(本記事は、堤ゆかり氏の著書『もう内向型は組織で働かなくてもいい 「考えすぎるあなた」を直さず活かす5ステップ』世界文化社の中から一部を抜粋・編集しています)
内向型ってどんな人のこと?
「内向型」と聞くと、どのようなイメージが浮かびますか?
内向型について調べてみると、「心的エネルギーがおもに自己の内面に向かい、外部の人物や事物に対しては消極的であるために、実行力に乏しく孤独な傾向を示す性格」と出てきます(ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典小項目事典』より)。メンタリストDaiGoさんは著書『ストレスを操るメンタル強化術』(KADOKAWA)で、「内向的な人は、外部の刺激に対して過敏な分、自分の内側に入っていきます」と記しています。
つまり、内向型は自分の内側(感覚や感情・思考など)に興味のベクトルが向かいやすく、外向型は自分の外側で起きている出来事や他人に興味のベクトルが向かいやすい、という特徴があるといえます。
内向型という概念を最初に提唱したのは、心理学者のカール・グスタフ・ユングでした。彼が1921年に出版した『心理学的類型』で、性格分類のひとつとして「内向型」「外向型」という言葉を初めて使ったのです。当時は科学的根拠のない性格診断とされていましたが、後に脳科学などの分野で研究が進み、内向型と外向型では脳や遺伝子に違いがあることが分かってきています。
とはいえ、その人が内向型か外向型かということは白黒はっきり決められるものではないようです。誰もが内向性と外向性の両面をもちあわせており、その度合いは年齢・環境・経験など後天的な要素によって変化するものだともいわれています。そのため現在では、先天的な特性と後天的な要素の割合は半々程度とされています。
内向型の人の割合については諸説ありますが、心理学者のローリー・ヘルゴーは著書『内向的な人こそ強い人』(新潮社)で、「約50%が内向的な人だ」と述べています。周りに自分のようなタイプがほとんどおらず、内向型はごく少数だと思っていた私は、この記述を読んだときはとても驚きました。そして、こう考えました。
私たちは外向的であることを「良し」とする社会で育っているため(この話は後ほど詳しく書きます)、自らの内向性を隠したり矯正しようとしたりする。だから、同じタイプがなかなか見つからないのかもしれない、と。
世の中に男性と女性がいるように、内向型と外向型にも優劣があるわけではなく、ただ「違い」があるだけ。しかも、人間の半数ほどが内向型であり、生まれもった特性である場合も多い。
この事実を知っただけでも、だいぶ安心しませんか?
内向型と外向型の4つの違い
私は、内向型と外向型には4つの違いがあると考えています。
(1)刺激の容量
・内向型:小さい→少しの刺激で十分 ・外向型:大きい→多くの刺激が欲しい
内向型は外向型に比べ、刺激を敏感に感じとります。外向型は少しの刺激では物足りずにドキドキをたくさん欲しがる一方、内向型は少しの刺激で満足する傾向があるのです。
外出したり、人に会ったり、新しいことを始めたりということも、すべて刺激。「たとえその時間が楽しくて充実したものであっても、後でどっと疲れてしまう」というのも、内向型の特徴です。活動的な外向型の人と自分とを比べて、「自分は体力がない」「なんで時間を上手に使って、あれもこれもといろいろできないんだろう」と悩んだことはありませんか?実は、体力や要領の問題ではなく、単に刺激に対するキャパシティが小さいことが原因かもしれません。
(2)元気になる方法
・内向型:くつろぐ、休息する ・外向型:アクティブに過ごす
疲れたときや休日はどう過ごすことが多いですか?内向型と外向型では、その過ごし方に分かりやすい違いがあらわれます。
外向型は積極的に外出したり、誰かと一緒にワイワイ過ごしたりすることで、元気になります。一方、内向型は家で読書や映画鑑賞をするなど、ひとりで静かに過ごすことを好む傾向があります。元気を充電するために、外向型は行動や刺激を必要とし、内向型はくつろぎや休息を必要とするといわれています。
外向型でもひとりで過ごす時間が好きな人はたくさんいると思いますが、内向型にとってひとりの時間は、切実に必要なもの。その重要性に違いがあります。内向型にとってひとりの時間は、刺激を受けて疲れた心と身体を労り、エネルギーを回復させるための大切な時間なのです。「気分転換をしたい」と感じたときは無理に普段と違うことをせず、あえてひとりの時間をつくってゆったり過ごすのもいいでしょう。
(3)好きなこと
・内向型:じっくり考えること、ぼーっとすること ・外向型:意欲的に活動すること
元気になる方法にも通じますが、外向型は積極的に活動することに、内向型は考え事やぼーっと物思いにふけることに、より楽しさを感じます。
