7年連続ベア実施も、伸びは前年から鈍化の見込み

賃金
(画像=Getty Images)

○ 2020年の春闘賃上げ率を2.13%と予測する(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)。19年の春闘賃上げ率は2.18%と、18年の2.26%から伸びを低下させたが、19年についても2年連続で鈍化する可能性が高い。また、賃上げのうち定期昇給部分(1.8%程度)を除いたベースアップでは0.33%になるとみられるが、伸びは19年(0.38%)をやや下回るだろう。

○ 労働需給は引き続き逼迫しており、人手不足感は依然強い。また、消費者物価指数(コア)は消費増税による押し上げもあり、19年度に前年比+0.6~0.8%程度の緩やかな上昇が見込まれている(18年度:+0.8%)。こうした労働需給の逼迫や緩やかな物価上昇に加え、政府からの賃上げ要請もあることから、7年連続でベースアップが実施される可能性が高い。

○ もっとも、賃上げの原資となる企業業績は厳しい状況にある。日銀短観の収益計画によると、輸出の悪化や消費増税による悪影響により、19年度の経常利益は▲6.7%と減益が見込まれている。また、米中貿易戦争への懸念が引き続き強いことに加え、世界景気の減速リスク、消費増税後の消費失速リスク、オリンピック後の景気腰折れ懸念等、下振れ要因は数多く、景気の先行き不透明感は依然として強い。経営側としては、景気の先行き不透明感が強いなかで固定費の最たるものである基本給の大幅な引き上げには踏み切りにくく、前年を上回る賃上げには慎重になるだろう。

○ 賃上げを求める側である労働組合サイドからも強気な声は聞かれない。10月24日に連合が発表した2020年春闘での基本構想では「2%程度」のベースアップを求める方針が打ち出された。この数字は16年春闘以降5年連続で同じであり、少なくとも昨年以上の賃上げを求めようという姿勢は見えてこない。人手不足が社会問題化している上、消費税率引き上げによる負担増の補填という大義名分もある割には控えめな要求に見える。このように、春闘における交渉当事者である労使双方において、賃上げムードは醸成されていない。こうした状況を踏まえると、20年春闘において19年を上回る賃上げ率が実現することは難しいと思われる。

○ 7年連続でベースアップが行われることで、20年度の所定内給与も増加が見込まれる。もっとも、賃上げ率は19年からやや鈍化するとみられ、所定内給与の伸びが加速するには至らないだろう。なお、春闘では、月例給与に加えてボーナスについても交渉が行われることが多い。19年のボーナスは夏・冬とも減少したとみられるが、19年度の企業業績悪化を受けて、20年のボーナスも減少する形で妥結する可能性がある。結果として、20年度も一人当たり賃金は上昇が見込まれるが、19年度と比べると伸びはやや低下しそうだ。消費増税による下押しからの持ち直しが期待される20年度の個人消費だが、所得面からの後押しは期待薄のようだ。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