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飲食店開業を志す人の中でも、特に「カフェ開業」を目指す人の割合が増えている。カフェはレストランや居酒屋などと比べると提供するメニューも非常にシンプルで、長期間の修行も不要。厨房設備も比較的安価に抑えられるイメージがあるので開業を志す人が多いのだろう。ここでは、実際にカフェを開くために必要な資金と資格について詳しく解説していこう。

カフェを開業する際にかかる「物件取得費」

物件取得費とは、物件を契約する際に必要となる費用を総称したものだ。具体的には保証金、礼金、仲介手数料など。もちろん、これはカフェに限らずどんな業態でも必要となるものだが、非常に重要なのでしっかりと頭に入れておこう。

仮に、保証金が家賃の6か月分、礼金が2か月分、仲介手数料が1か月分、オープンまでの「空家賃」を2か月分とすると、物件取得費総額としてはおよそ家賃の11か月分程度になる。家賃20万円の物件を契約する場合には、220万円以上の資金が必要となる計算だ。保証金は、立地によっては家賃の10か月分かそれ以上になることもある。また、事業用物件には家賃に消費税が課税される点にも注意が必要だ。

ちなみに、カフェという業態は物件オーナーから歓迎されやすい傾向にある。理由としては、建物のイメージが良くなること、騒音や排煙が少ないので近隣からのクレームが出にくいことなど。早めに事業計画書を作成し、物件のオーナーや不動産業者にプレゼンできるように準備をしておこう。事業への賛同が得られれば、家賃交渉もしやすくなるはずだ。

カフェを開業する際にかかる「内外装工事費」

内外装工事費は、開業資金の中でも最もウエイトの大きな部分となる。カフェを開きたい人にとっては、特にこだわりたいところだろう。ただ、提供するメニューやデザイン等によってかなり差が出ると思った方がいい。目安としては、1坪あたりの工事費は30~60万円程度。10坪の店だと300~600万円、20坪の店だと600〜1200万円くらいになることが多い。

近年はシンプルな内装が受けているので、本格レストランやバーなどに比べて内装費自体はかなり削減しやすいはず。しかし、目に見えない部分(ガスや水道工事)にもかなり資金は必要となる。以前の店舗がどんな業態だったかによって、基礎工事の料金も変わってくるだろう。飲食店だった場合には工事費は抑えやすいが、事務所などだった場合にはコストが高くなりやすい。

とにかく重要なことは、あらかじめ予算を明確に決めておくこと。ちょっとした仕様変更で金額が大きく膨らむ可能性もあるので、着工前の見積もりではギリギリまで金額を抑えておきたい。予算をオーバーしてしまうと、開業後の資金繰りが非常に厳しくなる。工事を自ら行うことで費用を削減した例も多くあるので、施工業者ともよく相談して予算に収まるように工事を進めよう。

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カフェを開業する際にかかる「厨房設備費」

カフェの場合、パンケーキやサンドイッチ、ハンバーガーなどの専門店として営業するパターンが多い。専門店の場合は、厨房設備の種類が少なくて済むのでコストは抑えやすい。あらかじめ提供するメニューを絞り込んだ上で、厨房設備のプランを決めていくのがよいだろう。

コスト削減のために家庭用製品を使用するオーナーも多いが、あまりおすすめできない。家庭用冷蔵庫を使用した際、ドアの開閉回数が多すぎて中の食材が冷えず、冷却器がすぐに故障してしまった例や、ドア自体が壊れてしまった例もある。軽食を扱う場合でも、使用頻度が多いものは基本的には業務用製品を使用したいところだ。

業務用でガスコンロ、製氷機、冷蔵庫、冷凍庫、シンク、食器棚などを新品購入すると50〜100万円程度はするだろう。さらに、オーブンやフライヤー、食洗機などを購入すると150〜200万円程度になることも。設備費を下げる方法として、中古品を購入することなども挙げられるが、予想外にメンテナンス費がかかる場合もあるので、前述のようにメニューをしっかりと絞って、機器の点数を減らしておくのがよいだろう。

カフェを開業する際にかかる「家具・食器備品代」

内装費と同様に、こだわればこだわるほどコストが高くなる部分だ。数10万円するソファをいくつか購入すると、それだけで100万円くらいになってしまう。かと言って、量販店で購入しても、オリジナル性がなく耐久性もあまりよくない。