内向型はどちらかというと積極的に自分から話すタイプではなく、「物静かで掴みどころのない人」と思われることも少なくないのですが、実は深いところまでじっくり内省・熟考しており、素晴らしい考察力を発揮することも多々あります。カウンセリングで内向型の方とお話しすると、「話すのが苦手」と言いながらもしっかりした自分の考えをもち、きちんと自分の言葉で話せる方がたくさんいらっしゃいます。
余談ですが、内向型には哲学や人生観など、明確な答えが出ない抽象的な話が好きな人が多い印象を受けます。
(4)情報処理のスピード
・内向型:遅い傾向がある ・外向型:早い傾向がある
内向型は外向型に比べて、情報処理に時間がかかる傾向があります。
外向型には話しながら考えをまとめていくタイプの方もいますが、内向型はじっくり考えて頭のなかでまとまってから話し出す傾向があります。そのため、聞かれたことをすぐに答えられなかったり、人に話すときには内容を一度整理して頭のなかで組み立て直す必要があったり、というケースもあります。
こうしたことは、外向型よりも内向型のほうが、脳内で情報を処理する道のりが長いからだとされています。
私のカウンセリング経験からの印象では、(1)〜(4)の違いのうち、特に「(4)情報処理のスピード」に関してコンプレックスを感じている内向型が多いようです。なかには、「自分は頭が悪いから」と決めつけたり、「脳機能に障害があるのでは」と不安になったりする方も。
ですが、あくまで脳や遺伝子の特性にすぎないので、心配しないでくださいね。
内向型に対する勘違い
物静かでじっくり考えてから行動するといった傾向からか、「内向型は内気で、人づきあいが苦手」というイメージをもつ方も少なからずいます。カウンセリングでも、人間関係についての相談が多く寄せられます。実際に、内向型にはそういった特性があるのでしょうか?私の考えはこうです。
(1)内気とは限らない
「内気」の意味を調べてみると「気が弱く、人前では、はきはきしない性格。また、そのさま」と出てきます(小学館『大辞泉』より)。内向型は頭のなかでしっかり情報処理をしてから話す傾向があるので、周りの人の目には口数が少なくて気が弱く、煮え切らないように映るかもしれません。
でも、「口数が少ないこと」と「気の弱さ」は必ずしもイコールではないですよね?私がこれまでに接してきた内向型のなかには、自分の意見や信念をしっかり発言し、いい意味で頑固な方も多くいらっしゃいました。
(2)人見知りとは限らない
内向型はひとりで過ごす時間を大切にするため、外向型に比べると人と一緒に過ごすことにそれほど積極的ではない面もあるかと思います。また、人と接することも刺激のひとつなので、特に知らない人との会話では構えたり緊張したりして、慣れるまでに時間がかかるケースもあるでしょう。
だからといって、「内向型はみんな人見知り」というのは決めつけです。「自分は社交的で、人と話すのが好きで接客業をしている。そのせいか、『内向型』と言っても信じてもらえない」という内向型の方もいます。
(3)コミュニケーション能力が低いとは限らない
話すのが苦手、会話が続かない、うまく話がまとまらない。そういった悩みも、多く寄せられます。確かに、情報処理に時間がかかり、常に頭のなかが考え事でいっぱいの私たち内向型は、外向型に比べるとトーク力は劣るかもしれません。
だからといって私は、内向型はコミュニケーション能力が低いとは考えていません。
コミュニケーションとは「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと」という意味です(小学館『大辞泉』より)。会話はキャッチボールであり、投げる人と受ける人がいて、初めて成立するもの。つまり、言葉数の多さやトーク力だけで測れるものではないのです。周りが飽きているのにもかかわらずマシンガントークを繰り広げる人は、コミュニケーション能力が高いとはいえないですよね?
内向型はその鋭い観察眼で相手を見つめ、じっくり話に耳を傾けて理解しようと努め、深く考えてから言葉を発します。むしろ、「内向型のほうがコミュニケーション能力は高い」という意見も少なくありません。
「内向型の特徴そのものは、対人関係と直接的な因果関係がない」ということに、お気づきいただけたのではないでしょうか。もちろん、内向型のなかには内気な人も、人見知りの人も、コミュニケーションが苦手な人もいます。でも、それは内向型の特性から派生する「傾向のひとつ」に過ぎません(「内に向かう」という漢字のせいか、ネガティブなイメージで語られるのを耳にするたび、内向型の私はとても複雑な気持ちになります)。
内向型だからといって、偏った先入観で自分のキャラクターを決めつけないでください。言葉のイメージに引っ張られず、フラットに自分と向き合っていきましょう。
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