8月19日、米大統領選に向けた民主党全国大会でカマラ・ハリス上院議員が副大統領候補に正式に指名された。ジャマイカ出身の父親とインド出身の母親のもとに生まれた移民2世のハリス氏。彼女はアフリカ系およびアジア系女性としては初めての副大統領候補であり、各メディアも大きく取り上げている。

11月3日の米大統領選まで残り2カ月余り、情勢は依然として予断を許さないが、今回はハリス米副大統領が誕生する可能性に迫ってみたい。

新型コロナの危機対応でトランプ大統領を批判

アメリカ大統領選挙,2020
(画像= astarkim / pixta, ZUU online)

「大統領が脅威を真剣に受け止めなかったせいで、米国は先進国の中で最大の打撃を受けた」ハリス氏は新型コロナウイルスを巡って、トランプ米大統領の対応のまずさを厳しく批判した。8月12日にジョー・バイデン氏の地元デラウェア州で行われた演説の一幕である。彼女は「大統領が対応を誤ったために、米国は大恐慌以来となる経済危機に陥った」と指摘している。

新型コロナ危機で景気が急激に落ち込んだのは米国に限った話ではない。トランプ大統領に限らず、当初は多くの米国民が新型コロナウイルスを軽く見ていた印象も否めない。だが、政治は結果がすべてである。4~6月期の米GDP(国内総生産)は前期比年率で32.9%減と世界恐慌以来の景気後退に見舞われている。新型コロナ危機が深刻化すればするほどトランプ大統領は窮地に追い込まれる可能性は否定できない。

米国の新型コロナウイルス感染確認者数は570万人を超えたほか、死者数も17万人を上回るなどいずれも世界最多となっている。カリフォルニア、テキサス、フロリダ、ジョージア、イリノイ、ノースカロライナ、テネシーの各州で感染が深刻化しているが、その中でもフロリダとノースカロライナは「スイング・ステート(選挙の度に勝利政党が変動する州)」である。加えて、共和党の牙城とも言えるテキサスではトランプ氏とバイデン氏の支持率が拮抗している。共和党にとってテキサスはカリフォルニアに次ぐ全米2位の大票田であるが、ここでも苦戦を強いられる可能性が指摘されている。

米大統領選まで残り2カ月余り、新型コロナ危機が収束に向かうのか、それとも拡大するかによって結果が大きく左右される可能性もありそうだ。

ハリス氏に追い風となる「BLM運動」

ところで、ハリス氏が民主党の副大統領候補に指名された理由の一つとして、黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に押さえつけられて死亡した事件を指摘する向きもある。この事件をきっかけにBLM運動(ブラック・ライブズ・マター、「黒人の命は大事だ」の意味)が全米に広がり、米国内の人種間の分断が改めて浮き彫りになった。人種差別問題が改めて社会問題化する中、民主党内で副大統領候補に黒人の女性を起用する機運が高まったと見られている。

ハリス氏は地方検察官からカリフォルニア州司法長官に上り詰め、黒人女性として史上2人目の上院議員に選出されているが、この事件をけっかけとして法執行当局経験者として人種問題や警察の取り締まりに関する民主党の有力な発言者とみなされるようになった。ハリス氏はホワイトハウスの前でデモ参加者と共に行進したほか、警察改革に向けた法案作りにも関与している。