フリーランスという働き方が注目されるようになり、「好きを仕事に」と独立を目指す人も増えている。一方で、受ける仕事の単価が上がらないなどの悩みに直面しているフリーランスもまた少なくない。

本特集では、「ひとり仕事」を実践し、1日4時間労働でも十分な稼ぎを実現する税理士の井ノ上陽一さんにインタビューを行い、フリーランスに起こりやすいさまざまな問題にどのようにして向き合ってきたかを聞いていく。もともと人を雇っていた井ノ上さんは「ひとり仕事」を始めたことによって収入が増えたという。その秘密とは?(取材、文・藤堂真衣)

井ノ上陽一
井ノ上陽一(いのうえよういち)さん
税理士、株式会社タイムコンサルティングのひとり社長。 1972年生まれ。総務省統計局に勤務し、数字の分析方法とITスキルを習得。その後税理士試験に合格し、2007年に独立。スタッフを雇わず、誰にも雇われない働き方を自身で検証しつつ、税理士業やセミナー業、執筆業など多彩な仕事に取り組む。運営ブログ「EX-IT」は月間30万PV。著書に『フリーランスのための一生仕事に困らない本』(ダイヤモンド社)などがある。

「ひとり仕事」に転換し、収入増加

「フリーランスの壁」の超え方#2
(画像=panitanphoto/shutterstock.com,ZUU online)

──スタッフを雇うのをやめ、1人で仕事をされるようになってから、収入に変化はありましたか?

率直に言うと、直接お金につながる仕事=税理士としての案件に関する仕事をしている時間という点では以前のほうが多かったと思います。

ですが、その中には安い仕事もありましたし、案件の量が多いわりに収入が低かった。分かりやすく「時間を使ってお金を得る」働き方と言えますね。収入の変化でいうと、今のほうが多いです。

──案件は減っていても、収入は増えている?

そうです。案件の単価を上げたということが大きな要因ですが、書籍を出したことも影響しています。本はスタッフを雇っている頃から少しずつ書いていましたが、書き上げて出版したのは1人になってから。

印税はそれほど多いということはありませんが、収入がまったくないわけではありません。

また、税理士としてセミナーも開いていました。簿記の基礎や源泉徴収票の読み方、独立支援などをテーマにしていましたが、最近はITやExcelを使った効率化、プログラミングのセミナーも行っていて、仕事のすそ野を広げています。

──案件の単価を上げたいという思いはずっとあったのでしょうか?

そうですね。どうしても時間に追われますし、税理士業は特に案件数を増やさないと収入になりにくい。時間を有効に使うために、単価を上げました。

また、ブログも書く内容を「税理士っぽいもの」から「IT」「時間術」といったテイストのものを織り交ぜるようにして、税務以外のスキルにも値段をつけるようにしていきました。

単価アップのために実践した「ある工夫」

──単価を上げるのが難しい、というのはフリーランスの悩みにも多そうです。

でも、単価を上げて一生懸命やったほうがクライアントにもフリーランサーにもよいはずですよ。