FRBが新たに景気刺激策を打ち出したことを背景に、米国株式市場は急騰した。一方、米ドルは主要通貨に対して下落した。昨日の主な焦点は米新規失業保険請求件数である。これは米非農業部門雇用者数と同様に注目を集めている。9日の発表によると、新規で失業保険を申請した米国人は660万人となり、予想を110万人上回った。過去3週間の失業者数は、合計して1670万人となった。失業保険の継続受給者は先週比440万人増の750万人となった。

他方、米連邦準備制度理事会(FRB)の発表した景気刺激策は、市場にとってサプライズであった。FRBは、従業員が1万人未満もしくは収益が25億ドル未満の中堅企業や行政向けに、2兆3000億ドルの支援策を打ち出した。具体的には、民間銀行を通じて合計で最大6000億ドルの融資を実施する他、新型ウイルスの感染拡大への対応に追われている州政府や人口の多い都市や郡が発行する債券を直接買い取る。ジェローム・パウエルFRB議長は9日、第2四半期は失業率が一時的に非常に高くなり、景気は弱いものになるだろうと述べた。一般的には、新型ウィルスが一巡した場合、景気は回復へ向かうと見られており、それが下半期であるとされている。しかし、同氏は景気が新型ウイルスに左右されることを認め、米国と世界における景気回復のタイミングは誰にも予測できないとした。9日発表の4月ミシガン大学消費者信頼感指数は過去最大の下落幅となり、8年ぶりの低水準となった。米生産者物価指数も予想を下回って下落した。

カナダでは先月、100万人以上の雇用が失われた一方、OPECによる協調減産への期待感から、米ドル/カナダドルは1.40を割り込んだ。しかし、OPEC諸国は減産の基準値と具体的な削減量をめぐって議論が難航しており、依然として不透明感は拭えない。1.3931まで下落した米ドル/カナダドルは、現在1.40付近で取引されている。IVEY PMIと雇用統計を考慮すると、カナダ経済がCOVID-19で大打撃を受けていることは明確である。さらに、これは3月の経済指標であり、4月も同様に悪い状況が続くとみられる。

ユーロ/米ドルは、ドイツの好調な経済を受けて1.09上回って取引されている。ドイツの貿易黒字と経常黒字は、輸出増のおかげで2月の予想を上回った。スペインとイタリアがロックダウンの延長を検討する一方、ドイツのメルケル首相は、新型ウイルスの流行を遅らせるためのより厳しい措置は必要ないかもしれないと語った。また、EU諸国の財務相は9日、加盟国への更なる支援を実施することで合意に達した。

一方、豪ドルとNZドルは9日、米ドル安を背景にアウトパフォームした。ニュージーランドにおける3月のクレジットカード利用額は急落した。他方、イングランド銀行は政府がより多くの国債を発行できるようにするための「財源枠」を拡大すると発言し、ポンドも値を上げた。英鉱工業生産指数は悪くなかったが、2月の貿易収支は赤字となった。ボリス・ジョンソン英首相の状態は回復しており、既にICU病棟から一般病棟へ移っている。

本日は米消費者物価指数に注目が集まっている。(提供:Investing.comより)

著者:キャシー・リアン