新型コロナウイルスによる感染症の拡大が、経済に大きな打撃を与えている。特に観光業界や外食業界に与える影響は、かつてない規模だ。一方で、新型コロナウイルスによって株価が上昇している銘柄もある。

マスク関連:感染拡大予防でマスク需要が全国的に急拡大

新型コロナウイルス
(画像=Ned Snowman/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの感染拡大とともに、マスク需要が一気に伸びた。ドラッグストアやコンビニ、スーパーマーケットではマスクが慢性的に不足し、マスクを買い求める人で連日朝から長蛇の列ができている店舗も少なくない。

世界保健機関(WHO)は、「感染予防にマスク着用は不要」と発表した。そのため、需要は今後落ち着いていくという見方もある。しかし、マスクの着用は第三者への飛沫感染を予防する効果があることは否定できない。新型コロナウイルスが収束するまでは、やはり需要は高止まりするだろう。

マスク製造も手掛ける重松製作所の株価は、2019年後半は700円前後で推移していたが、2020年に入ってから一時2,000円を超える急騰を見せた。3月6日時点でも1,217円と、昨年に比べて高値を維持している。

EC・デリバリー関連:自粛ムード拡大や学校の臨時休校で屋内消費銘柄が急騰

最も感染者数が多い北海道が「緊急事態宣言」を出すなどして外出の自粛ムードが広がったこともあり、一部地域ではEC(電子商取引)や宅配・デリバリーの需要が伸びている。このようなサービスを利用すれば、人との接触機会を減らすことができるからだ。

日本では、2月27日に安倍首相が小中高校などに臨時休校を要請した後、出前サイトの出前館の株価が一時17%も急騰した。

中国では、新型コロナウイルスによる感染拡大を防止するため、自動運転車を使って商品を届けるサービスが始まった。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を機に、配送業界ではイノベーションが加速するかもしれない。

テレワーク関連:在宅勤務拡大に伴い、ビデオ会議システムなどに注目

新型コロナウイルスの感染は特に人が多い閉鎖空間で起きやすいとされているため、通勤で満員電車や混雑したバスに乗ることは大きな危険を伴う。出勤した後に職場で多くの人と接することも、感染リスクの一つと言える。これを受けて、NTTグループやKDDI、ソフトバンク、資生堂、三菱商事などの大手企業が次々と従業員に在宅勤務(テレワーク)を命じている。

在宅勤務のために、新たにテレビ会議システムやアプリをパソコンにインストールした人も少なくないはずだ。この状況の中、テレワーク関連サービスが注目を浴びている。たとえば、ビデオ会議ソフトウェア開発の米Zoomの株価は2020年1月2日の終値が68米ドルだったが、2020年2月28日の高値は121米ドルを記録している。

ゲーム・エンタメ関連:自宅で楽しめるコンテンツサービスの関連銘柄が好調

新型コロナウイルスの感染を防ぐため、人々が不要不急の外出をしなくなるということは、それだけ家にいる時間が長くなるということだ。安倍首相が小学校と中学校、高校の一斉休校を要請したこともあり、子どもが家にいる時間も増えた。

すると、家の中で動画を見て過ごす時間が増える。この騒動の中、新たなユーザーを獲得した月額制の動画・映画配信サービスやスマホゲームも少なくないだろう。

実際に、動画・映画配信サービスの米Netflixの株価は上昇している。2020年1月2日の終値は329米ドル、新型コロナウイルス感染拡大後の2020年3月4日の終値は383米ドルだ。

新型コロナウイルスを期に新たな潮流も?

製薬業界やバイオテクノロジーなどの医療業界においては、新型コロナウイルスのワクチン開発関連企業の株価が急騰している。たとえば、日本のバイオ製薬企業アンジェスは大阪大学との共同開発を発表した後、株価がストップ高となった。

感染症の収束とともに、一時的な需要増加や株価上昇は落ち着くだろう。新型コロナウイルスを機に、社員が在宅で業務を行う「テレワーク」のような、これまでの常識にとらわれない動きが広がり、その潮流に乗って一気に事業を拡大する企業も出てきそうだ。

新型コロナウイルスがいつ収束するかは、まだ予測できない。企業は、しばらく新型コロナウイルスに翻弄される日々が続くだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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