1月17日(水)、東京・渋谷で、「INCIR(インサー)プロジェクト」のメディア向け説明会が行なわれた。同プロジェクトは、インサー〔株〕が国内外の大手企業や大学とのオープンイノベーションと産学連携によって進める取組みで、スマホによる「タッチ決済」を事業化するものだ。

キャッシュレス決済,INCIRプロジェクト
(画像=THE21オンライン)

インサーは2017年3月の設立で、2013年6月にシンガポールで設立されたGooute Pte. Ltd.の子会社。

インサーとGoouteのCEOを兼任する横地俊哉氏は、説明会の中で、キャッシュレス決済を(1)カードを通す(磁気ストライプ)、(2)カードを挿す(接触IC)、(3)カードやスマホをタッチ(非接触IC)、(4)QRコードを読み込む(コードスキャン)、の四つに分類した。(3)を、インサーでは「タッチ決済」と呼んでいる。

クレジットカードによる決済は、(1)または(2)が多い。Suicaなどの交通系カードや「おサイフケータイ」は(3)だ。日本は、他の国よりも(3)が広く普及しているのが特徴である。(4)は、中国など新興国を中心に普及しており、昨年、日本でも大手企業が相次いで参入したことで大きな話題となった。

新興国で(4)が普及しているのには、背景がある。スマホでタッチ決済をするためには、NFCと呼ばれる近距離無線通信にスマホが対応していなければならないが、新興国では非対応の格安スマホが圧倒的なシェアを占めているのだ。

一方、先進国では、Apple PayやSamsung Payなど、(3)のサービスが広がっているが、やはり日本とは状況が違う。NFCにはいくつかの規格があり、国際的に主流なのはTypeA/B、日本で主流なのはFeliCaと、規格が異なっているのだ。「おサイフケータイ」が海外で使えないのは、このためだ。国際ブランドのクレジットカード会社は、FeliCaではなく、NFC(TypeA/B)に対応している。

「INCIRプロジェクト」が事業化を目指しているのは、NFCに対応していない格安スマホを、『INCIR CARD』によってNFC(TypeA/B)に対応させ、タッチ決済に使えるようにするサービス。INCIR CARDにはNFC(TypeA/B)のアンテナとセキュア・エレメント(NFC通信の安全性を保証するチップ)が入っており、スマホに差し込むタイプの『INCIR SD CARD』と、スマホとBluetoothで通信するタイプの『INCIR SMART CARD』がある。

キャッシュレス決済,INCIRプロジェクト
(画像=THE21オンライン 『INCIR SD CARD』『INCIR SMART CARD』の他、スマホを使わずにそのままタッチ決済ができる『INCIR SINGLE CARD』も。『INCIR CARD』は、日本では今年秋から利用できる予定)

狙っている市場は、格安スマホがシェアの大半を占めているアジア、そして世界だ。日本でも格安スマホの市場は広まってきており、そのユーザーに向けてサービスを展開するが、既に広く利用されている「おサイフケータイ」やiPhoneと戦うつもりはないと横地氏は話した。

インサーのサービスが世界中に広まると、今はQRコード決済が一般的な国でも、スマホによるタッチ決済が普及するかもしれない。そうなったとき、日本のQRコード決済は、またFeliCaを使ったタッチ決済は、どうなるのだろうか。

THE21編集部(『THE21オンライン』2019年01月17日 公開)

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