フェイスブックが、満を持して仮装通貨(暗号資産)の発行を公表しました。資産により価値が裏付けられている点や、発行体が世界屈指のIT企業である点などが今までの仮想通貨と根本的に異なり、その話題性は比較になりません。

すでにいくつかのグローバル企業が協力を表明していますが、一方で各国銀行や金融当局は警戒感を隠しきれません。

リブラとは何か

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(写真=Ekaphon maneechot/Shutterstock.com)

フェイスブックは6月18日ホワイトペーパーを配信し、新仮想通貨の全貌を明らかにしました。その名はリブラ(Libra・天秤座)で、占星術では公平とバランスを意味します。ホワイトペーパーによると、Libraのミッションは「シンプルで国境のないグローバルな通貨・金融システムとして多くの人たちに力を与えること」です。

リブラはミッション遂行のために、具体的に何をしようとしているのでしょうか。

あらゆる人々に金融アクセスを提供

日本では銀行口座を持っているのは当たり前ですが、世界に目を広げると銀行口座を持たない人は17億人もいて、さまざまな不利益を被っています。アメリカでは、銀行口座を持たない人が利用する給料日前ローンの金利が年400%に達し、出稼ぎで働く移民は仕送りのために高額(平均7%)な送金手数料を負担しなければなりません。

リブラが提供する金融アクセスは、こうした銀行口座を持たない人々にもメリットをもたらす可能性を秘めています。

海外取引の活性化を促すインフラ実現

銀行口座を持っていても、海外送金手数料は決して安くありません。
・送金手数料3,000~4,000円
・受取銀行に支払う受取手数料2,000~3,000円
・中継銀行が絡む場合はさらに2,000~3,000円
・為替手数料(1米ドルあたり0.5円)

海外に1,000ドルを送金する場合、手数料が合計で1万円近くかかります。時間的ロスも大きく、現地口座に着金するまで数日かかるケースも少なくありません。

リブラは、こうした状況をITテクノロジーで一変させるポテンシャルを持っているのです。

フェイスブックユーザー数に裏付けられたポテンシャル

今までの仮想通貨は単に需給関係だけで価格が変動するため、投機的取引の対象になってきました。一方リブラは、準備資産リザーブによってその価値が担保されています。これは、香港市場で採用しているカレンシーボードに類似しており、信頼性の高い仕組みです。

加えて、リブラは24億人のユーザーを擁するSNS企業が発行している点で、今までの仮想通貨とはレベルが違います。フェイスブックユーザーがリブラを使えば、その流通量はあらゆる通貨を凌ぎます。すでに多くのグローバル企業(ビザ・マスター・ウーバー・スポティファイなど)が参加を表明しています。

リブラは既存の金融体制に対する挑戦か

リブラが発表されると、多くの金融関係者はすぐさま反応しました。イングランド銀行カーニー総裁が「高いレベルでの規制が不可欠」とコメントするなど、中央銀行・規制官庁・銀行などはいずれも警戒しているようです。

7月12日の米下院議会証言で、FRB(連邦準備銀行)パウエル議長が「消費者保護・資金洗浄・金融の安定性・個人情報保護などの懸念が払しょくされるまでは前進させるべきではない」と発言、そのあおりを受けて仮想通貨ビットコインは8%も下落しました。

アリペイのような決済アプリは、銀行口座を通じて請求・支払がなされています。一方リブラは、既存の金融システムを一切介しません。リブラの成功は、各国中央銀行を頂点とする体制の外で、新たな通貨網が形成されることを意味します。

銀行は、決済業務をリブラに奪われることを恐れているはずです。中央銀行にとっては、リブラの存在そのものが脅威でしょう。だからこそ、拒絶反応を顕わにしているのです。

来年前半には運用を開始するリブラの準備期間は、すでに1年を切っています。順調にローンチして貨幣流通市場に革命をもたらすのか、それとも金融機関と政府が本気でつぶしにかかるのか、今後の動きから目が離せません。(提供:Incomepress

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