(本記事は、堤ゆかり氏の著書『もう内向型は組織で働かなくてもいい 「考えすぎるあなた」を直さず活かす5ステップ』世界文化社の中から一部を抜粋・編集しています)
内向型を活かす働き方の3つの要件
ここでは「内向型を活かしながら」組織以外で働く方法を考えていきます。
まず、「内向型を活かしている状態」とはどういうことでしょうか。
私は、次の3つの要件がすべて満たされることだと考えています。
(1)外向型と張り合おうとしていない (2)内向型の強みを発揮している自覚がある (3)主体的に選択している
(1)外向型と張り合おうとしていない
内向型を活かす働き方への第一歩は、ありのままの自分を受け止め、冷静に長所短所を分析することから始まります。
何度も言うように、私たちは外向性を良しとする環境で育ってきました。そのため、「内向型は欠点であり外向型に変わるべきだ」と思い込み、常に外向型の人たちと自分を比べては、劣等感を抱いてきた方も多いのではないでしょうか。
ですが、外向型と内向型の違いは、先天的な脳や遺伝子の構造による部分も大きいとされています。
まずは自身の内向性を客観的に理解し、自分の個性だと納得できることが大切です。
内向型は欠点だという価値観が根底にあると、外向的な人を見るたびに自分を否定してしまいます。そして、「苦手なことを克服しなければ」と自分を追い込んでしまうのです。
私も自分の内向性を受け入れられなかったころは、「軽快なトーク力や、みんなを先導して巻き込んでいくようなカリスマ性がなければ、仕事で成功できない」と思い込んでいました。華やかに活躍している人を見ては嫉妬と焦りでいっぱいになり、「自分もそうならなきゃ」と必死になっていました。
「そんなことばかりにエネルギーを使わず、自分の良さを伸ばそうという気持ちに切り替えられていたら」と、今では思えます。
外向型か内向型かというのは、優劣ではなく単なる「違い」です。私たち内向型にとっては容易なことが、外向型の人にとっては難しく感じることも多くあります。
たとえば、じっくり検討して物事を判断すること。外向型は良くも悪くも、動きながら考える傾向があります。行動力や瞬発力といったプラス面がある一方で、余計なことまでしてしまって効率が下がったり、防げたはずのミスをしてしまったりという可能性もあります。内向型の思慮深さや慎重さを「うらやましい」と感じる外向型は多いのです。
人は比較してしまう生き物です。自分にないものをもっている外向型を、うらやましく思うこともあるでしょう。
比べてもいい。でも、外向型にコンプレックスを感じたときは、そのたびに「内向型は生まれもった武器なんだ」と自分に言い聞かせるようにしてください。さらに、「外向型も素敵だけど、内向型も悪くない」とつぶやいてみましょう。少しだけ気持ちが軽くなるはずです。
外向型と張り合わず、それぞれの良さを認められることが、第一の要件です。
(2)内向型の強みを発揮している自覚がある
内向型の強みを知っているだけでは、内向型を活かしているとはいえません。「強みを発揮できたから成果が出せた」と、自覚できていることが大切です。
というのも、最近になってOL時代を振り返ってみると、「内向型ならではの強みを活かせていた」と感じるエピソードがいくつも見つかったからです。
2社目に入社した会社では、披露宴を予定されている新郎新婦に向けて結婚式場をご紹介する仕事をしていました。1回2時間の対面接客に加え、バックヤードでは次々にかかってくる電話に対応。合間をみて担当するお客様へのフォローの連絡……など、仕事量は膨大で、帰りが終電近くになることもしばしば。心も体も疲れ果て、適応障害と診断され、転職からたった10ヵ月で退職を余儀なくされました。
そんな状況でも、「実は自分の内向性を活かせていた」という場面はありました。「相手の立場に寄り添って、粘り強くお客様のお話を聞く」ということです。
お客様に結婚式場についてのご要望を伺う際には、結婚への悩みを打ち明けられることも少なくありませんでした。
なかには、ご両親やお相手との意見の相違や、予算についてなど繊細な内容のものも。私は、話すことが苦手で先輩に比べて式場の知識も少なかったのですが、「少しでも晴れやかな気持ちで式場選びができるように」と根気強くお話を伺うことを心がけていました。そんな私に対し、多くのお客様が「親身になって話を聞いてくださり、ありがとうございました」「ステキなお仕事ですね」という言葉をたくさんかけてくださいました。
それなのに、自分ができないことばかりをフォーカスしていた私は、お客様からいただいた感謝の言葉を自信に繋げることができませんでした。自分の要領の悪さを責めるばかりで、「全然成果を出せなかった」「私には営業職や接客は合わない」と思い込んでしまっていたのです。
たとえ内向型の強みを発揮して結果が出せたとしても、自分自身がそれに気づけなければ、ずっと自分探し・天職探しを繰り返すことになります。
客観的に自分の仕事の成果と、その理由を振り返ってみてください。「強みを発揮できた」と自覚できてはじめて、自分の内向性を活かす働き方が叶うのです。
(3)主体的に選択している
どんな雇用形態を選ぼうと、どんな仕事に携わろうと、「自分がそれを選んだ」という実感をもつことが大切です。主体的な意思決定かどうかが、継続力ややる気に大きく影響するからです。
