クルマを単なる「耐久消費財」としてではなく、「資産」として捉えることを提案するこの連載。前回は中古車市場で「値落ち」しづらいと言われるメルセデス・ベンツのゲレンデ(Gクラス)について紹介したが、今回は「ワンランク上」というキーワードをもとに話を展開していこう。
ご存じの通り、クルマはメーカーごとにさまざまな車種が存在しており、その中でも排気量や内装、スペックなどによっていくつかのグレードに分類される。たとえば、メルセデス・ベンツの最高級セダンであるSクラスであれば、メーカー希望小売価格(税込)1138万円の「S400d」から「AMG S65 long」(3427万円)まで十数種類にもおよぶ(2019年6月28日現在のカタログより)。
では、この中で最もリセールバリューの強いモデルは何か? 紹介制の完全予約型商談で高級車を販売しているREGAL MOTORSの照沼拓也社長は言う。
「やはり、AMG(エーエムジー)は根強い人気があります。もともとAMGはレース用自動車のエンジン設計会社だったのですが、現在ではメルセデス・ベンツ内で『メルセデスAMG』として究極のハイパフォーマンスを追求するブランドとして立ち上がっています。エンジンは熟練のマイスターが手作業で組み上げ、その強烈なエンジンパワーと唸るようなエンジン音が人気です。ライバルメーカーのBMWであれば、『Mシリーズ』がこれに該当します。クルマ好きの玄人受けすることに加えて、その希少価値からリセールバリューも圧倒的に強いのです」
ワンランク上という選択肢にもメリットとデメリットが…
一方で、メーカー希望小売価格(税込)が2404万円の「S600 long」はどうか?
「S600もとてもよい車です。一般にS600は自分で運転する車じゃない、とおっしゃる方もいますが、実は中古ではオーナードライバーさんもたくさんいらっしゃいます。AMGがスポーティーさを売りにしているのに対して、S600は究極の乗り心地とラグジュアリーさが売りです。V12エンジン独特の静かで滑らかな加速感、最上級レザーをふんだんに使った高級感は下級グレードとは比になりません。しかしながら中古車のマーケットでは、一般的に大排気量のセダンはメンテナンスや維持費がかかることから敬遠されがち。見た目が同じなら排気量が小さくて維持の負担が少ないものを選択される方が多く、必然と需給の関係から価格が下がります。どうせお金をかけるなら憧れのAMGが欲しいという方が増えてきます。たとえば、「AMG S63 long」(2528万円)と「S600 long」(2404万円)を同じ時期に新車で購入し、同時期に売却したとしても売却価格は購入価格の差額である124万円以上の開きが出てしまいます。クルマを『資産』として考えるなら、“ワンランク上”という選択肢にもメリットとデメリットが存在するわけです」(照沼氏)
それ以外に「ワンランク上」を選ぶことで何か特徴的なことはあるのか? REGAL MOTORSの自動車販売部の清水隆也氏は言う。