★マネーがまた株に舞い戻る。 現地5日の米国株市場は、続伸。 ディフェンシブ系の多いダウ公共株指数はたちまち上場来高値更新ですから、マネーの循環は再び、株に舞い戻ってきているようです。セクター的には、景気敏感とディフェンシブの両方が底上げとなり、在庫増大を背景に下げた原油価格が資源株を押し下げています。原油価格下落は、関税引き上げによる物価上昇懸念を相殺する効果を持っています。
★主要指標の位置。 昨晩は、ダウ工業株も200日線奪回。これで、200日線上に浮上したのは、このほかナスダック、S&P500、半導体SOX指数、ジャンクボンドと5つになりました。いずれも今度は25日線奪回ができるかが課題になってきています。 まだ、ダウ輸送株指数、ラッセル2000小型株指数といったところは奪回できていません。
★利下げ観測続く。 前日、パウエル連銀議長の利下げ示唆のインパクトがまだ続いているようです。 くわえて、ADP民間雇用調査発表の雇用統計ですが、予想18万人増加に対して、わずか2万7000人増加。やはり雇用統計というものは、冬場に強く、夏場には軟化するという季節性があり、文字通りこの傾向となっています。 市場は、この季節性は度外視して、雇用状況の軟調さをもって、利下げ観測の裏付けと見ているようです。 ただ、米10年国債利回りはこれで三日、底這い状態となり、低下が止まってきています。弱い経済指標がでても、あまりそれに反応しなくなってきているということが言えそうです。正式な当局発表の雇用統計は明日の夜ですが、これも弱めで出てきますと、むしろ長期金利は出尽くしで上昇に転じる可能性も考えておいたほうがよいでしょう。 国債が売られるということです。その場合は、国債→株への資金還流が一段と進むことになるかもしれません。 昨晩発表の非製造業ISM指数(センチメント指標)は、いずれも予想を上回る内容となっており、米国ファンダメンタルズに対するセンチメントは改善していることがわかります。 実際、昨晩発表された、米連邦準備制度理事会FRBが公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、全米12地区ほぼすべてが経済活動の拡大を報告しています。 引き続き、ファンダメンタルズ堅調にして、利下げ観測という矛盾した(過剰な景気刺激策)を背景に、株への資金還流が期待できそうです。
★リスク認識は低下。 先述通り、最大のリスク指標のジャンクボンドが200日線を奪回している一方、プットの状況を背景としたVIX(変動、恐怖)指数は、昨晩200日線を割り、さらに25日線を割り、16.09まで大きく低下。残るは50日線だけとなってきています。 主要株価指数が、直近では安値更新をしていた状況だったにもかかわらず、このVIX指数は5月9日時点の水準にまで届かず反落してきたことになるわけで、VIX指数の上昇トレンドは今後続く見込みがかなり後退したといってよいでしょう。 市場のリスク認識は明らかに低下してきています。
★次の期待イベントは、中国。 連銀が早々と利下げ示唆をしたということは、予想しなかっただけに、相場にはかなりのインパクトがありました。 では次のイベントスケジュールはなんでしょうか? やはり市場がずっと気にしている米中協議の行方です。具体的には、両国間の交渉です。5月10日以来、一度も交渉が行われていなかったのですが、6月4日の天安門事件30周年を大禍なく経過したため、国内の反米強硬派(政治局)を習近平体制が押さえ込めたとすれば、早晩協議再開に向けての動きが出てくるはずでしょう。 二段階のはずです。第一段階は、協議再開の材料(日程の目途がつくでしょう)。第二段階は、協議妥結の材料。この第二段階では、出尽くしになります。
★相場底入れ形成。 一応、日経平均、ダウ輸送株指数ともにRSIが逆行現象となったので、底入れ形成になったと考えられます。 もちろん、正式には日経平均で言えば、5月20日の終値21304円を抜かなければ、テクニカル上は底入れ完了とはなりません。 短期的には、週足チャートにして、前週の一本のロウソク足の実体線(始値~終値)の中間値、20874円を今週抜けば、いわゆる「切り込み線」が完成します。 まだ昨日の時点では終値20776円だったので、この切り込み線は中途半端なままです。
★戦略方針: 個別主体のモデルの場合は、引き続きフルインベストメント。個別銘柄のメインテナンスに終始します。 日経CME円建ては20790円、日経平均先物夜間取引も同じ水準です。 昨日の現物指数の終値が20776円でしたから、さして上昇しているわけでもなさそうです。しっかりていどというところでしょうか。 問題は物色です。昨晩の米国では、景気敏感(シクリカル)、ディフェンシブともに上昇しているので、重点がどちらにあるか不明です。むしろ、ダウ公共株指数の上場来高値更新ということからすると、まだ市場のセンチメントは疑心暗鬼というところでしょうか。 昨日の東京も全体的に底上げしていますが、やはりはっきりしません。 こういう環境下では、中小型株が間隙を塗って有利な展開を続けるのではないかと思います。 一方、【巌流島方式の場合は、引き続き、1357の買い持ちのままです。 一番近い、ドテン反対売買の水準は6週線ですから、21224円です。昨日現物終値からは、400円ほどの上の水準ということです。 今日明日で、到達できない距離ではないのですが、CME先物や夜間取引の気配を見ている限り、なかなかシグナル点灯にまで到達するのは難しいような気がします。今週は、このまま1357ホールドで逃げ切ることになるような気がします。 以上(提供:Investing.comより)
著者:増田経済研究所 松川行雄