「内向的な私にはこの仕事しかできない」と消去法で仕事を決めたり、「友だちが『辞めないほうがいい』と言うから、会社勤めを続ける」と周りの意見に流されたりしても、いい結果には繋がりません。
その選択がうまくいかなかったら、「環境が悪かった」「あの人のせい」と、すぐに言い訳を考えてしまうはず。仮にうまくいったとしても、達成感を得られず自分の実力ではない気がして、自信がもてないままでしょう。
結果がどうであれ、受け身でいる限りは自分を活かす働き方には近づけません。
自ら考えて決めた事柄であれば、そのことに対して積極的に取り組み、やり抜こうという意思も強固になります。逆に言えば、「自分が決めた」という意識が低いほど、取り組む姿勢ややり抜こうという意思は弱くなってしまうのです。
これは、心理学で自己決定理論と呼ばれるもので、「自分が決めた程度(自己決定)が大きいほど、やる気が大きくなる」ということをあらわします。
経験で培った強みを知る
●レッスン1 仕事の経歴を書き出す
これまでの仕事の経歴(学生時代のアルバイトも含む)を書き出してみましょう。
職務経歴書のように時系列に沿って箇条書きにし、部署名・肩書き・携わった業務内容・期間を簡潔に記してください(例:〇〇会社の営業部で3年間、営業事務職をする。主な仕事は、顧客のデータ整理や資料作成といった営業スタッフのサポート……など)。
この場合、「3年間の営業事務」がれっきとした「経験値」になります。
「ただの経験値は強みといえないのでは?」「特別な成果を出したわけではないし」と思われるかもしれませんが、営業事務の経験がない人と比べれば、あなたのほうがスキルや知識は圧倒的に豊かなはずです。自分にとっては当たり前のことが、ほかの人にとっては価値のある経験であることも、大いにあり得ます。
自分の主観で取捨選択せず、まずは事実を機械的に書き出していきましょう。
●レッスン2 得意なことを探す
次に、経験値のなかから得意なことを探していきます。
得意なこととは、誰にいわれなくても主体的に行っていることや簡単にできてしまうことのうち、何かしらのプラスの結果が出た業務のことです。
レッスン1で書き出した業務のなかで、成果が出たこと・周りに感謝されたこと・評価されたことはなんですか?お客様からの「ありがとう」や、同僚からの「すごいね」といったひと言でも構いません。
「なんでこんなことで褒められるんだろう?」と思うようなことが、実は得意なことである可能性も高いのです。自分にとっては当たり前のことだと、褒められてもピンとこないもの。でも、同じことを努力して必死にやっている人から見れば、難なくできてしまうあなたは「すごい」のです。ほかの人にはない、秀でた特技をもっているということなのです。
人からの「すごい」と自分にとっての「当たり前」のギャップに、「強み」が隠れていることが多いものです。
得意なことがなかなか浮かばない方は、「コンプレックスに感じていること」から考えてみるのもおすすめです。
私は学生のころ、テスト勉強を短時間で済ませられる人をとてもうらやましく思っていました。「全然勉強していない!」と言いながらも周りの助けを借りて一夜漬けで勉強し、それなりの点数をとるクラスメイトのことを、「要領が良くて楽観的でいいな」と羨望の眼差しで見ていました。私は心配性なうえに記憶力も良くなかったので、数週間前から時間をかけて何度も復習しないと、覚えられなかったのです。
「計画を立ててコツコツと行動を継続する」
それは仕事でも当たり前に行っていたことなので、周りの人に「もう手をつけ始めたんだ!」「まだ続けているんだ!」と驚かれるたびに、不思議な気持ちになりました。こうするほかに仕事をこなす方法をもち合わせていなかったので、苦肉の策でやっていた感覚すらあったからです。
今では「自分にとってのコンプレックスは、周りから見たら特技だ」と思えるようになりました。計画を立ててコツコツと行動を継続することで、テスト勉強や仕事で成果が出たことが何度もあったと気づいたからです。今では、この強みを仕事でフル活用しています。
コンプレックスを感じるということは、他人と自分に違いを見出しているということ。あなたにはない良さをほかの人がもっているように、人にはなくてあなただけがもっている武器がそこに隠されていることもあるのです。
●レッスン3 得意なことを細分化する
得意なことをいくつか書き出したら、それらを細分化してみましょう。
たとえば「計画を立ててコツコツと行動を継続する」であれば、「計画を立てる」「コツコツと行動する」「継続する」といったように、ひとつずつのフレーズに区切ります。そして、それぞれ具体的に何が得意なのかを深掘りします。
「計画を立てる」ことが得意というのは、仕事の優先順位をつけるのが得意なのか、無理のないタイムスケジュールを組むのが得意なのか、その両方なのか……細かく見ていくと、自分の強みがより理解できます。「それってどういうこと?」と、自問自答を繰り返しながら導き出していきましょう。
得意なことを細分化して丁寧に説明することで、自分が大切にしている価値観が分かる場合もあります。
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