米中貿易協議の進展や半導体投資復調への期待を背景に、昨年にかけ大きく調整した電機や機械セクターの銘柄が一斉高の様相を呈している。半導体や電子部品に加え、FA(ファクトリー・オートメーション=工場自動化)機器などの資本財メーカー株の物色が加速する中、先行する安川電機(6506)やツガミ(6101)は既に長期線の200日移動平均線を大きく上抜いた。ここへきて勢いを増す後発組の中にも、まだまだ有力な出遅れ銘柄が残っている。

株式新聞,電機・機械株
(画像=PIXTA)

●山洋電――5Gけん引局面意識、中・長期で妙味大

山洋電気(6516)はサーボシステムなどのFA機器や、通信機器用の冷却ファンを主力とする。株価は昨年5月に付けた1万570円を起点に同年末には3045円まで調整。下げ一服後は4000円前後の低位で横ばいを続けていたが、ここへきて相場つきに変化がみられる。

サーボシステムに減速感があるものの、当面の業績影響は株価に織り込まれた。一方、冷却ファンに関しては商用化が近づく5G(次世代高速通信システム)絡みの需要が膨らみそうだ。情報処理量が膨大になる5Gインフラの発熱対策は重要度が高い。同社はこのニーズを取り込むポジションにいる。また、半導体投資の復調も好材料となる。

市場では早晩、本格的な業績回復が期待される同社の来2021年3月期への関心が高まるだろう。PER、PBR(株価純資産倍率)ともに割安感が残り、中・長期で狙えるタイミングだ。

●タカトリ――半導体復調が追い風、医療機器も関心根強く

マルチワイヤーソーなどの半導体製造装置を手掛けるタカトリ(6338・(2))は、足元の物色トレンドに乗る動きをみせつつある。また、省人化投資や、新規事業の医療機器分野でも注目度の高い銘柄だ。

同社は半導体の前工程で基板のシリコンを切断するワイヤーソーのほか、ウエハーの表面保護テープ張り付けや紫外線照射といった後工程装置も展開。一時低迷していた半導体投資に再開の兆しが出ている点は、株価を押し上げる要因。また、自動化機器も強みのある縫製業の設備更新需要が見込まれる。

一方、昨年3月に製造販売商品を国内で取得した「M―CART」は、肝硬変の人などが併発する「難治性胸腹水」の外来治療を可能にする画期的な装置。試験的な販売と臨床調査を続けており、開花が待たれる状況。事業環境の改善期待と相まって、改めて関心が向かう可能性がある。株価は上値を押さえる26週移動平均線を突破し、200日線にも接近した。

●NF回路――IoTや蓄電池に的、下落トレンド突破へ

電子計測器や電源機器を手掛けるエヌエフ回路設計ブロック(=NF回路、6864・JQ)は、量子コンピューターにも活用される超低雑音差動増幅器などの電子デバイス分野で、航空宇宙関連市場向けを中心に売上を伸ばしている。蓄電システムや産業用電源も好調に推移し、前19年3月期の連結営業利益は前々期比で18%の拡大が見込まれている。

自動運転やIoT(モノのインターネット)といった成長市場にも深く食い込む同社は、今期も一段の収益増が期待される。さらに、国内で太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が今年から切れ始めることに絡み、蓄電システムの需要拡大が期待される点も見逃せない。

日本能率協会総合研究所が直近公表した予測によれば、家庭用蓄電池の市場規模は23年度に1200億円と、19年度より3割程度増える。同社はAI(人工知能)搭載品で商機をとらえる。下落トレンドの上値抵抗線に差し掛かった株価の本格反転を先取りしたい。(4月5日株式新聞掲載記事)

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