケート調査」を実施し、子育て分野の仕事への就労意向、並びに「子育て支援員」についての関心度等についての意識をたずねましたので、その結果を紹介します。

≪調査概要≫

1. 調査対象  30~69 歳で首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と近畿圏(京都、大阪、兵庫)の都府県に住み、既婚(有配偶)で子どもをもつ無職の女性1,000 人(30 代、40 代、50 代、60 代それぞれ250 人ずつの割付をおこなった)

2. 調査方法  インターネット調査(株式会社クロス・マーケティングのモニター)

3. 調査時期  2014 年10 月

4. 調査対象の属性

首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)
首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

子育て分野で働きたいか

約3人に1人が、現在もしくは将来的に子育て分野で働きたいと思っている。その傾向は若い年代ほど高い。

首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 子どものいる専業主婦に、子育て分野で働きたいかをたずねた結果が図表1です。子育て分野で働きたいと回答した人は全体の12.3%でしたが、「現在はできないが、将来的にこの分野で働きたい」(22.2%)を合わせると、3割を超える人が前向きな回答でした。

 年代別にみると、年代が若いほど「この分野で働きたい」と「現在はできないが、将来的にこの分野で働きたい」を合わせた『子育て分野で働く意向のある人』(以下同様)の割合が高いです。中でも30 代では3割以上が「現在はできないが、将来的にこの分野で働きたい」と回答しています。30 代の多くは末子がまだ未就学児であることから、子どもがもう少し大きくなったら、この分野で働きたいと思っているのでしょうか。

 居住地の人口規模別にみると、東京23 区や政令指定都市、人口30 万人以上の市では、『子育て分野で働く意向のある人』の割合が4割近くにのぼります。一般的に人口規模の大きい地域の方が、待機児童が多いなど子育て支援に対するニーズが高いと考えられ、そうした地域特性を察して、人口規模が大きい地域の住民は、子育て支援充実の必要性を実感し、子育て分野で働くことに前向きな人が多いのかもしれません。

子育て分野で働くにあたって希望する就労先

子育て分野で働くにあたり希望する就労先は、民間企業が53.6%、住民参加型の地域活動が46.4%

首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 子育て分野で「働きたい」と「現在はできないが、将来的にこの分野で働きたい」と思っている人に、子育てにかかわる仕事をするにあたり、どのような組織で働きたいかをたずねました。

 現状、子育て分野の主な就労先として、一つの選択肢は雇用契約に基づく民間企業(以下「民間企業」)などがあり*1、もう一つは助け合いの理念に基づく、社会福祉協議会、ファミリー・サポート・センター、NPOなどの住民参加型の地域活動(以下「地域活動」)があります。

 調査の結果、全体では「民間企業」が53.6%、「地域活動」が46.4%となっています(図表2)。民間企業の方が多いものの、あまり大きく差が開いていません。子育てにかかわる仕事をするにあたり、地域活動に参加して働きたいという人も、民間企業と同じくらいの割合となっています。

 年代別にみると、30 代と40 代は子育てにかかわる仕事をするにあたり、民間企業で働きたいと回答した人が6割以上を占めていますが、50 代と60 代では地域活動に参加して働きたいと回答した人の方が多い結果となっています。

*1 この他にも雇用契約に基づく子育て分野の就労先として、社会福祉法人や学校法人等がありますが、本調査では、このうち民間企業に絞ってたずねました。

子育て支援員の認知度

「子育て支援員」について、「聞いたことがある」人は36.4%。
年代が高い人の方が認知度が高い。

首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 本アンケート調査では、「一定の研修を実施し修了した人を『子育て支援員』として認定し、小規模保育・家庭的保育・一時預かり・事業所内保育の保育従事者等とする事業が始まる予定」ですと説明した上で、この「子育て支援員」について聞いたことがあるかをたずねました。その結果、全体では「聞いたことがある」が36.4%、「聞いたことがない」が63.6%であり、「聞いたことがある」人は4割弱となっています(図表3)。