家具店によってはオリジナルの家具を作ってくれる店もあるので探してみてはどうだろうか。テーブルの高さを変えてくれたり、椅子の革を張り替えてくれたりする。また、既製品に自分で塗装するという手もある。食器や備品に関しても、新品だけにこだわらず、骨董市やネットオークションなどを利用してもよいだろう。

こちらもあらかじめ予算を決めておくことが重要だが、20席程度のカフェであれば100〜200万円程度は必要だ。ひとつひとつは大きな金額でなくても合計するとかなりの額になるので、開業初期に無理して全て揃えようとせず、徐々に増やしていくのもよいだろう。

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カフェを開業する際にかかる「宣伝費」

ホームページ制作費、ショップカードやチラシのデザイン、印刷費で10万円程度はみておこう。もちろん、無料で作成できるホームページサービスやSNSもあるので、もっと削減できる可能性はある。最初は無料でできる部分からスタートして、売上が上がってきたらグルメサイトなどに掲載するという流れでもいい。

ただし、カフェはブランディングが大切なので、ロゴデザインなどには力を入れるべきだろう。看板のロゴだけでなく、テイクアウト用の容器や手提げ袋などの制作費がかかる場合もある。一目でどんな店かわかるロゴや店名を考えておきたいところだ。近年はクラウドソーシングが盛んになり、低価格でよいデザインを依頼できるようになったので、ぜひ活用してほしい。

カフェを開業する際に必要な「運転資金」

運転資金は、経営を続けていく上で最も重要なものだ。現金がなければ仕入れもできないし、従業員への給料を払うこともできない。廃業の理由のほとんどが資金不足であることを考えると、できるだけ多くの運転資金を残しておきたい。

目安としては、家賃のおよそ10か月分程度が理想となる。家賃10万円の場合は100万円。20万円の場合は200万円ほど。これでも赤字が続くと6か月程度しか持たない。前もって必要な運転資金を計算しておき、別口座などに貯蓄しておくことをおすすめする。内装や家具の仕様変更があっても絶対に運転資金は減らさないという心構えが大切だ。

カフェの開業資金、全体の相場

ここまでをふまえて、開業資金の総額を計算してみよう。あくまで一例だが参考にしてほしい。

■中規模カフェ(15坪、家賃20万円)の場合
・物件取得費 220万円
・内装工事費 600万円
・厨房設備 200万円
・家具食器 150万円
・宣伝費 10万円
・運転資金 200万円
合計1380万円

■小規模カフェ(10坪、家賃10万円)の場合
・物件取得費 110万円
・内装工事費 300万円
・厨房設備 100万円
・家具食器 50万円
・宣伝費 5万円
・運転資金 100万円
合計665万円

思ったよりも高いと思った人もいれば、安いと思った人もいるだろう。繰り返しになるが、大切なのは、自分でしっかりと予算を決めておくこと。そして必ず予算内に抑えることだ。上の例はあくまで一例なので、もっと資金をかけることもできるし、削減することも可能だ。すでに経営がスタートしているつもりでシビアに計画を練ってほしい。

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カフェ開業に必要な資格と申請

最後に、カフェ開業に必要な資格と申請について簡単にまとめておこう。

■食品衛生責任者
各都道府県の食品衛生協会が開催している公衆衛生学、食品衛生学など計6時間の講習を受講すれば取得できる資格。受講費は1万円ほど。開業する3か月くらい前までには取得しておきたい。1~2か月先まで予約が埋まっていることもあるので、早めに確認しておこう。

■防火管理者
日本防火・防災協会が全国各地にて講習を開催している。収容人数が30名以上の飲食店を開業する場合には取得が必要。収容人数30名以下の場合は不要とされている。延べ面積が300平方メートル以上の場合の甲種講習は2日間で約10時間の講習。延べ面積300平方メートル未満の乙種講習は、約5時間の講習となる。

■飲食店営業許可申請
工事完了の2週間から10日前を目安に保健所に申請しよう。その際、店舗の見取り図、手数料(東京では18,300円)、食品衛生責任者手帳などが必要になる。名称の似たもので「喫茶店営業許可申請」というのもあるが、こちらは「酒類以外の飲物、または茶菓を客に飲食させる営業」なので、カフェの場合もほとんどが飲食店営業許可申請になる。

さて今回は、カフェ開業に必要な資金や資格について詳しく紹介した。カフェの開業を目指している方は、上で紹介したことを参考に事業計画を練ってみてほしい。(提供:Foodist Media

執筆者:大槻洋次郎