アストンマーティン・ヴァンテージ・ロードスター 価格:8SAT 2159万9000円 試乗記
誕生70周年を超える伝統モデル、ロードスターは2020年2月本国デビュー
ヴァンテージはアストンマーティンの主軸となるV8エンジン搭載の2シーターFRスポーツカーだ。旧型V8ヴァンテージの後継モデルとして2018年にデビュー。英国を代表する高級スポーツカーとして高い人気と評価を得ている。ソフトトップ仕様のロードスターが追加されたのは2020年2月。クーペ発売後、セールスが落ち着き始めたころを見計らってのオープンモデル投入はこうした高級スポーツカー販売における一般的な手法だ。ちなみに2020年はヴァンテージの誕生70周年でもあった。
パワーユニットは強力。メルセデスAMGとのコラボレーションで採用された4リッター・V8ツインターボエンジンはクーペと同様に最高出力510ps、最大トルク685Nmを誇り、ZF製8速ATと組み合わされる。パフォーマンスはクーペと同等で、胸がすく。英国製の華麗な本格ロードスターとして超一級品である。無粋を承知で説明すると、0〜 100km/h加速は3.7秒と、クーペの0.1秒落ち。最高速はクーペより8km/h遅いだけの306km/hと発表されている。いずれもドライバーを非日常の世界へと誘う動力性能だ。
新開発トップ採用。メカニズムはクーペと共通の硬派な仕様
ソフトトップは、デザインも構造も老舗のラグジュアリーブランドらしく完成度が高い。Z型フォールディングの軽量新開発トップは、オープンに要する時間は6.7秒、クローズドは6.8秒とクラス最速レベル。本当にあっという間だ。動きは素早くスムーズ。それだけでも見ものというものだ。走行中でも50km/h以下であれば操作できる。コンパクト設計の利点を生かし、ルーフを収める専用スペースを設定しつつ、200リッターのトランク容量を確保。いかに小型軽量のソフトトップであるかがわかる。ちなみに重量増はクーペ比で60kg。前後重量配分は48対52と理想的である。
クーペで好評のシャシー技術の数々、アダプティブダンピングシステムやエレクトロリックリアデファレンシャルは、クーペとまったく同じ構成だ。ただし60kgとはいえ車重が増加しているため、ダンピングシステムやESPには専用チューニングが施された。当然ながら、ドライブモード選択(スポーツ、スポーツ+、トラック)の各モードはロードスター専用セッティングだ。ロードスターはクーペと変わらぬダイナミックなパフォーマンスを発揮するよう、丁寧に仕立てられた。
スポーツドライビングで本領発揮、ワインディングランは最高!
走りは魅力たっぷりだ。AMGエンジンとなってもアストンマーティンの伝統をきちんと継承している。まずはサウンドである。降り注ぐV8ノートの華やかさはジャーマンエンジニアリングの存在をかき消すかのようだ。ロードスターのドライビングをいっそうドラマティックに演出する。ボディ剛性はクーペと比較するとわずかに落ちているようだ。だが、それが乗り味にある種の洗練を与えている。ドイツ製とはひと味もふた味も違う、適度にしなやかなライドフィールが体験できる。
ちなみにボディ剛性が落ちている印象は、クーペと比べた場合の話。強靭性自体は、絶対的ともいえるレベルにある。ソフトトップを閉じてハードなドライビングにトライしても、ボディが悲鳴を上げる心配はない。スポーツカーとして十二分の実力を見せた。
ロードスターの走りは、街中でも高速道路でも実に完成度が高い。快適なグランドツーリングカーとして使えるというあたり、ヴァンテージそのものの熟成を実感する。
とはいえ本領発揮はスポーツドライビングにある。510psを存分に解き放ってのワインディングランは「最高」のひと言。硬すぎず適度に動く足回りと優秀な電子制御が、多少わがままなドライバーの要求にも素直に応えてくれる。官能的なエグゾーストノートと自在なハンドリング、これこそヴァンテージの魅力だ。
アストンマーティン・ヴァンテージ・ロードスター主要諸元
価格=8SAT 2159万9000円
全長×全幅×全高=4465×1942×1273mm
ホイールベース=2704mm
車重=1628kg
乗車定員=2名
エンジン=4リッター・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=510ps/6000rpm
最大トルク==685Nm/2000〜5000rpm
燃料タンク容量=73
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:255/40R20/リア:295/35R20
駆動方式=FR
最高速度=306km/h
0→100km/h加速=3.7秒
※価格を除きスペックは欧州仕様
(提供:CAR and DRIVER)