 年代別にみると、「聞いたことがある」への回答割合が最も高いのは60 代の46.0%であり、次いで50 代の42.8%です。これら50 代以上に比べて40 代以下の「聞いたことがある」人の割合は低く、40 代では約2割に留まっています。年代が高い人の方が認知度が高いです。

 居住地の人口規模別にみると、東京23 区、政令指定都市、人口30 万人以上の市に住んでいる人では「聞いたことがある」に約4割が回答しており、人口30 万人未満の市、及び町村に住んでいる人よりも認知度が高い傾向があります。

子育て支援員として働きたいか

子育て支援員として働くことに前向きである人は約3人に1人。
若い年代の人ほど、前向きに考えている。

首都圏・近畿圏在住の子どものいる専業主婦1,000 名に聞いた 『女性の就労・社会参加に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 子育て支援員についての関心度と就労意向をたずねた結果をみますと、全体では「関心があり、子育て支援員としてすぐにでも働きたい」(以下「すぐにでも働きたい」)の回答割合は3.2%と少ないものの、「関心があるが、もう少し情報を得てから働きたい」(以下「情報を得てから働きたい」)の31.2%を合わせると、子育て支援員として働くことに前向きな人が約3分の1を占めています(図表4)。

 年代別にみると、「すぐにでも働きたい」への回答割合は、いずれの年代も5%以下と低いものの、「情報を得てから働きたい」と回答した人の割合は年齢が若い人ほど高いです。特に30代は「すぐにでも働きたい」と「情報を得てから働きたい」を合わせると、半数近くが、子育て支援員に関心があり、働くことに前向きです。反対に、50代以上は「関心がない」人が約3分の1を占めています。

 子育てにかかわる仕事への就労意向との関連をみますと、「この分野で働きたい」人では20.3%が「すぐにでも働きたい」と答えています。「情報を得てから働きたい」(71.5%)を合わせると、前向きな回答割合が9割以上です。子育て分野で働きたい人は、子育て支援員として働くことにも前向きな人が多いようです。

≪研究員のコメント≫

 以上、調査結果により、子どもがいる専業主婦のうち、主に30 代、40 代で子育て分野で働くことに前向きな人が少なくないことが明らかとなりました。また、こうした人を中心に「子育て支援員」に関心のある人が多くいます。2015 年4月の新制度スタートにあたり、保育事業の拡大に対応するために幅広い人材の確保が求められている中、一定程度期待できる担い手の存在が浮き彫りになりました。こうした女性労働力を地域の子育て支援充実のために活かすことが重要です。そのために何が必要でしょうか。

 一つは、子育て支援員の制度化にあたり、まずはその認知度向上の取組が必要です。特に30 代、40 代では子育て分野で働くことに前向きな人が相対的に多いにもかかわらず認知度が低いことから、こうした層への積極的な普及活動が求められます。

 もう一つは、保育事業の運営主体は民間企業のみならず、地域住民による非営利活動など、多様な事業主体があることの周知も必要です。未就学児の子どもを育てながらも子育て分野で働くことに前向きな人も少なくありません。最近では、子どもを預けたい、あるいは預かってもいいという親同士が知り合いになり信頼関係を築いた上で、お互いに子どもを預け合うなどの相互扶助的な子育て支援活動も広がりつつあります。子育て分野で働きたい人が、自分のライフスタイルに合った働き方ができるよう、地域内で子育て支援をおこなう団体・組織等についての情報提供を充実させることも、子育て支援の充実のために重要です。

 このようにして子育て分野で働きたい人の力を引き出し、活用できるような仕組みづくりを行うことで女性の就業が促進されれば、国が目指している「すべての女性が輝く社会づくり」にも一歩近づくのではないでしょうか。(提供:第一生命経済研究所

 

(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)

㈱第一生命経済研究所 ライフデ ザイン研究本部
研究開発室 広報担当(津田・新井)
TEL.03-5221-4771
FAX.03-3212-4470
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